ビアバーを救うチャリティプロジェクト「オンラインタップルーム」始動
新型コロナウイルスの感染が急速に日本国内でも広まり、あっという間に私たちの生活環境を一変させました。ビール業界も飲食店が3密を避ける行動や営業自粛を求められたことにより客足が途絶え、店舗運営の存続が危ぶまれています。飲食店がなくなるということは、ビールを楽しめる場所が失われるだけではありません。ビールをつくっている醸造所が販売する場所が少なくなり、経営の悪化や貯酒タンクが空かないことで、新しいビールをつくることができなくなります。
このような厳しい状況のなか、ビールを愛するものたちが様々な支援活動をはじめています。「静岡クラフトビアマップ(以下、静岡CBM)」制作チーム中心の実行員会により、ビアバーをはじめとする飲食業界を支援するチャリティプロジェクト「オンラインタップルーム(以下、OnT)」がスタートしました。
「OnT」は、コロナ終息後も長期的に活用できる、業界の新たなWEB収益ツールとしても期待されています。どんな内容なのかご紹介します。
目次
■オンラインは実店舗を守るための環境活用だ!
「OnT」では最初に飲み手が登録されている好きなビアバーを選択して「OnTチケット」を電子決済(PayPal)で購入します(※1)。次にリストからブルワリーを選択して「OnTビールセット」を購入。代金(送料含む)は代引きで支払う形となります(※2)。チケット購入後、お店から仮想タップルームの開催情報がメールで送られてきますので、開催日に指定された方法でお店主催のオンラインタップルームに参加します(※3)。
飲み手は自宅に居ながらお店のスタッフや他の利用者とビールを飲みながら交流することができるので、飲み手もお店側も感染リスクを無くすことができます。
ビアバー側の流れとしては、まず「OnT」の企画を立ち上げます。企画を見て参加を希望するお客さんからの入金確認(※4)ができましたら、お客さんへ開催情報を案内して期日に開催します。
オンライン企画の内容は各店舗に任されており、企画に不安がある場合は「OnT実行委員会」のサポートを受けることも可能です。店舗のメリットとして、電子決済を利用することで、スタッフもどこからでも運営できるため、スタッフ同士の感染リスクが抑えられます。お店はお客さんからOnTの入店料(参加料)をお支払いいただくだけで、ビールの販売についてはお客さんと醸造所が直接行う形になるので酒類小売業免許を取得する必要がありません。ビアバーは実店舗が休業中でも売上げが期待できることと、テイクアウトやデリバリーのような資材の手配やオペレーション構築など、実施のためのコストがかかりません。
※1 OnTに参加するためにはPayPalへの登録が必要です。
※2 ビールセットは購入せず、OnTチケットで参加することができます。さまざまな店舗のチケットを購入すれば、「オンラインはしご酒」のような楽しみ方もできます。その場合は、ビールは飲み手自身で用意していただくことになります(飲む・飲まないも自由です)
※3 ビールはイベント開催日までに届くシステムですが、運送会社の状況により届かない場合がございます。余裕をもった購入をお願いします。
※4 お店側も決済のためPayPalビジネスアカウントへの登録が必要となります。詳細についてはOnT実行委員会(onlinetaproom@gmail.com)にお問い合せください。
最後はブルワリーやインポーターの流れです。
2,000円で販売可能な「OnTビールセット」を用意します(※5)。お客さんから注文が入りましたら、受注完了メールの送信と商品を代引き(送料を含む代金)で発送します。醸造所のメリットとして、売り上げの確保や不良在庫の回避、卸先を守ること、新規の販売先やファンを獲得できるチャンスがあります。
※5 ビールのラインナップは、醸造所に一任されます。
■「飲食店には時間がない」。その思いの元、動き出したものたち
