おつまみスナック「CRATZ」が本当にビールに合うのか試してみた
江崎グリコ株式会社(以下、グリコ)が販売しているおつまみスナック「CRATZ」。ビールに合うおつまみとして開発された商品です。2005年から販売を続けているロングセラー商品なので、食べたことがあるビールファンも多いのではないでしょうか。
今回、数量限定の「CRATZ うましおポテト(以下、うましおポテト)」発売にあたり、ビアジャーナリストアカデミー16期生でもあるグリコの富岡英介さんより「感想を聞かせてほしい」と声をかけていただきました。そこで、富岡さんに「CRATZ」の魅力を聞くとともに、ビアジャーナリストでペアリング会を実施しましたのでレポートします。
■素材を生かした味が「一番搾り」の味を引き立たせる
現在、数量限定販売している「うましおポテト」は、「キリン 一番搾り(以下、一番搾り)」とのコラボレーション商品です。コラボレーションは、「鶏のわさび醤油仕立て(2019年)」「焼きもろこし(2020年)」に続いて3回目となります。
この「うましおポテト」は、どのような商品なのでしょうか。
「キリン一番搾り醸造家監修のもと、『一番搾り』の繊細な味わいを『うましおポテト』の味が引き立たせるように設計しています」
味を引き立てることで、どのような反応が生まれるのか。くまざわななこ、HOP SAIJO、森下慶、楯優作の4名のビアジャーナリストに実食してもらった。
――:では、合わせてみてください。
(一同合わせる)
森下:あ。軽いですね。食べやすい。
楯:味が濃くてビールを流し込むだけという感じではなくて、きちんと「うましおポテト」の素材の味と「一番搾り」とのバランスが良いです。お互いの存在を邪魔しないで味を引き立てて生かしあっています。
森下:今まで「CRATZ」は、味が濃いクラッカーというイメージが強くありました。でも、「うましおポテト」は、味付けを抑えていることで食感も感じながらジャガイモの風味を味わえるのが良いです。
くまざわ:使用されている麦のバランスが良いと思います。咀嚼していくと麦の味わいが感じられますね。「一番搾り」の麦芽の風味とよく合います。
富岡:実は、定番商品である「ペッパーベーコン」とは配合骨格を変えていて、「うましおポテト」はポテトの味わいがより楽しみやすくなっていると思います。
――:そうでしたか。これはお話を聞かないと分からないことですね。
SAIJO:本当。知らないと楽しめないところですね。
楯:出汁の風味もありますね。原材料を見ると昆布エキスを使用しています。すごく優しい感じの味わいが良いですね。
SAIJO:ジャガイモの味わいが良くわかりますし、食べていくと麦も感じられて素材が生かされているなぁって思います。美味しいです。
――:ピルスナースタイルのビールは、出汁との相性も良いと言われています。だからこそ「一番搾り」の味を引き立ててくれるのだと思います。
森下:出汁を使用していて素材を生かしているのは良いなぁ。
くまざわ:良いですよね。クラッカーよりも塩っ気が少ないからジャガイモの風味が分かりやすいです。
SAIJO:原材料を見るとビール酵母も入っていますね。
富岡:はい。定番商品で、2018年のリニューアルの際に、もっとビールにあうおつまみスナックを意識してもらうために使用を始めました。
森下:少し話が逸れますが、どのタイミングでアーモンドを食べればいいのでしょうか。いつも迷ってしまいます。
富岡:アーモンドは、味の濃い「ペッパーベーコン」を想定して入っています。口の中をリセットしたいときに食べてもらうのがいいと思います。
森下:食感も変わるから飽きないで食べることができますね。「一番搾り」は、すっきりだけではなくて、甘味が感じられるので「うましおポテト」の風味を生かしてくれていますよね。
楯:ライトなビールや苦味が強いビールだと「うましおポテト」が優しい分、バランスが悪いかもしれません。
SAIJO:そうかもしれません。「一番搾り」との相性を考えられた商品ですね。
森下:いい意味で落ち着いた味わいなので、万人受けする商品だと思います。
――:歯ごたえがあるので1袋で満足感もあります。
くまざわ:ありますね。
森下:味が薄いなと思う人には、うましおパウダーを付けて味を調節できるようにしたら面白いと思います。
一同:それは面白い!
――:色々な感想が聞けました。それでは結論を出しましょう。「うましおポテト」と「一番搾り」は合いますか?
一同:合います!
■定番商品は、どんなビールが合うのか試してみた
「CRATZ」には、定番商品として「ペッパーベーコン」と「枝豆」があります。「うましおポテト」は「一番搾り」に合わせた商品でしたが、定番商品はビールに合う商品です。ただ、一言でビールといっても、ビールには様々な種類があります。せっかくなので定番商品は、どんなビアスタイルのビールと相性が良いのかを試してみることにしました。
ペアリングを始める前に「CRATZ」が、どんな経緯で生まれたのか富岡さんに聞きました。
「昔からスナック菓子もおつまみ的な役割を果たしていましたが、スナック菓子とおつまみは売り場がはっきり分かれていました。だったら両方の要素を取り入れた「おつまみスナック」という新しいジャンルをつくろうと言うことになったのが始まりです」
発売すると「濃い味付けがビールに合う」と多くの支持を得ます。16年の歴史の間にはピンチもあったといいますが、2018年のリニューアルで『「CRATZ」=ビールに合う』と言うことを再強調した頃から現在も販売が好調で、「『CRATZ』はビールのお供!と明確に伝えることが重要だと認識しました」と話します。
――:はじめに「スーパードライ」との相性から感想を聞かせてください。
SAIJO:「ペッパーベーコン」の味が濃くって美味しいですね。これは間違いなく合うと思います。
楯:「ペッパーベーコン」の塩味を「スーパードライ」がすっきりさせてくれますね。
くまざわ:お互いの味のバランスがちょうどいいですね。注ぎ方にもよると思いますが、炭酸を効かせた方が合いますね。
SAIJO:ビールがスッキリした味わいなので、このくらい濃い味付けの方が進みますね。
――:「ペッパーベーコン」と「スーパードライ」は、一般的なイメージのビールとおつまみという感じでしょうか。
森下:そういう感じですね。
――:では「枝豆」の方の感想を教えてください。
楯:これも予想通り合いますね。
くまざわ:そうですね。昔からある定番の組み合わせって感じです。
SAIJO:私は「スーパードライ」を合わせるなら「ペッパーベーコン」の方が好きですね。
一同:わかる!
