【KOBATSUトレーディング】コロナ禍におけるインポーターの苦悩、そして挑戦とは?
皆様は、先日投稿されたばかりのこちらの動画をご存知だろうか?
▲KOBATSU CHANNEL:【お願い聞いて欲しい篇】インポーターはつらすぎるよ
今回は、「KOBATSUトレーディング」代表の小林努(こばやしつとむ)さん(以下、小林)に、ビールのインポーター(輸入業者)が立たされている窮地な現状をお伺いした。
目次
■飲食店と輸入業者は運命共同体。同じくつらい状況は続く、、、
度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置によるお酒の提供制限によって、酒類提供店が直面している苦しい状況が日々取り沙汰されているのは皆様も周知の事実だろう。しかし、その飲食店などにお酒を販売する業者も同時に困窮している事実はニュースではあまり取り上げられていない。「飲食店と輸入業者は運命共同体である」と小林は動画内で語っているが、その理由を想像するのは容易であろう。
多分に漏れず、「株式会社KOBATSUトレーディング」も大きな影響を受けている。
同社は2011年に設立されたドイツ・バイエルンのビールを輸入・販売する会社だ。冷蔵輸送など細部まで品質管理を徹底しており、「PLANK」や「CREW Republic」といったブランドは世界大会で数々の名誉ある賞を受賞している。国内でも非常に人気が高く、代表の小林の人柄もありファンも多い。
■売り上げが大激減!4度の緊急事態宣言で見えたビール輸入業者の立場の弱さ
「2019年5月に比べ、2020年は同月比売上が18%まで落ち込みました。2021年は個人向け消費が若干は伸びたものの、同月比売上が24%と依然厳しい状況が続いております。」(小林)
なぜここまでの大打撃を被ることになってしまったのか。数々の要因があるが、主な要因を列挙していただいた。
「弊社は新型コロナ感染拡大前は樽ビールの取り扱いをメインとしており、飲食店など業務用向けの販売やイベントでの提供がメインでした。コロナ対策による飲食店での酒類提供時間の制限やイベント中止が大きなダメージとなりました。」(小林)
稼ぎ頭であるイベント出店は皆無に、業務店向け販売の売上は激減。非常に大きな痛手となった。さらに付け加えれば、特例で酒類の持ち帰り販売を可能にした「料飲店等期限付き酒類小売業免許」が3月末で終了。通常の「一般種類小売業免許」の申請・取得ができなかった店舗はテイクアウトでの販売もできなくなった。大都市を中心とした度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令や延長により、飲食店は時短営業や休業を余儀なくされ、樽ビール自体の注文がストップしてしまった。
■2640L の在庫廃棄。支払い済み酒税が返還されないWパンチ
ハードリカーや日本酒などと異なり、ビールには賞味期限の表示が義務付けられている。過ぎたから飲めなくなるわけではないが、商品価値の維持が難しくなる。
「ちょうどイベント用などで輸入しようとしていたビールたちが船で向かっている最中に緊急事態宣言が重なりました。キャンセルもできず、在庫を多く抱えることになりました。」(小林)
ドイツの現地ブルワリーからの出荷から船便で日本に到着するまでは、2か月のリードタイムがある。急な注文の変更ができないのだ。もちろん、醸造所を出てしまえば樽をボトルに変えてほしいというオーダーは不可能だ。
樽詰めのビールを売りたくても、取引先も大半が休業、イベントもできないとなれば、倉庫で賞味期限が迫るのを待つだけである。結果的に、2021年4月から6月までの緊急事態宣言期間内に計2640リットルものビールが賞味期限を迎えてしまった。もちろんドイツの醸造所に送金した仕入代金は戻ってこない。ここにさらに追い打ちをかけるのが「酒税」だ。
ビールを輸入する場合、一般的には酒税は輸入通関時に前払いになる。つまり、まだビールが売れていない状態で酒税は先に支払っているのだ。そして、現状その酒税は還付されない。廃棄対象2640L分の酒税52万4000円は手元に戻らないままだ。聞いているだけでも泣きっ面に蜂どころか毒蛇にかまれた気分になるだろう。
ならばと自身で樽からボトルに充填しなおすことも一度行ってみたそうだが、→手間や作業効率面での障壁が多く、今後は自社での詰め替えは難しいとのこと。
