突っ走った5年間を振り返って【ブルワリーレポート さかづきBrewing5周年記念編】
2016年3月1日、東京・北千住にオープンした「さかづきBrewing」。大手ビールメーカー出身が立ち上げるブルワリーということで当時は大きな注目を集めた。開業後は、連日多くの人が来店する人気店に成長。2020年8月19日には、新店舗をオープンした。
地元はもちろん遠方からもビールファンが訪れる「さかづきBrewing」は、2021年3月1日(月)に5周年を迎える。区切りと言えるタイミングで、これまでのこと、この先のことを聞いてみたく代表社員である金山尚子さんの元を訪れることにした。
目次
■がむしゃらに突っ走った5年間
北千住駅西口から徒歩5分。昭和時代から続く飲み屋街を抜け、商店街を進んでいくとお店にブルワリーに到着する。赤い扉を開けると2020年12月に誕生したばかりのお子さんを抱えた金山さんが出迎えてくれた。
お子さんを寝かしつけながら、5年間を振り返ってもらった。
「万感の思いです。横も後ろも振り返ることなく突っ走ってきたので心身ともに大変でしたね(笑)。おかげさまで忙しい日々を送らせてもらいました」
下町の情緒を残しつつ、近年は大学を誘致することでファミリー層だけではなく若い世代も多く過ごしている北千住。「新しいモノも積極的に受容してくれる雰囲気があり、住む人々のエネルギーに魅力を感じて選びました」という地でがむしゃらに動いてきた。
●さかづきBrewing 3/1(火)北千住にオープン(開店時紹介記事)
ビール醸造に加え、初めての飲食店経営。金山さんの話を聞いていて、常に表情に余裕がなく慌てていたオープン当時を懐かしく感じた。
金山さんの凄いところは、余裕がなくてもお客さんとの対話を欠かさないこと。その結果、リピート客を増やして、ディナータイムは予約がないと入店できないほどの人気店に成長した。
●宿場町に着々と根づきはじめたさかづきBrewingの1年を訊く!
予想以上の来店客に、毎年夏になると提供できるビールが少なくなってしまう問題も発生した。このような課題をクリアして次のステージに進むため、2019年の3周年インタビューでは、新店舗の構想を打ち明けてくれた。
そこからの動きは早く、同年10月には新店舗の契約を締結。改装工事を開始した。しかし、その直後に予想もしていなかったことが起こる。新型コロナウイルスの感染拡大である。2020年4月には、最初の緊急事態宣言が発令され、営業を自粛せざるを得なくなった。また、自身の妊娠もあり生活環境の変化もした。
経営面でみると大変だったが「新店舗と出産の準備の時間に充てられたのは助かりました。時間ができたことで、『自分たちの強みは何だろう?』と考えることもできました」と話す。
■設備の特徴はつかめてきた。これからはビールをブラッシュアップしていく段階
コロナ禍にオープンした新店舗。こちらでは変更した点がいくつかある。その中で最も変わったのが醸造設備だろう。旧店舗では、DIYでつくり上げた醸造設備だったが、新店舗の醸造設備は中国から輸入した500Lの醸造設備だ。これまでの2倍以上の大きさである。形状も変わり、1から機器の特性を見極めていかなければならない。
●理想のビールをここで実現させたい! さかづきBrewing新店舗2020年8月19日(水)オープン
「13回の仕込を行った(R3.2.18現在)」という中で、どんな違いを感じたのだろうか。
「どのビールも1回しか仕込んでいないので、それぞれの比較はこれからですね。1回の仕込量が約180Lから500Lになったことで在庫を確保できるようになりました。その分、じっくりとビールを熟成させることができるようになったので、綺麗でクリアな味わいのビールを楽しんでもらっています」
コロナ禍で以前のような来店数ではないため、単純な比較ができないが在庫に余裕が生まれ、1つのビールにかける時間をしっかり取れるようになったと話す。
「後は、1つ1つのビールを理想の味に近づけるために、課題をクリアしていかないといけないですね。特にフルーツや副原料を使うビールは課題が多いです。設備が変わったことで投入のタイミングを色々試しています」と、目指す味に近づけるため挑戦を続けている。
醸造設備自体は、何回も使うことで特徴は把握できてきたと金山さん。「でも、醸造室が広くなったから配管の調整や掃除など移動が多くなったのは大変」とちょっとした苦労話もしてくれた。
