「ビール愛」をつなぐサーバー職人 牧寺美樹さんにインタビュー(前編)
こんにちは、旅とビール好きMC・ビアチューバーとして活動中のあやねえです。特技のおしゃべりを活かし「美味しいビール」を支える方達へのインタビューをスタート!
第1回目は「縁の下の力持ち」として、ビールサーバーを構築し、メンテナンスもされる「ビアサーバー職人」牧寺美樹さんにお話を伺いました。前編「仕事の流儀」、後編「職人魂とパワーの源」に分けてご紹介します。
目次
コロナ禍でもぶれない「職人」の仕事姿を目撃
「美味しいビールをパブで飲むって、本当に幸せな時間だったんだ」
当たり前だと思っていたそんなことを、改めて実感する2021年6月。「まん延防止措置」「緊急事態宣言」で、休日訪れたいお気に入りパブに、ビールはありません。
寂しく切ない心を慰めるためスーパーでビールを買い込み、部屋で飲みながらSNSをチェックしていたその時・・・目に飛び込んできた投稿写真。
「来月オープン予定のクラフトビール店。サーバー工事、完成しました」
真っ白なお店の壁に映える、ぴかぴかの金のビールタワーとタップが
「ビールを早く注がせてよ!」
と言わんばかりに並んでいて・・・そこから希望の光がさーっとさしたかの様な感覚に包まれて、なんだか元気が出てきた!
投稿主は「ビアサーバー職人」牧寺美樹さんでした。
丁寧な仕事ぶりとその腕前を買われ、全国北は北海道から南は沖縄まで、声がかかればどこにでも飛んでいく。その存在を知るクラフトビール業界人の多くに慕われる人です。
コロナ禍でも変わらない牧寺さんのパワーは、いったいどこから産まれてくるのでしょうか?
直接、ご本人から伺ってみることにしました。
ビールを「つなぐ人」あっての「美味しいビール」
美味しいビールをビアパブで飲む。
席に運ばれてくるその1杯の裏には、様々な人たちの力があります。
ビールを「造る人」。お店で「注ぐ人」。席に「運ぶ人」。
トラックでビール樽を「運ぶ人」もいます。
そして、普段お店で目にすることはない、縁の下の力持ちもいます。
そんな中のひとりが「つなぐ人」。
ビール樽から、タップと呼ばれる注ぎ口までをつなげ、ビールが出てくる仕組み「サーバーシステム」は、生ビールを提供する店の要です。ビアサーバー職人の牧寺さんは、サーバーシステムを構築するプロフェッショナルなのです。
ビール好きが高じて営業マンから「ビアサーバー職人」に転身
──初めに・・・どんなきっかけでこの仕事を始められましたか?
「大手厨房機器メーカーへの就職です。学生時代に旅した石垣島で、宿泊先の冷蔵庫のペンギンマークを見て『インパクトあるなぁ!』と思ったのが最初の出会いでした。就職活動時に、僕らの時代は、ぶ厚い会社案内の冊子がありまして。それをめくっていたら『あのペンギンの会社だ!』・・・そして就活し、新卒で入社出来ました」
──最初からビアサーバー職人のお仕事だったのですか?
「入社してすぐに大手ビールメーカーの窓口担当になり、設置作業を日々こなしていたので、サーバーの仕組みは、理解していましたね。
ビールを飲むのが好きだったこともあり、2007年に初めてクラフトビールを取り扱うお店の担当をしました。営業~工事まで一人でするようになりましたが、当時の日本ではクラフトビールのお店はそんなに浸透しておらず、年間2~3店補程の工事数でした。
2013年頃から、クラフトビールブームが盛り上がり、工事数は年々増えて、2019年には年間約100店舗ほどを手掛けました。コロナ禍で2020年は約70店補になりましたが。現在までに累計500店舗以上にのぼります」
──すごい数です!14年間で、何か変わったことはありますか?
