[テイスティング]2012.10.20

UK BEER Tasting:イギリス・ビール・テイスティング

 先日、イギリスのビールを数本テイスティングする機会に恵まれた。
 
 エール文化の本場とも言えるイギリスだが、意外と日本に輸入されている銘柄数は、少ないと言える。
 今回もすべて初めて飲む銘柄ばかりで、非常に興味深かった。

具体的に紹介しよう。

画面左から。

RUG GATE BREWERY 「RUBY MILD」 4.4% (イングランド)
色はクリアーなダークブラウン。
ロースト感とわずかな酸味。
フルーティーでリンゴのような香りがする。ロースト感と相まってアップルパイにも似たキャラクターを感じる。

Orkney Brewery 「Atlas range NIMBUS BLOND」 5.0% (スコットランド)
色はわずかにくすみのあるライトゴールド。
アイスティーのような香りと、柑橘系の果物を思わせるフルーティーなアロマとフレーバーが漂う。
飲むと苦みが印象的で、後口にはしっかりとした苦味が残り、その余韻は長い。

TRYST BREWERY 「Blathan」 4.0% (スコットランド)
色はわずかなくすみのあるライトゴールド。
Blathanはゲール語で「小さな花」の意味。その名の通り、小さな花弁を持つエルダーフラワーが使われたビール。
グルートビール(ホップ以外の薬草などを使うビール)の伝統があるスコットランドには、今でもこのようなビールが多い。
エルダーフラワーはピーマンやししとう、ハラペーニョのような香り(辛味は無い)がする。いわゆる、“青い野菜や草のような”香りである。

Downton Brewery 「CHIMERA IPA」 7.0% (イングランド)
色はオレンジがかったゴールド。泡がきめ細やかでしっかりしている。
ホップの苦みは後口に残るが全体的に強くはない。
むしろ、モルトのキャラクターが印象的。

SULWATH Brewery 「CRIFFEL ALE」  4.6% (スコットランド)
色は赤みがかった銅色。
モルトのこうばしい香りが漂う。
口に含むとモルトの香りと焦げ感、さらにはスモーキーフレーバーが広がる。
スモーキーなキャラクターは温度が上がるとさらにはっきりと感じることが出来る。

Traditional Scottish Ales Brewing Co… 「GLENCOE Premium Wild Oat Stout」  4.5% (スコットランド)
色はほとんど黒と言っていいほどのダークブラウン。
香りの第一印象はコーヒー。モルトのこうばしさも感じる。
口に含むとチョコレートのような風味も漂う。スモーキーな香りも感じる。
滑らかな口当たりだが、ボディはミディアムライトで重みを感じない。さらりとした飲み口。
温度が上がるとスモーキーなキャラクターが顕著になる。

FULLER’S 「PAST MASTERS XX Strong Ale」 7.5% (イングランド)
色はマロンブラウンで、きめ細やかな泡はベージュの色みがある。
モルトの甘い香りとフルーティな香りが漂う。
口に含むとモルトの甘味、飲みこむとアルコールの温かさが広がる。
後口の苦みはビールらしさを感じさせてくれる。リッチなビールである。
PAST MASTERS のシリーズは1845年から伝わる醸造所ノートを紐解き、過去のレシピを復刻させたもので、XX Strong Aleは 1891年当時のもの。
他には、1893年の「ダブルスタウト」も再現されている。


イギリスのビールは奥が深い。
今後も注目だ。
 

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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