[コラム,ビアバー,ブルワー]2020.2.14

【ジャーマン → ヘイジー!?】2人が濁ったビールを醸す理由-REVO BREWING Co.-

「REVOに入社するまで、Hazy IPAを自身で醸造する経験はなかった。」

2人の醸造家から出た言葉に、驚きとさらなる好奇がわいたのは、
きっと私だけではないはずだ。

なぜなら、「REVO BREWING Co.」はその「未体験」のスタイルを定番に据えており、
その魅力を伝えんとすることをビジョンに掲げているのだから。

◆堅実なジャーマンスタイルから華やかなアメリカンへ

同社は昨年、2019年9月20日にオープン。
フラッグシップ商品は「I am “THE” President」、いわゆる「Hazy IPA(以下、ヘイジー)」と言われる種類のビールだ。

同種は「NE-IPA(ニューイングランド・アイピーエー)」と同義で扱われている。
その名の通り、アメリカのニューイングランド地方が発祥だ。
バーモント州のThe Alchemist(アルケミスト)のビール「Heady Topper」とHill Farmstead(ヒル・ファームステッド)がその始まりとされ、バーモントIPA、ノースイーストIPA、ヘイジーIPAと複数の呼び名がある。

特に「ノースイースト(=北東部の)」や「ヘイジー(=霞みのある)」などは、2社に続いて醸造するブルワリーが増えたことにより、醸造範囲の拡大やその見た目(後述)からより広義な呼び方が生まれていったとの見解が強いようだ。

そのおおまかな特徴としては以下の4つだ。
・外観はオレンジジュースのように濁っているものが多い(ヘイジーと言われる所以である)
・トロピカルフルーツや濃い柑橘の豊かな香り(よくジューシーと形容される)
・苦味は中程度のものが多い(フルーティーな香りが甘味をより知覚させる要因もある)
・絹のようななめらかな口当たり(小麦系ビールのそれに近い)

「I am “THE” President」も多分に漏れずこのキャラクターが当てはまる。

醸造長の「金丸 敦(かなまる あつし)」氏(左)と、ヘッドブルワーである「水沼 泰樹(みずぬま やすき)」氏(右)。

醸造家は醸造長の「金丸 敦(かなまる あつし)」氏と、ヘッドブルワーである「水沼 泰樹(みずぬま やすき)」氏。前職はそれぞれ御殿場高原ビールと、「COEDO」でお馴染みの協同商事で醸造の要を担っていた。

そう、いわば両名が最も得意としているのは、ラガーを中心としたドイツ式のビアスタイル。

ヘイジーはその特徴から、まったく真逆の方向性と謳ってもよいくらいだ。

なぜ、2人がこの類のビールを造ることを決めたのか?

 

◆常に「面白い」を感じてほしい。お客様にも、自身にも。

『せっかくクラフトビールを選んでくれたなら、いわゆる「ビール」と言われないほどの、飲んで「うぁ!!」っとなる驚きを提供してみたいんです』と水沼氏は語る。

『実はアメリカ西海岸のビールが好きなんです(笑)。以前にアメリカのポートランドを訪れる際に、現地ブルワリーをご紹介いただいた方からのご縁でREVOのお話をいただきました。ちょうど地元・茅ケ崎に戻ろうかと考えていた矢先だったのと、西海岸のビール文化を伝えていきたいという会社の思いともドンピシャで。それで入社を決めました。』

米国内でも「ヘイジー」への熱狂ぶりはすさまじい。
それを自身でも造ってみようと至ったそうだ。
対して金丸氏は、探求心としての思いが強いという。

『ちょうど御殿場を退職した2年前は、日本にヘイジーが入り始めたころで造ったことも飲んだこともほとんどなかった。新しいことに挑戦できるのは純粋に楽しいし、自分にできることを増やしていきたいと思ったんです。』

実際に造ってみると反応は上々。味わいのインパクトはもちろんだが、
特に旗艦商品の特徴的なグラスデザインも後押ししているそうだ。

『テナントとして入るのなら、面白いことをやりたいという逆提案から生まれたグラスでした。自分が楽しいこと好きというのもありますが、これも私たちのビールを飲んでいただくきっかけの一つになればと。実際にSNSでの拡散や、味と見た目のギャップに一役買っています。』(水沼)

アパホテル&リゾート《横浜ベイタワー》の1階にブルワリーレストランがテナントとして入っている。グラスにはアパホテル株式会社「元谷芙美子(もとや・ふみこ)」代表取締役社長のお写真が印刷されている。

◆一杯で満足できる味。しかし、そこから選択できるのもクラフト。

では、「ヘイジー」のみに注視しているかというと、そういうわけでもない。
「IPA」はもちろん、「ウィートエール」や「ブラウンエール」、「スタウト」などなど、、。二人の経験を活かし、実に様々なスタイルを併設のビアレストランで提供している。

