造り手の。飲み手の。「Otomoni(オトモニ)」は誰かのお供になるクラフトビール定期便サービス
非日常を届けるクラフトビール定期便「Otomoni(旧 ふたりのみ)」。meuron株式会社が提供している毎回違ったクラフトビールを定期的に届けるサービスです。2020年は、コロナ禍において様々な企画をスピーディーに立ち上げてブルワリーやイベントのサポートもしてきました。
そんな迅速な対応で業界を支援した「Otomoni」は、どんな思いでサービスを提供しているのでしょうか。その思いを聞くため、代表取締役の金澤俊昌さんを訪ねました。
目次
■推しビールが決められて、親や知人にも送ることができる
最初にサービス内容について金澤さんにお聞きしました。
「毎回、お客様が好きなビアスタイルのビールと飲んだことがないクラフトビールを組み合わせて届けています。送るビールは、国内外約200社1,200種類以上の中から毎回組み合わせを変えて送らせていただいています」
月2回の定期配送(6本プラン〈1回4,378円/税込・送料込〉)を基本として、AIを活用したデータから顧客の好みに合わせたクラフトビールを提供。データは、金澤さんが培ってきたコンビニエンスストアの商品を組み合わせたダイエット食を勧めるアプリケーション製作事業の経験を活用しています。
毎回異なるビールが届くので、年間最大144銘柄が楽しめます。「Otomoni」では、専用のアプリで飲んだビールの感想を記録することが可能。アプリでは、「推しビール」の設定できるので、「あのビールが好きなんだけど、銘柄をわすれちゃった」ということも防げます。
「キープ機能があるので、自分が好きな銘柄は次の配送時に入るサービスもしています。また、届け先を変更して離れて暮らす家族や知人に送ることも可能で、自分の推しビールをキープしていると送ることができます。(対応できないビールもあります)」
サービスの利用者は男女比率が4:6で40歳前後の利用が多い。利用者はクラフトビールに詳しくない人が大半を占めていて、ビールが届いてブルワリーの存在を知るケースを多いとのこと。
■サービス誕生のきっかけは夫婦仲の危機から
もともと1杯目は生という文化が馴染めずにビールは苦手だったという金澤さん。そんな彼がクラフトビール定期便サービスを始めるきっかけは何だったのでしょう。
「ビール自体は、アメリカで『BLUE MOON』に出会ったことで、自分でも飲めるものがあることを知りました。それからはクラフトビールが置いてあるお店では飲んでいたんですよ。このサービスを始めるきっかけになったのは、妻の復職や子供の保育園入園など家庭環境の変化からでした。
それまで喧嘩はしたことがありませんでしたが、環境の変化によるストレスから小さなことで揉めることが増えました。状況を変えるために知人から聞いた「晩酌で対話機会をつくってお互いを理解する」ことを週末に実践することにしました。
2人でゆっくり話をして楽しい時間を過ごすために、ちょっと珍しいお酒を買って楽しんでいました。クラフトビールは、味の多様性以外にもパッケージデザインが可愛かったり、格好良かったりするものが多く飲んでいました」
しかし、クラフトビールは取り扱い店舗が少なく探すのが大変だった金澤さん。置いてあるお店を見つけてもラインナップに変化がなく、様々なビールを飲みながら過ごしたい金澤さん夫婦にとって「モヤモヤする気持ちがあった」と振り返ります。
そうした思いを抱く中で「毎回違うクラフトビールを届けることをしたら、喜んでくれる人たちがいるのではないか」と閃きサービスを始める決意をしました。
先ず、行ったのがクラフトビールの定期便ビールを検討していることを市場に投げかけ、興味を示してくれた人にサンプルセットを送ること。すると、予想以上の反響があり、「冷蔵庫の前で、『今日は何から飲もうか?』と30分ぐらい話し合うご夫婦もいました」と同じ体験をしている人がたくさんいることがわかり、事業化するために必要な準備に入りました。
「色々なブルワリーのビールを楽しんでもらいたい」という思いから、積極的にビールイベントに足を運んだと言います。そこで飲んで感動したブルワリーへ直接企画書を持っていき、サービスへの協力を依頼する日々を送り2019年10月にサービスをスタートします。
