不幸な出会いは避けるべきだ
先日、ある会合の食事会に参加した。
食材は、蟹や寒ブリ、クロアワビなどを使った豪華な和食だった。
そして、供じられたのは、ピルスナー(淡色系下面発酵ビール)だった。
残念ながら淡色系下面発酵ビールは魚介類との相性があまり良くない。
なぜか?
ビールの中にはアルコールと二酸化炭素以外に多彩で複雑な香味成分が含まれている。これらは、香りや味わいとして私達を楽しませてくれるのだが、量が多いと人間が不快に感じるものもある。
その中のひとつに硫黄系の不快臭がある。これは、「蟹を食べた後に殻や甲羅を放置した臭い」と表現される。
実は、このフレーバーは淡色系下面発酵ビールには微量ながら含まれている。
もちろん、日本の大手ビール会社の造るビールには閾値を超える硫黄臭は残っていないので、普通に飲んでも不快には感じることはない。私は常々、日本の淡色系下面発酵ビールは世界でもトップクラスのクォリティーだと思っている。
しかし、蟹や生魚や貝などの魚介類とともに口にするとどうなるだろうか?
本来は感じないほど微量の「蟹を食べた後に殻や甲羅を放置した」硫黄臭が”かけ算”となってしまうことがある。
皆さんも、刺身とともに淡色系下面発酵ビールを口にして、生臭さく感じた経験があるのではないだろうか?
このような組み合わせは、最も不幸なことであり、ビールにも料理にも悪い印象を与えてしまう。本来は素晴らしい味わいである料理とビールなのに、「どちらも不味い」と思ってしまうのだ。
私の今までの経験では、魚介類には濃色から黒色の下面発酵ビールか上面発酵ビール全般のほうが素晴らしいペアリングであり、素晴らしいハーモニーを奏でる。
今回の料理もシュバルツやスタウト、ドライホッピングされたペールエールやスパイシーなベルジャンエールなどで楽しめば両者の魅力は何倍にも広がったと確信している。
ビールと料理を組み合わせることは今後のビール文化発展のために必要不可欠のテーマである。
その際、幸福なベスト・ペアリングを考えることが最も重要だが、まず第一歩として「不幸な出会いを避けるという考え方も必要だ」と感じた食事会であった。
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