「GRAND KIRIN」で、ビールの奥深さを知る入門編としての役割を担いたい【ビール誕生秘話8本目 GRAND KIRIN編】
2019年7月16日(月)にリニューアルが発表され、同月30日(月)に発売を開始した「GRAND KIRIN IPL」。これまでは「JPL(ジャパン・ペールラガー)」というオリジナルスタイルで展開してきたが、約2年ぶりのリニューアルで「IPL(インディア・ペールラガー)に変更された。 どのようにリニューアルされたのか? その狙いと、これからの「GRAND KIRIN」の方向性を知りたく、キリンビールを訪れることにした。
目次
■日本ならではのビアスタイルを確立するために誕生した「JPL」
「『GRAND KIRIN』は、キリンビールがつくる日本ならではのものづくりの技術を活かしながら、今はクラフトビールとして手に取ってもらいやすい商品開発を行っています。当初は、スペシャリティプレミアムビールという名前で、2012年からボトルで販売をはじめました。その後、クラフトビールというカテゴリーが世の中に広まってきて、少しずつそちらへ軸を移して展開してきましたが、ビールの選択肢を広げたいというブランドの方針は一貫して変わっていません」と、話すのはグランドキリンブランドマネージャーの鈴木雄介氏。
発売当初は、コンビニエンスストアでも販売され、各社とのコラボレーションビールも登場していた。今でいえばクラフトビールに当たるエールタイプなども発売していたので、既存のビールの文脈では受け入れられないビアスタイルを「クラフトビール」の枠へ軸足を移すことで広めていきたいという想いからリポジショニングを行った。
「クラフトビールをもっと身近に購入してもらえないかと考えて、ボトルで展開していた3種類のビアスタイルの商品を缶に移行しました。そのときに大手メーカーの主力商品以外ですと、ビアスタイルは選ばれる基準の1つになると考えて、日本ならではのビアスタイルを確立しようと『JPL(ジャパン・ペールラガー)』という新しいスタイルを提案していました」。
しかし、2年という短い期間で「JPL」という名前は変更されることになってしまった。
■試行錯誤を繰り返しながら発売した「JPL」というスタイル
「やはり何をもって『ジャパン』とするのかという声はありました。私たちとしては国産麦芽と一部日本産ホップを使用しながら日本ならではのビールづくりを『JPL』と表現したかったのですが、当時は今よりもクラフトビールが浸透していなかったこともあり、『ビアスタイルって何?』『ジャパンって何?』と2つの段階を踏まえて説明しなければならず、複雑なイメージを消費者の方に持たせてしまいました」。
少しずつビールにもいろいろなスタイルがあることが知られてきているが、まだ浸透しているわけではない。「JPL」は飲み手に対して、難しい印象を与えてしまった。
「今回のリニューアルでは、IPAは時代の流れとともに「苦味の強いビールだ」というイメージが定着してきた印象があり、もっとビアスタイルに沿った形で提案していこうと考え、『JPL』を『IPL(インディア・ペールラガー)』へリニューアルすることにしました」。
リニューアルにあたり、名前だけではなくレシピやデザインも変更された。
「原料の配合比率を見直していて、花の香りやスパイシーな香りのホップを使うことで、『JPL』にもあったラガーでありながらエールのような華やかな香りを活かして、より個性を感じやすいレシピに変更しています」。
缶のデザインも白みのある赤色やオレンジっぽい赤色をグラデーションで入れることで、紅茶のような華やかな香りやスパイシーな香りといった味や香りの奥深さを表現している。
ちなみに「IPA」の緑はわかりやすくホップの色、「ホワイトエール」はラベルにも記載している白ワインのように爽やかな飲み心地を水色で表現。上下には小麦をデザインしている。
■まだクラフトビールを知らない人たちのために入門編的な立場で奥深いビールの世界へ誘いたい
キリンビールにとって、「GRAND KIRIN」は、どのような存在なのか?