■「ふたりのみ」から「Otomoni」へ。より利用者に寄り添った名称に
「Otomoni」は、最初「ふたりのみ」という名称でサービスを開始しました。しかし、蓋を開けてみると夫婦やパートナーと楽しむ人と同じくらい1人で楽しむ人が利用していることがわかりました。
想定をしていなかった展開に金澤さんは、「コロナ禍において自宅で1人飲みをする機会が増えたことが影響していると思います」と分析。この状況をみて「クラフトビールの可能性を閉じてしまっていた」と振り返ります。
サービスの本来の目的は、「誰と飲みたい」「どのビールを組み合わせて飲みたい」ということ。クラフトビールの可能性は、もっと掛け算できると考えて、「ふたりのみ」の概念を含んだ「Otomoni」へ2020年12月28日にサービス名を変更しました。
予想していなかった名称変更もありましたが、サービス開始から1年が経過。「Otomoni」を通してクラフトビールの課題が見えてきたと言います。
「私たちのお客さんに『オンラインショップでクラフトビールを頼んだことありますか?』とアンケートしたところ『ある』と回答された方は1%弱でした。まだまだクラフトビールを自宅で飲む習慣が定着していません」
クラフトビールという言葉の広まりを感じる中、自ら積極的にビールを選ぶという行為は日常化されていないと言います。
「最近、ビール4本とおつまみ2品のセットを選べるようにしたところ、お客様から『これで冷蔵庫に入らない問題が解決しました』という感想をいただきました。クラフトビールは、要冷蔵のビールが多いです。クラフトビールが日常ではない人からすると、1度に多く届くのは負担になっていたということがわかりました」
たくさんの種類から選べる楽しさがある半面、保管場所の問題が新しいサービスの形から見えてきたと話します。
こうしたクラフトビールに興味があるが詳しくない人からの感想は、業界の裾野を広げるためにも貴重な財産となってくると思います。
■利用者とブルワリーを繋げる懸け橋のような存在でありたい
新型コロナ感染拡大による想定外の影響もありながら成長している「Otomoni」。これからどんなことを考えているのでしょうか。
「アプリに飲んだビールの感想をたくさんいただいています。感想をブルワリーさんにお見せすると凄く喜んでくれます。今後は、こうしたデータをブルワリーさんと共有して商品開発に生かしてもらうサポートをしたいと考えています」
コロナ禍のため、今までのようなイベントの開催も難しい状態。ファンとの交流機会が少なくなっている状況において、利用者からのフィードバックは貴重な意見になると思います。
「これからもお客様と造り手の声を相互に届けることを大事にしていきたいですね。ただ、ビールを届けて飲んでもらうのではなくて、ブルワリーのこだわりを届けて感じてもらいながら飲んでもらえるように提供していきたいと考えています。そして、その感想をブルワリーへ届けていきたいですね。自分たちが両社の出会いや思いの懸け橋になれればと思います」
1度の配送で色々なブルワリーのビールが届けられる「Otomoni」のサービスは、ブルワリーにとっても利用者にとっても出会いの機会が増やすことができると金澤さんのお話を聞いて感じました。
「クラフトビールに興味あるけど、何から手をつけていいかわからない」という人に、お任せで多彩なビールとの出会いを提供してくれるのは助かるのではないでしょうか。もちろん、ある程度自分の好みがわかっているビールファンにとっても「推しビール」が決められるので飲みたいビールが届くので利用しやすいと思います。
あなたのビールライフのお供をしてくれるクラフトビール定期便サービス「Otomoni」。これから飲めるブルワリーも増えていくでしょうし、プランなどのサービスも充実していくでしょう。
どんな風にビールファンを楽しませてくれるのか。今後も注目したいと思います。
Otomoni Data
運営元:meuron株式会社
※2021.2.16 タイトルを一部修正しました。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。