「ベースはジャーマンスタイルで培ったきれいな味わい。そして一杯で満足できるビールを目指しています。何杯も飲んでほしいというのはこちら側のエゴでもあるのかなと。ただ、選べることがクラフトの良い面でもあるので、飲みごたえのある商品と、何杯でも飲めるものの2つのベクトルを意識しています。」(水沼)

清潔感ある同社の醸造設備。左手前が1200Lの発酵タンクだ。

発酵タンクは1200Lタンク2つと、600Lタンクが3つの計5つ。特にヘイジーIPAの仕込みは熟成も合わせて20日前後と、仕込みサイクルが比較的早く回せる利点があり、派生スタイルも積極的に醸造している。

この時伺った際は乳糖を添加した「ミルクシェイクIPA」の他に、極限までタンパク質を増やしてとろみをつけたタイプ、酸味を付加したタイプを熟成中とご紹介いただいた。

 

「ヘイジーは幅を利かせられるスタイルであると思います。いろんなヘイジーがあってもいいですし、そこから違うスタイルのビールに飲み進めてもらえるくらいに従来のラガーとは正反対のレンジに位置しますね。」(水沼)

その中でも、今回は3つの銘柄をいただいた。

■ I am “THE” President / ABV 6.5%
同社のフラッグシップヘイジー。
飲んだことのない誰しもが「オレンジが入っている」と答えるに違いない。
それくらいに、香りも、味わいも、飲んだ後の息さえもジューシーなのだ。

「前後に何か他のビールも飲むことを考慮」してドライに仕上げていると水沼氏。

渋みなくクリーンで、口に残るまろやかさもなんと心地の良いことか。

これを飲むのは3回目なのだが、かなりブラッシュアップされている印象を受けた。

 

■ Time Traveler / ABV 8.5%

米国の「Three Weavers Brewing Company」とのコラボDIPA。
顔を近づけただけで香るマスカットやマンゴー、トロピカルなブーケ。
甘やかな味わいの奥から口内征服を企むビター。
しかしなんだろう、飲みごたえとは裏腹に、するすると飲めてしまう魔性のビールだ。

 

■ TERA STOUT / ABV 9.0%
同社初のスタウトで、横浜で有名なコーヒーロースター「TERA COFFEE」様とのコラボ。
インドネシア・スマトラ島産のマンデリンを使用。
口に含めば、スイートな甘味と深みのある苦味。

身体が熱いのは強いアルコールのせいか、ビールに恋してしまったのか。

ぜひ目を閉じて香りを嗅いでみてほしい。
あなたの全身にロースト・アロマが満ちていくのが分かるはずだ。

ーーー

三つとも、特徴が非常に明確に出ていると筆者は感じることができた。

それでいて杯が進んでしまうのは、やはりきれいな造り故だろう。

◆今後の展望は?

「最終的には、あそこに「ヘイジー飲みに行こうぜ!」となるのが理想ですね。ビールではなく、私たちだけの固有詞として「REVO」や「ヘイジー」として認識してもらえるくらいにしていこうと思っています。」(水沼)

 

「外販も始めましたが、それも基本的には「ヘイジー」を押し出していく予定です。メーカーとして伝えたいもの、「REVO」のイメージを伝えていきたいと思っています。」(金丸)

 

お二人は入社するまでほぼ接点がなかったというが、巡りあわせたかのように息もぴったりとのことだ。

「醸造に集中できる水沼と、幅広く醸造に関する管理を得意とする私で良い住み分けができています。醸造するスキルだけではビールは造り続けられないので。」(金丸)

今後どんな「REVO」が生まれてくるのだろう?
少なくとも、ブルワリーの未来は先まで澄んで輝いているように見えた。

 

【Brewery Deta】
ブルワリーレストラン 「REVO BREWING(レボ・ブルーイング)」
<営業時間>
【平日・土】11:30~15:00(L.O 14:00)、17:00~23:00(L.O 22:00)
【日・祝】11:30~22:00(L.O 21:00)
公式サイト http://revobrewing.com/
食べログ https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140104/14076377/
<Tel>
045-264-6280

Hazy IPAREVO BREWINGヘイジー

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

くっくショーヘイ(佐藤 翔平)

フードペアリング インストラクター

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1989年、宮城県出身。岩手大学卒業。
「酸っぱいビール」に衝撃を受け、5000種以上のビールをティスティング。15以上の酒類資格と調理経験を活かし、フードペアリングに関する執筆や「ビアジャーナリストアカデミー」「アカデミー・デュ・ヴァン」「朝日カルチャーセンター」等の講師を務める。
日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として国際ビアコンペでの審査も行う。

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■執筆・監修■
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・ビール王国(ワイン王国)
・日経プラス1 (日本経済新聞社/日経BP社)
週刊現代 / マネー現代(講談社)
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