【JBJAChannel】サッポロビールの伝統的ラガー★赤星×開拓使麦酒仕立ての飲み比べ
ビールに愛された皆さまへ!
本日公開のJBJAChannelは、サッポロビールの伝統的なラガービール、「赤星」と呼ばれて人気の高いサッポロラガービールと、LAGARの表示誤りで販売中止からの逆転発売決定で話題を呼んだ開拓使麦酒仕立ての飲み比べの動画です。
いずれも魅力的なビールですが、簡単に説明を入れておきましょう。
目次
サッポロラガービール
いわずとしれた、サッポロビールの影の看板役者。(看板なのに影というのはおかしいですが、とにかく人気があります)
「程よい苦みの効いた、熱処理ならではのしっかりとした厚みのある味が特長」(サッポロビールHPより)
とあるように、生ビールがブームの日本のビール業界においては珍しい熱処理が行われています。
熱処理って何?
ビールの製造工程における最後の方になるのですが、発酵・熟成や貯蔵の終わったビールはろ過されてビン詰め・缶詰・樽詰めをされていきますが、その昔は酵母をろ過しない状態でこのパッケージング工程を経て製品化されたために、ビンの中で酵母が更に発酵して栓が飛んでビールをこぼしてしまったり、またはビールを腐らせてしまうこともありました。
そこでパスツールがワインのために酵母を死滅させるため低温殺菌法を発明し、それをビールにも応用させたことで、ビールの品質向上に大変に役立ったわけです。
ビール好きが一目置く、おいしさ
「サッポロラガービール」のロゴを掲げた居酒屋や料理店を見かけると、「お、ここの店主は味を分かっているんじゃないか?」とついつい入ってみたくなるものです。
つまり、「赤星」を掲げておけば「麦酒好きホイホイ」みたいに、サッポロビールの好きな呑兵衛を高確率で釣ることが出来る・・・かもしれません!
熱処理を経たしっかりとした苦みというメーカーの言葉の通り、「よき昭和のオヤジ臭さ」(いい意味で!)の郷愁をも誘う、味わいの深さがあります。しかし、ここは伝統をしっかりと引き継ぎつつも、現代の日本人にも好まれて受け入れられていくように、少しずつマイナーチェンジは続けてきたと思います。
それが、今回の飲み比べをした「開拓使麦酒仕立て」との差になってきたのでしょう。
EじゃなくてもAじゃないか!「LAGAR」で話題に!
開拓使麦酒仕立ての話題性
発売直前の2021年1月に販売中止のニュースが飛び込み、日本中のビールファン、そしてそうでもない人たちをさえもざわつかせた、開拓使麦酒仕立て。話題沸騰の中で、2021年2月2日にファミリーマート限定で発売されることになり、多くのビアファンが歓喜の声を上げました。
通常、各コンビニ限定のビールが発売されても、ビアファンが「生活圏にそのコンビニが無いから20分歩いてようやくゲットした」などとSNSでこっそり投稿しつつ、ひそやかに珍しさを楽しんで愛でているうちに店頭からひっそりと姿を消していくものですが、
今回の話題は全国区でビールファンではない方々にも知れ渡るようになりましたね。
私は、沢山の方々から大きな関心を寄せてもらったことで、多くの方々が手に取るきっかけとなったと思うので、この騒動も悪いことではなかったと感じていました。
伝統的製法をもっと詳しく
サッポロビールの商品情報によると、このように記述されています。
「“古くから用いられていた伝統的な製法”を採用した濃醇なビールが新登場。
日本人によるビール造りの原点である「開拓使麦酒醸造所」で用いられていた伝統的な製法(注1)を採用し、
しっかりとした飲みごたえのある味わいを実現しました。麦芽100%、アルコール6%で仕上げた、今だけの味わいをお楽しみください。
(注1)3回煮沸製法を使用し、濃厚な麦汁をつくる。」
3回煮沸とはどの工程のことなのか
この場合、「伝統的」な部分は3回煮沸ということですが、これはどういうものなのでしょうか。
ビール製造工程のうち、麦芽をおかゆのようにするために煮沸され、酵素の働きによりでんぷんを分解させて甘い麦汁を作り、穀皮や麦芽の粒などの固形物を取り除いた麦汁が取り出されます。この麦汁にホップが投入され、さらに凝固物が取り覗かれてから酵母を入れて発酵・貯酒へと進むのですが、
この最初のあたりにある「麦のおかゆ=マイシェ」を煮て作る「仕込み(=糖化)」という工程のところで、この伝統的な製法の違いが出てきます。
仕込みに必要な器具には「仕込釜」と「仕込槽」があります。
仕込槽を加熱してマイシェの温度を段階的に上げるのが「インフュージョン法」ですが、仕込槽からマイシェの一部を取り出して仕込釜に移して煮沸して、また戻すという温度を高める方法が、「デコクション法」になります。これを3回も行うという、大変な手間をかけるのが、「3回煮沸法」ということです。
※サッポロビールの製品情報ページにはトリプルデコクションという言葉は使っていませんでした。
3回煮沸すると、どんないいことが起こるのか
びあけん公式テキストによると、「最も古くから発達してきた方法」とありますが、仕込み、つまり糖化というものがどんなことなのかというと、この温度変化によって酵素の働きを活発にしたり停止させたりする効果があります。酵素(α/βアミラーゼ)によってタンパク質がでんぷんに分解され、でんぷんが糖に分解されて変わっていくのですから、この「化学式の連結のほぐれ具合」を温度で調整してきたということなのです。昔の人って、すごいですね!
ということで、3回もタイミングを計って温度を上げていく製法を使うのですから、しっかりと糖化が行われ、酵母がアルコールを生成するための準備がこれ以上ないぐらいに万全になるということなのです。
JBJA代表の藤原ヒロユキの著書「BEER HAND BOOK」にも温度変化について分かりやすい図解があるので、こちらもご参照ください。
そしてその味わいの差は
「飼い猫と野生のネコぐらいの差があります!」と、BJA副学長の川端ジェーンが申しておりましたが、
サッポロラガービール(赤星)がいつもの「じっくり味わうに相応しくおいしいわ~!」という評価から「こんなにドリンカブルだった?」と変化してしまうほど、
開拓使麦酒仕立のビールは力強い旨味とキレのある苦みと酸味、香りが立っていました。
これは加熱処理(赤星)と生ビール(開拓使)の差、原材料の違いもあるかと思いますが。
製造元がいずれも「伝統的」と謳っているにも関わらず、いろいろな方向性・意図を感じさせる違いを見せてくれて、とても愉しい飲み比べになりました。
もしよろしければ、動画も楽しんでくださいね!
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。