サッポロビールが飲食店向けに開発した「パーフェクトチェンジャー」。事業説明会で湧いた疑問を聞いてみた
2020年1月9日(木)、サッポロビール本社で行われた恒例の年次事業説明会。そのなかで「パーフェクト黒ラベル(※1)」の進化としてフロスティミスト(※2)をより多く生成できる「パーフェクトチェンジャー」が紹介された。事業説明会では実演を交えながら試飲をする機会があり、実際にその効果を体験することができた。
と、同時にいくつかの疑問も湧いてきた。後日、改めてサッポロビールに質問をしたところ「サッポロ生ビール黒ラベル(以下、黒ラベル)」ブランド戦略部より回答をいただいたので、ここに紹介する。
※1 Creamy(パーフェクトにクリーミーな泡)、Clear(パーフェクトにクリアなビール)、Cold(パーフェクトにコールドな温度)の3つの「C」を高いレベルでクリアした樽生ビールだけを「パーフェクト黒ラベル」として認定している。
※2 泡とビールの境界にできるもう1つのごく細かな泡の層のこと。飲むたびに泡を再生し、泡持ちを良くする。
■疑問その1 「パーフェクトチェンジャー」で泡を注ぐと、なぜ飲むたびに泡が再生されるの?
ビールは酸素に触れると酸化して味が悪くなっていく。泡は劣化を抑えてくれる効果があると言われており、泡を長く保つことは美味しさを長続きさせることになる。
泡を再生し、泡持ちを長くしてくれる「パーフェクトチェンジャー」。未使用のビールサーバーと比較すると泡の再生力が7%アップ。泡持ちは15%アップ(サッポロビール調べ)するという。
なぜ「パーフェクトチェンジャー」は、再生力や泡持ちをアップさせることができるのだろうか。
「液体に泡付けをする際、液面を叩かない方が泡を再生させるフロスティミストが形成しやすくなります。『パーフェクトチェンジャー』は、泡付け時に液面をなるべく叩かない仕様になっているので、再生力や泡持ちアップします」
液体に直接に泡を注いでしまうと、振動などの刺激で再生力や泡持ちが低下してしまうという。横から泡が出てくることでグラスの壁面を沿うように注ぐことで衝撃を抑えて泡の持つ能力を最大限活かしている。
■疑問その2 「黒ラベル」の缶商品でも同じ体験はできないの?
飲食店向けに展開している「パーフェクト黒ラベル」。飲み手からすると家飲みでも同じような体験がしたい。事業説明会でも他社が展開している専用サーバーのような器機を考えているのかという質問があった。その辺りはどのように考えているのだろうか。
「各種イベントにおいて飲食店様での感動体験は、お客様とのブランド接点強化につながっていると各種調査より分かってきています。『パーフェクト黒ラベル』ではお客様との接点の強化を実施します。家飲みが中心となる缶商品に関しては、昨年のリニューアルのように、これからも本来の生ビールの美味しさを伝えていくため、原料・製法を含めて継続して進化させていきます」
飲用機会によって異なる体験をしてもらうことで「黒ラベル」ブランドを強化していく考えだ。現時点では缶商品に取り付ける専用のサーバーは考えていないが、注ぎ方にも関心が高まってきているので、Webサイトで美味しく飲む注ぎ方を提案していくと商品の魅力がより伝わるのではないだろうか。
■疑問その3 「銀座ライオン」や「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」との区別はどうしているのか?
サッポロビールではグループ会社「銀座ライオン」や銀座に昨年7月5日オープンした「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR(以下、THE BAR)」でも黒ラベルを提供している。特に「銀座ライオン」では1度注ぎで提供することを看板としている。あえて違う手法で展開するのはなぜだろうか。
「『銀座ライオン』は、1899年創業の「恵比寿ビヤホール」にその歴史的背景を持っています。今日まで120年以上にわたり、ビヤホール業態としての使命を受け継いでいることから、創業当時の1度注ぎにこだわっています。一方、『THE BAR』に関しては、パーフェクト黒ラベルをメインに『パーフェクト黒ラベルカラン注ぎ』や『スイングカラン注ぎでの1度注ぎ』に加え、パーフェクト黒ラベルカランで液種を注ぎ、スイングカランで泡つけをする『ハイブリッド』の3種類で提供しています」と、お店のコンセプトによって提供方法を変えて楽しんでもらう趣向をとっている。
「1度注ぎについては、一定以上の熟練さを必要とします。一般的にビールのロスも多く、コンディション管理も難しい注ぎ方です。一方のパーフェクト黒ラベルを初めとした2度注ぎは、熟練者でなくても手順に沿って注出を行うことで、きめ細かいクリーミーな泡を乗せた生ビールを提供することができ、弊社では一般的な飲食店様においては2度注ぎを推奨しています。また、生ビールにおいてはこれまでも多様な飲み方が存在しており、ビールの特性により3度注ぎといった注出方法もあります」
一般の飲料店に設置されているビールサーバーは、誰でも美味しく注げるように設計されている。「銀座ライオン」に設置されているスイングカランは流量の調節をはじめ、一定の品質にするために技術を要する注ぎ方である。
どの注ぎ方で黒ラベルを楽しむのかをその時の気分で決めてみても面白いだろう。「THE BAR」のある銀座には、現存する日本最古のビヤホール「ビヤホールライオン銀座7丁目店」もある。両店は約300mの距離。サッポロビールからも「飲用シーンに合わせて飲み分けいただきたい」といい、その違いを味わいにはしご酒をしてみるのもいい。
★日本初のビヤホール「恵比寿ビヤホール」についてはこちらから
https://www.sapporobeer.jp/company/history/1899.html
★合わせて読みたい
変わりゆく銀座の街並みに残る日本最古のビヤホールを訪ねて 【ビヤホールライオン銀座七丁目店】
★「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」についてはこちらから
https://www.sapporobeer.jp/beer/thebar/
現在、パーフェクト黒ラベルを提供している店舗のビールサーバーの泡付け部品を順次パーフェクトチェンジャーに交換。
★「パーフェクト黒ラベル」が飲めるお店はこちらから
1つのブランドに対して、複数のコンセプトで楽しめる試みは面白いと感じた。身近に購入できて味わえるビールの1つである「黒ラベル」。シチュエーションによって楽しみ方を変えられることは価値の向上にもつながるだろう。数年後、「黒ラベル」ブランドがどのように評価されているのか。
飲みながら見守りたいと思う。
★「サッポロ生ビール黒ラベル」についてはこちらから
https://www.sapporobeer.jp/beer/
※2020.2.22 9:40 誤字がありました文章の修正を行いました。
※2020.3.9 12:00 一部文面を修正いたしました。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。