このプロジェクトを立ち上げたのは、横浜でカナダブリッティシュコロンビア州産クラフトビールの輸入を手がけている「合同会社BC Beer Trading」代表社員の草場達也さんと「静岡CBM」のメンバーです。きっかけは、草場さんが営業自粛で苦しむ取引先の飲食店の様子をみたことから。運転資金がなくなり、お店を継続できなくなってしまう可能性がある飲食店に対して、即時入金される環境を整える必要があると考えました。一方で、「静岡CBM」もビアバー支援策を検討しており、もともと交流があった両者の思いが重なり、企画立案・運営を「静岡CBM」が担当。チャリティ活動として動き出しました。
「店舗独自のクラウドファンディングや、先払い制の飲食チケット販売など、さまざまなプロジェクトが立ち上がっていましたが、将来の利益の先食いとなって継続的な収益を見込めるものではなく、コロナ影響下では一時的な危機回避策です。さらに、コロナ終息後もすぐに客足が戻るとは考えづらく、消費者の消費行動はオンラインにシフトしています。そこで、コロナ終息後も使えるプラットフォームとして活用してほしいと思い、全国どの店舗でも実施できるサービスとして立ち上げました」(静岡CBM)
■飲み手が参加したいと思えるコンテンツを作っていけるかがカギ
早急な行動が必要な今回のプロジェクト。当然、課題もあります。
飲み手に対して、魅力あるラインナップの提供ができるかどうか。何しろこのような事態は初めての経験です。オンラインを通じての店舗運営は、他の業界をみてもほぼ例がありません。「OnT」では、基本的に開催内容は参加店舗側で自由に決めることができますが、最初のうちは戸惑うことが予想されます。いかに参加者の心をつかむ企画を継続して提案できるかがカギになると思います。
リリース時のビアバーは静岡県内を中心に仙台や東京など、ビールは「反射炉ビヤ」や「沼津クラフト」「伊勢角屋麦酒」「Y.MARKET BREWING」などの醸造所が予定されています。こちらもこれから趣旨に賛同するところを増やせるかが重要です。実店舗のように「このお店につながっているあのビールが飲みたい」と思ってもらえると飲み手の購入意欲も高まるのではないでしょうか。
前例のないプロジェクトですから、今は参加店舗や醸造所が少ないのは、仕方ありません。ここから、いかに飲み手が「OnT」を利用したいと思える内容を提供していけるか。参加者もいいアイデアがあればビアバー側に提案してみるのもいいかもしれません。
■スタートだからこそ。オンラインだからこそやれることがある
初めてのことなので、飲み手もビアバーも醸造所もわからないことが多いかもしれません。しかし、ビアバーに企画が一任されていますので、自由度が高い状態です。醸造所と組んで「オンラインタップテイクオーバー」や複数の醸造家をゲストに招いての「対談形式」、バラエティ番組のように特定のテーマで参加者にこだわりを話してもらうなど、オンラインだからできる様々な内容を企画することができます。
「OnT」の最大の目的は、この非常事態に私たちが大好きなビールを提供してくれる場を守ること。明確な補償の提示がないまま営業自粛を決めたお店は、収入が絶たれた状態で人件費や家賃、光熱費など毎月かかる支出により経営の継続が難しくなる現実が目の前に迫っています。そのために飲む側も提供する側もつくる側も大好きな空間を守り、再び乾杯ができる日のために新たな取り組みにチャレンジすることを検討してみてはいかがでしょうか。
こうした新しいコンテンツを提供は、お店の魅力を高めて新たな顧客を生み出す可能性あると思います。
◆オンラインタップルーム© Data
運営管理:静岡クラフトビアマップ
企画運営:オンラインタップルーム実行委員会
デザイン:イソガイヒトヒサ
プランニング協力:BC Beer Trading
資料の請求・お問い合せ:onlinetaproom@gmail.com
JBJAでは、新型コロナウイルスにより苦境に立たされているビール業界を応援するプロジェクトを立ち上げました。近隣のブルワリー、店舗がありましたらご支援よろしくお願いします。
●【随時リスト更新中!】全国の通販可能ブルワリー&持帰り可能ビアパブ
※2020.5.17 19:30 オンラインタップルームがスタートしましたので、ウェブサイトのリンクを追加しました。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。