新店舗では、フードメニューも一新。かねてから金山さんは、「『さかづきBrewing』は、ビールだけではなく、料理とお客様が楽しめる空間を提供する場所」であることを強調してきた。
こちらでは、炭火焼を中心に季節ごとに旬の素材を使った『本日のおススメメニュー』を充実させている。さらに食事との相性を広げるため、シェフがセレクトしたワインも用意することで、より食事を楽しむ幅が広がるようになった。
調理場も広くなり、シェフの人数も増やしてメニューを増やしたことで、コース料理のように前菜からメイン、デザートまで様々な料理を提供している。
新店舗のオープンから半年が経過して、来店する人たちの反応を聞いてみた。
「新型コロナウイルスの影響もあって、移転前からのお客様の中には新店舗にまだ来店できていない方もいます。それでもお祝いの言葉だったり、お花だったりをいただいて感謝の気持ちでいっぱいです」
コロナ禍のため、まだ来店できない常連客も多いという。飲食店にとって厳しい状況が続いているが、「新しく来店してくれる人もたくさんいます」と話す。
新店舗では、1階にタップルームも備えている。2階のレストランとのすみ分けはできているのだろうか。
「私も始める前は、お客様が理解をして利用してくれるか不安でした。でも、始めてみたら1階は交流を深める場として、2階は食事を楽しむ場として使い分けてくれています。平日、タップルームで飲んだお客様が、休日はレストランでご家族と食事を楽しまれています」
利用する人も、状況によって使い分けて楽しんでいるようだ。
■訪れたくなるブリューパブを目指して、「さかづきBrewing」の価値を高めていく
「突っ走ってきた5年間」という金山さん。コロナ禍のいま、この先をどのように見据えているのだろうか。
「より“さかづきBrewing”の価値を高めていこうと考えています。近々では、1階のタップルームと2階のレストランのタップ数を増設します。また、好評だったゲストビールの取り扱い継続も検討しています。1階と2階をしっかり差別化し、それぞれのエッジを効かせていきたいです。
それと、ゴールデンウイーク明け頃を目標に旧店舗をリニューアルオープンさせたい。大衆的な居酒屋をコンセプトに、新店舗とは違うビールや楽しみ方を提供していきたいと考えています」
そのために、「お店も自分自身の生活も守るために、私がやらなきゃいけないことの優先順位を付けていかないといけない」と言う。
「ブルワリーの数も増えて、競争も激しくなっています。ビールのクオリティを上げていかないと残っていけません。ビール造りは私しかできないので、店舗をマネージメントできるスタッフを育成して、ビール造りに専念できる職場環境を早く築いていきたいと考えています」
今後、ステップアップしていくためには、金山さん1人では難しくなってくる。「さかづきBrewing」というチームの力を高めていく必要があるだろう。
ただ、個人的には大丈夫だと思っている。2021年に入り、金山さんが育児でお店を空けたり、メインシェフが長期休暇をとったりする期間があった。その間、若いスタッフだけで営業をしていたが、笑顔が絶えない普段と変わらない温かい空間があったからだ。
チームとしても確実に強くなっているのを感じている。
これからも色んな課題が「さかづきBrewing」の前に表れると思う。その課題を金山さんたちが乗り越えていくのか。引き続きビールを飲みながら見守りたい。
【5周年記念について】
開業日の3月1日(月)が休業日ということもあり、3月17日(水)から19日(金)に設ける予定。詳しい日程や内容については、「さかづきBrewing」Facebookをチェックしてください。
Special Thanks PhantomZebra
さかづきBrewing Data
住所:東京都足立区千住1-20-11
電話:03-5284-7676
Facebook https://www.facebook.com/sakaduki
営業時間:1Fタップルーム 平日15:00~22:00 休日はレストランと同じ
2Fレストラン 平日16:00~22:30(L.O. 22:00)土13:00~22:30(L.O. 22:00)日13:00~21:30(L.O. 21:00)
※新型コロナウイルス感染拡大により営業時間が変更になる場合があります。来店の際はFacebookをご確認ください。
定休日:月曜日・火曜日
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。