【写真多め】【醸造体験】ビールづくりってどんな感じ?-Nikko Brewing編-
クラフトビールがどのようにつくられるのか、実際に見たことがありますでしょうか??
「ない!」という方、必読です!!
先日、ビアジャーナリストの有志メンバーと共に、ビール醸造を体験してきました!
ご協力いただきましたのは栃木県日光市にある「Nikko Brewing」。さぁ、疑似体験の旅へ出かけましょう!
目次
■Nikko Brewingとは??
同所は観光物産業などを営む地元の老舗「株式会社 三本松茶屋」が母体のブルワリー。立ち上げ時の指導は「エチゴビール」での醸造経験を持つ「菊地 明」氏が行い、2018年春に醸造を開始。現在は「細田 央」氏を中心とした3人のブルワーがビールづくりを担っています。

今回は「細田 央」氏(左)の指導のもとビールづくりを体験しました。ありがとうございます!【同社提供】
タンクは1000Lが4つ、2000Lが2つで、主にボトルをメインに県内で販売。奥日光の天然水を使用した「THE NIKKO MONKEYS」「Nikko Belgian Beer」ブランドで定番ビールを計4種、その他にも「きなこ」や「柚子」「イチゴ」など地場の食材を用いた様々な限定ビールを生産しています。他のブルワリーとの交流も盛んで、台湾の「TAIHU BREWING」とのコラボも話題になりました。
ジャパン・グレートビア・アワーズ2020において「THE NIKKO MONKEYS」シリーズの「PALE ALE」が金賞、「PREMIUM LAGER」が銀賞を受賞。インターナショナル・ビアカップ2020でもさらに受賞を重ね、いま期待の醸造所の一つです。
■さぁ、醸造体験の世界へ!
仕込んだのはなんと「ヴァイツェンボック」です(醸造体験でこのスタイルをつくるのは珍しいのでは!?)
「①麦芽の計量・粉砕」→「②マッシング(糖化)」→「③麦汁煮沸・ホップの投入」→「④麦汁冷却・イーストピッチング」までの工程です。
写真と共にお楽しみください!
①麦芽の計量・粉砕

レシピ通りに麦芽を計量。「High Color Pale」「Wheat Malt」「Flaked Wheat(※)」「Flaked Oat(※)」「Crystal Malt150」「Amber Malt」「Carafa Special 3」の7種の麦芽を今回使用します。((※)は破砕せず使用)

粉砕機で麦芽を粉砕していきます。
◎醸造ウラ話◎
・レシピは文献や国内外の醸造所が公開しているものを元に、あとは経験で微調整
・麦芽は細かすぎない程度に、殻が破けて中身が砕ける状態がベスト!その具合を手動で微調整していきます
・粉砕時はモルトの粉塵で服や携帯電話が真っ白になります!

開封した麦芽は湿気などでカビないようにコンテナで保存。半年~1年はもつそうです。
②マッシング(糖化)→ 麦汁回収・スパージング

今回は出来上がり量20L程度を予想。試験醸造用の「Brewzilla」という30L容器を用いました。

約50℃のお湯を用意して、麦芽を投入。温度が均等になるようにかき混ぜながら、1分間に1℃を目安に温度を上昇。糖化温度(64℃)になったら60分間キープします。

糖化酵素「アミラーゼ」が最も効率よく働くpHは「5.2」。その他味わいの調整も兼ねて水質調整も行います。

糖化と並行で、麦汁を底から循環させる「ロータリング(リサーキュレーションとも言います)」作業。全体の温度を均一にし、麦汁を濾すための麦芽層を形成する準備をしています。
◎醸造ウラ話◎
・酸化は大敵!液中の酸素濃度を減らすため、仕込み水は一度煮沸して抜気してから使うこだわりがあるそうです
・混ぜ方は「しっかり優しく!」。撹拌しないといけませんが、麦芽をこすりすぎたりバシャバシャ混ぜるとえぐみや酸化の原因に
・麦芽は3回に分けて投入。ボディを残すために「Flaked Wheat」「Flaked Oat」は時間をおいて、えぐみを出さないように「Carafa Special 3(濃色麦芽)」を糖化後半に入れました。全て理由があるんですね~

麦汁を別の容器に濾していきます。この時も空気をなるべく巻き込まないよう優しく伝わせながら麦汁を回収します。

最後に70℃のお湯をかけて麦芽カスにしみている糖分を含む液も濾しとります(スパージング)。

はい!甘~い麦汁が取れました!