くまざわ:「枝豆」との相性も良いけど、「スーパードライ」をどちらに合わせるって聞かれたら「ペッパーベーコン」の方をお勧めしたいです。
楯:袋を開けた瞬間から香るペッパーベーコンはビールを欲しますね。
SAIJO:良い香りですね。
森下:香りで1杯いけますね。
――:すっきりした「スーパードライ」には、味の濃い「ペッパーベーコン」の方が好評でした。次に「ヒューガルデンホワイト」を合わせた感想をお願いします。
くまざわ:「ペッパーベーコン」に合わせるとタン塩にレモンみたいですね。オレンジピールがレモンのような役割を担ってくれます。
SAIJO:うん。そんな感じがありますね。
楯:まさにタン塩とレモンといった感じですね。ピッタリな表現で他に浮かばなくなりました。
くまざわ:「スーパードライ」のときは、香辛料に合わせる感じでした。それに対して「ヒューガルデンホワイト」は、ベーコンに合わせる感じですね。
――:「枝豆」の方はいかがでしょうか。
楯:これは良いペアリングですね。味が締まる感じがあります。
森下:最近、ウィート系(小麦麦芽を原料としたもの)のビールは重い感じがして敬遠していましたが、「枝豆」と合わせると重い感じがなくなって飲みやすくなりました。
――:興味深い変化が生まれましたね。
くまざわ:草食系の男女の組み合わせって感じですかね。
森下:うまい!
くまざわ:合わせてみないとペアリングは分からないですね。
SAIJO:お互いの風味が生きる組み合わせだと思います。
――:素晴らしいペアリングになりました。次は「PUNK IPA」をお願いします。
森下:私は「ペッパーベーコン」と「PUNK IPA」の柑橘を思わせる風味の方がタン塩とレモンっぽさを感じますね。
SAIJO:両方がちょうどいい味の強さなので、バランスが取れていて好きです。「PUNK IPA」の余韻が楽しめるのもいいです。
くまざわ:バランスはいいですね。
森下:どちらもやんちゃな感じがあって、それがうまく組み合っている感じがあると思います。その一方で「枝豆」は、枝豆の青臭さと「PUNK IPA」の柑橘のフレーバーが戦っていますね。
楯:そうですね。バランスは良くないです。
――:ペッパーベーコンの味の濃さと合う一方で、枝豆の青臭さが強くなってしまう。興味深い感想が聞けました。最後に「TOKYO BLACK」の感想を教えてください。
SAIJO:「ペッパーベーコン」と合わせると麦の風味が感じられますね~。
くまざわ:面白いかもしれないです。トーストのような感じがありますね。
SAIJO:そうですね。どちらからもローストフレーバーを感じます。
楯:私は焼肉っぽさを感じます。
森下:あ~。炭火で良く焼いたお肉って感じ。
楯:じっくり焼いた焼肉。
SAIJO:あ~。なるほど。
森下:ただ、「ヒューガルデンホワイト」や「PUNK IPA」の方が合いますね。
楯:そうですね。「TOKYO BLACK」と合わせるとくどくなっちゃいますね。
――:濃色系ビールで合わせるなら、シュバルツやダークラガーの下面発酵ビールの方が相性の良さがありそうですか?
森下:そうだと思います。
――:「枝豆」はどうでしょうか。
SAIJO:このペアリングはちょっと……。
森下:「TOKYO BLACK」のローストフレーバーと枝豆の青臭い感じが合わない。
くまざわ:2つが交じり合わないです。
――:皆さん、表情が曇ってしまいました。
森下:アーモンドとの相性はバッチリですけどね。
一同:それは間違いない(笑)。
――:実際に合わせてみると新しい発見もありましたね。「枝豆」と「ヒューガルデンホワイト」のまさかの相性には驚きました。富岡さん、話を聞いていていかがでしたか。
富岡:こんな組み合わせもあるのかと思いました。他のビールでも試してみたいです。ビールファンの皆様も色々なビールと合わせながら「CRATZ」を食べてみてください。
――:同じ色でもビアスタイルが変わると感じ方も変わると思うので色々試してみてほしいと思います。今日はありがとうございました。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
ビアスタイルを変えることで、味の感じ方が変化する面白さと楽しさを感じることができました。感想を出し合って楽しめるところもペアリングの良いところです。オンライン飲み会の企画としてやってみると盛り上がると思います。
「CRATZ」は、コンビニエンスストアやスーパーで購入できます。ぜひ、皆さんもビアジャーナリストの感想を参考にしていただき、色々なビールで試して「自分のベストペアリング」を探してみてください。
最後に、記事執筆にあたりご協力いただいたグリコの富岡さんはじめ、ビアジャーナリストの皆さまに感謝申し上げます。
◆ペアリングで合わせたビール
スーパードライ
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。