「2018年後半に元部下だったヤツを引込み、今は2人で施工を担当しています。
それから、僕の名刺に『クラフトビール担当』って書いてあるでしょ?それも、そのタイミングで入れてもらいました・・・これが、とにかく、大事なんです!」
仕事のすべては「美味しいビール」をお店に提供してもらうため
──「クラフトビール担当を希望した」とのことですが、「ビール」担当と「クラフトビール」担当では違うのですね?
「会社では、『ビール』とは日本の大手メーカーが扱うビール全てを、『クラフトビール』はそれ以外を指します。小規模ブルワリーのビールや輸入ビールを繋ぐ店が、僕の担当です。
インディペンデントなビールを扱おうとする店主さんとは、店づくりについて、しっかり話し合って決めていくことができる。物事が動くスピードも早く、僕のスタイルに合っているんです。
店によって、合うシステムやタップ数は違います。例えば、小さい店舗にタップ数をたくさんつけると、実際に提供するビール量よりも、タップにつなぐビールの量が多すぎてしまうケースがあるんです。
生のクラフトビールは、やはり新鮮なものが美味しい。何週間も注ぎ終わらないビールが残ると、本来の味わいが変化してしまいます。
ですから、お店側の希望を伺いつつ、各店舗の規模に合わせたベストなサーバーシステムを提案し、アドバイスさせてもらうこともあるんです」
──なるほど!長年のキャリアをお持ちだからこそ、的確なアドバイスをされているのですね。それから、牧寺さんは、各店の特性に合わせたオリジナルシステムもつくられるそうですね。システムづくりにあたって何か心掛けていることはありますか?
「『扱いやすく、ビールのムダが少ないシステムづくり』です。
例えば、ビールは炭酸ガスの圧力を使って押し出されます。圧力が強く泡が吹き出てしまって、もし樽内のビールの3分の1が泡になってしまったら、お店が販売できる量も減ってしまいますよね。何より、ビールの造り手に申し訳ない」
──飲む側にとっても、ビールがもったいないです!
「そう。だから、お店が扱いやすいサーバーにしたい。難しいメンテナンスは時間も取られてしまう。ムダを省いて、美味しいビールを提供するのに集中してもらえるシステムをつくりたいんです」
インタビューが進むにつれ、牧寺さんが
「美味しいビールを提供する力になりたい」
と考えて仕事をし、同時にビールの造り手、注ぎ手へ心を配っている様子がひしひしと伝わってきました。
牧寺さんのSNS(Facebook)に寄せられる、パブ店員さんの信頼感に溢れたコメントの理由は、その心のこもった「仕事の流儀」、その姿勢の中にあるのだ、と合点がいったのでした。
そういえば、コメントのみならず、牧寺さんのお仕事ぶりを撮影してSNSにアップロードしているお店も良く見かけるなぁ・・・
「嬉しいことに、そういうお店もありますね。少し前には、御殿場の『バルバロ』というスペイン炭火焼バルさんで、僕の施工してるところを撮影して、映像公開もしてくれていました(笑)」
Facebookアカウントをお持ちの方は、高速で動く牧寺さんの仕事ぶりをぜひ、御覧ください。
https://www.facebook.com/atuatubanzai/videos/355260029081509
🍖スペイン炭火焼バルバロ(静岡・御殿場)Website
さて、後編ではいよいよ、精力的に活動し、情熱的にビールへ愛を注ぎ続ける牧寺さんのパワーの秘訣を紐解きます!
【後編】に続く…
【取材協力】
クラフトビア サーバーランド 赤坂見附
CRAFTBEER SERVER LAND AKASAKAMITSUKE
住所:東京都港区赤坂3-10-4 赤坂月世界ビルB1
電話: 03-6230-9012
緊急事態宣言中の営業時間:
月~金 11:30~14:30/16:20~20:00 土・日・祝 14:00~17:00
通常の営業時間:
月~金 11:30~14:30/17:30~23:30 土・日・祝 14:00~23:30
休日:不定休
Website : Instagram / Facebook / https://ekichica.com/service/shp34820/
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