残った麦芽は食べても甘くありません。渋いです。
③麦汁煮沸・ホップの投入

ビールを煮沸しながら、計量したホップを投入していきます。「Saaz(ザーツ)」「Mandarina Bavaria (マンダリナバーバリア)」「H.Hersbrucker(ヘルスブルッカー)」の3種類。ペレットホップをタイミングを変えて投入。
◎醸造ウラ話◎
・特に夏場の麦汁煮沸時は室温30℃を超えるのでめちゃめちゃ暑い!終わるころには汗と麦汁の甘い香りを纏うことに、、、
・煮沸はボコボコしっかり沸かすことが重要!「苦味の付与」「雑菌除去・DMSなど揮発物質の除去」「清澄化」「アルコール度数の上昇:凝縮」「メイラード反応によるモルト風味の強化」など様々な効果が得られます
④麦汁冷却・移送・イーストピッチング

十分に沸かした後は発酵タンクへ移動する準備。まずは渦をつくって(お玉で手動です)、ホップの滓や凝集物質を集めます(ワールプール作業)。

渦が落ち着いたら発酵温度(今回は19℃)まで液の温度を下げて発酵用のタンクに移送します(写真右→左へ)。バケツの氷水に浸してある鉄菅(チラー:冷却器)を通って冷却されます。

煮沸釜の底にはホップ滓などの凝集物が沈殿・除去されています。

使用した酵母はLALLEMAND社の「WHEAT BEER YEAST」。通常の仕込みでは液体酵母を培養して使用していますが、取り扱いが容易な乾燥酵母をぬるま湯に戻して投入しました。

発酵に必要な酸素を供給して、、、本日の仕込みは終了!
ここから1週間ほどの主発酵、その後の熟成を得て約一か月後に完成とのこと。
(ラガーの場合、もう少し熟成期間が必要になります)
10時からスタートして終了したのは18時。普段も7時間ほどかけて仕込んでいます。
今回はカットしていますが、作業の合間に使用器具の用意や熱・アルコール消毒を頻繁に行います。また、夏は暑さと、冬は寒さと闘いながら他業務(洗浄や登記、レシピ作成、材料調達や配送云々…)もこれと並行して行っているのですから、ブルワーの大変さが本当に身に沁みます、、。
醸造体験がまだの方、ぜひ機会を見つけていってみてはどうでしょう?
目の前の一杯がさらにおいしく感じること間違いなしです!
最後に…
この度の醸造体験で大変お世話になりました株式会社 三本松茶屋 専務取締役「鶴巻 康文」氏、ブルワー「細田 央」氏をはじめとしたNikko Brewingの皆様に改めて謝辞をお送りいたします。本当にありがとうございました。

1カ月後の完成が待ち遠しいです!わくわく!
※撮影時以外はマスクの着用、及び消毒の徹底をして作業しています。
—Brewery Data—
Nikko Brewing(株式会社 三本松茶屋)
栃木県日光市木和田島1564−4
<アクセス>
JR日光線 下野大沢駅 徒歩19分
東武日光線 明神駅 車8分
営業時間:10:00~18:00(月~日・不定休日あり)
※ブルワリー併設のティスティングルームでビールの提供。フードの持ち込み可。
Web : https://www.nikko-monkeys.beer/
Facebook : https://www.facebook.com/Nikko-Brewing-601417293549294/
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。