「クラフトビールは1本あたり300円〜500円と価格帯も高く、購入を躊躇ってしまう現状があります。そこで『GRAND KIRIN』は、いつもと違う満足感を得たい方たちに向けて価格を抑えることで購入しやすくした商品です。当社をはじめとする大手メーカーのピルスナータイプのビールは、スッキリと爽快感を味わいたいときに良いですが、ビールは本当にたくさんの種類があって食事に合わせるもの、自分の時間を過ごしながらゆっくり楽しむものと様々なシーンに合わせることができるお酒です。決して単一な飲み物ではないことを伝えることができる商品として役割を担えればと思っています」。
興味をもっているが、「高いのに美味しくなかったらどうしよう……」と、積極的になれない人にビールの奥深さを知ってもらう1つの間口になる役割になってほしいという思いを込めている。
「今はまだ、ビールとクラフトビールという呼ばれ方の垣根があるので、そうした隔たりをなくす架け橋になりたいですね」と鈴木氏。
■多様なビールを知ってもらうための3つの商品
「3つのラインナップで売り出している理由ですが、『クラフトビールって何?』という方たちに向けて、まずはIPAとIPLで『ラガー』と『エール』の違いを知ってもらい、次にエールのなかで苦味が強いIPAと爽やかなホワイトエールを体感してもらいたいという思いから選びました」。
この3つの商品でビールにはピルスナー以外にもいろいろあることを認知してもらい、世界にある多種多様なビールを楽しんでほしいという。
「クラフトビールが好きな人には知られていても、一般にはビアスタイルという言葉はまだまだ浸透していません。認知度を高めるアイデアを探しながら、これからビールの奥深さを知ってもらいたいと考えています。『GRAND KIRIN』はスーパーでも購入できるので、ビールの多様性を楽しんでもらえる入り口のビールになると思います」。
■「食事と一緒に楽しむビール」を売り手と力を合わせて広めていきたい
試行錯誤をしながらビールの多様性を伝える「GRAND KIRIN」。入門的なビールのほかに考えていることがあるのか。鈴木氏に聞いてみた。
「継続して飲んでもらうために『GRAND KIRIN』の良さを地道に伝える活動していかないといけません。これはお客様だけではなく、販売してくださる店舗様とも一緒に考えていく必要があると考えています。最近は、販売店向けのセミナーを行うことで、店舗様でもクラフトビール専用の陳列棚やペアリングを意識した陳列をするなどいろいろ工夫がされています。おかげさまでリニューアル後は『IPA』『ホワイトエール』が前年比でいうと約20%伸びています」。
そして、「食事と一緒に」というシーンをもっとアピールしていきたいという。
「『IPL』は、ラガーでイメージカラーも赤なので『キリンラガー』を思い起こす人もいらっしゃいます。しかし、中身はそこまで苦味が強いわけではなく、出汁や醤油といった繊細な味との相性が良いビールです。そういったところも知って楽しんでもらえたら、もっとビールの美味しさが広がって生活の質が上がると思っています」。
食事との楽しみをより一層高めるためにグラスに注いで飲んでほしいと鈴木氏は加える。
「クラフトビール専用のグラスで飲んでもらえるのが1番良いですが、持っているご家庭は少ないと思います。代用としてはワイングラスでしょうか。細かいことをいうと『IPA』『IPL』は、口がすぼんでいるグラスで中に閉じ込められた香りを楽しみながら。『ホワイトエール』は反対に口が広がっているグラスで、ゆっくりと楽しんでもらうと、いつもより良い時間が過ごせると思います」。
ビールの味わいや楽しみ方を広く伝えていくアイテムとして、「GRAND KIRIN」が担う役割は大きい。1人でも多くの人に、その奥深い世界観を伝えるため、これからも挑戦は続いていく。
◆GRAND KIRIN ホームページ & SNS
商品ページ:https://www.kirin.co.jp/products/beer/grandkirin/index.html
Facebook:https://www.facebook.com/BEERtofriends?fref=ts
Twitter:https://twitter.com/_GRANDKIRIN
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