飲食店に支払われている「新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金」のように、お酒を卸す法人への支援金も存在するが、給付条件および額はそれに比べ良いとは言えないのも悩みの種だという。
小林は上記の現状をもとに、下記の5つの政策を政府に求めたいと訴えている。
①お酒業者には売り上げダウンに関係なく例年の売り上げ規模に応じた支援金を
②期間内に賞味期限を迎えるお酒分は売価ベースで全額補償を
③他社設備で樽から他の容器への詰替を容認(酒税の二重課税なしで)
④飲食店におけるお酒のテイクアウト再認可(昨年の期限付き免許持参で無条件で)
⑤寄託契約でも倉庫代支援
ぜひ詳細はYoutube動画をチェックしていただき、内容に賛同出来る方は是非シェアしてもらいたい。
▲KOBATSU CHANNEL:【緊急事態宣言篇】ビールインポーターはつらいよ
▲KOBATSU CHANNEL:【お願い聞いて欲しい篇】インポーターはつらすぎるよ
■活路を探して。慣れないYoutubeへの挑戦
このまま消耗するのを待ってもいられない。状況を打開する策として、同社が取り組んでいるのが「オンラインショップ」と「Youtubeチャンネル」の解説だ。
「オンラインショップを開設し、個人向け販売用にボトルビールやグッズをラインナップに加えました。以前の業務用売上には及びませんが、少しずつ売り上げは伸びてきています。」(小林)
慣れない動画編集を一から勉強し、Youtubeにて「KOBATSU CHANNEL(コバツチャンネル)」も開設した。
「YouTube始めた理由はいくつかあります。私は2012年にビールの輸入を開始以来、日本中のいろんな場所でプレゼン形式のトークイベントをやってきました。新型コロナウイルスの影響でそのような機会がなくなってしまいましたが、代わりの情報発信の場として思いついたのがYouTubeです。もう1つの動機はコロナで激減したビールの売り上げを取り戻すための宣伝ツールとしての活用です。」(小林)
「動画編集などやったことなかったので、YouTubeの解説動画を見まくりました。他にも編集ソフトの選定や、光回線の導入、夜間撮影時に家族に迷惑がかからないように防音設備も取り寄せたりなど、、、たくさんのハードルを乗り越え、4月19日にやっとYouTube活動を開始できました。
動画はネタの作成、撮影、編集、サムネイル作成、投稿全て私ひとりでやっています。編集は思った以上に大変ですが、皆様からの応援や励ましのコメントからはたくさん元気をもらっていますし、「高評価率」が高いのも私のモチベーションに繋がっています。」(小林)
他の小さな輸入業者も、自社輸入ビールを販売するボトルショップをオープンするなど、生き残りをかけて必死の対策を打っているそうだ。
「Youtubeではインポーターならではの内容を発信し続けますので、ぜひチャンネル登録・応援をよろしくお願いします。また、今年は妻がまもなく出産と言うこともあって全てのイベント出店を辞退しました。来年度、コロナも明けて晴れてイベント復活の際は100%パワー全開でビール注がせていただきますので、リアルプロースト(乾杯)ができるのを楽しみにしています。」(小林)
本来であれば、酒のお供になるような読んで楽しい記事を執筆できるのが望ましいが、どうしてもこの状況は知っておいてほしいと思い筆を執った次第である。
(無論、今回はインポーターの現状に焦点を当てているが、飲食店はもちろん、酒販店、原料生産者やビール醸造所、仲卸業者など種類に関わる業種がそれぞれ打撃を受けていることは言わずもがなである)。
正直、特にクラフトビールは多くの方が毎日のように楽しめるような、少なくとも安い品物ではない。そして、もちろん適正・適量の飲酒を心がけていただきたいが、それでも一杯でも多くのビールが消費されることを切に願っている。
また、「見る」「知る」ことも支援の一つになる。ぜひ「KOBATSU CHANNEL」などの取り組みを応援していただきたい。
各種関連リンク
▲KOBATSU Trading HP
▲KOBATSU Trading オンラインショップ
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▲KOBATSU CHANNNEL
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。