[コラム,ビアバー]2021.9.12

北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツを目指すお店!【炭火焼もりのした】は何度でも立ち上がる!

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【炭火焼もりのした】森下亮社長

2021年8月2日、埼玉県にも3度目の緊急事態宣言が発令されました。
これまで行っていなかったランチ営業を始めるお店、テイクアウトに活路を見出すお店、そして通常営業を貫くお店…
お店によって規模も状況も理念も違うのだから打つ手が違うのは当然ですが、その中で北浦和の人気店【炭火焼もりのした】は「休業」という選択をしました。
多くのファンに愛されるお店が「休業」を選択した理由とは?
そして気になる営業再開のタイミングについて話を聞くと、話は思わぬ方向へ。
「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツが飲める店」を目指す森下亮社長だけに、気がつけば飲食店の樽生ビールの品質についての話となっていきました…。

【炭火焼もりのした】森下社長とは、高校時代から20年以上の付き合いとなるビアジャーナリスト・南原が、休業中のカウンターでお話を伺いました。

 

休業を決めたのはアルコール提供再開時期がみえなくなったから

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-新型コロナウイルスが流行り始めてから約1年半が経過したけど、飲食店にとって厳しい状況はまだまだ続きそうだね。

やっぱり影響はかなり大きいよね。
新型コロナウイルスが流行ってから、それまで順調に予約が入っていた宴会が激減したし、さいたま市のアルコール提供が原則禁止になってからの売上は(一昨年の)約1/3ぐらいになったかな。

-何度かお邪魔したけど、そこまで落ちている印象はなかったな。1階のカウンターなんかいつもお客様が入っていたでしょう?

それはまだアルコールが提供できていた頃だね。
オープンからもうすぐ丸7年、お陰様で客単価も上がってきてお店としては理想の形に向かっていたけどね。
でも売上の安定を考えたら、やっぱりこの規模の居酒屋にとって宴会の予約が入るのは大事なことだよ。

-売上が落ちたことから、今回の休業に踏み切ったと。

それもあるけど、今回の緊急事態宣言でアルコール提供の再開できる時期がみえなくなったことかな。
やっぱり飲みに来てくれるお客さんに対して、(アルコール類が)提供できないってなっちゃうとちょっとね。それが休業を決めた一番の理由ですね。

 

みんな生活があるから、コロナ禍でもスタッフの給与は減らさない

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※写真提供【炭火焼もりのした】

-スタッフのシフト調整も大変だったでしょう?

あくまで本人が望めばだけど、この期間もスタッフのシフトは変えていないよ。
通常10万円の給料を支払っていたスタッフには、同じように10万円の給料が支払えるシフトを組んでいたから。

-本当に!? 考えは素晴らしいけど、お店の売上が落ちている中、正直なところ厳しいでしょう?

売上が低迷する中で、忙しかったころと同じ給料を支払うのは大変だよね(笑)。
でもお店が営業できるのはスタッフのおかげだし、みんな生活があるから。
売上が1/3だから給料も1/3って訳にはいかないよね。

-確かに。新型コロナウイルスに感染することで生活が苦しくなる場合もあれば、逆に感染しないようにすることで生活が苦しくなる場合もあるから、休業という決断も、それが本当に正しいのか迷うところではあるよね。

さすがに休業中も同じ給料を支払うわけにはいかないけど、ちゃんと理解してくれたし。
これまで申請していなかった雇用調整助成金を初めて申請して、支払える分は支払おうと思っているけどね。

 

火事に新型コロナ、次々と【炭火焼もりのした】を襲う試練

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※2018年11月28日の様子

【炭火焼もりのした】は新型コロナ禍以前にも一度、苦境に見舞われたことがありました。

2018年11月28日。2014年の創業から営業していた同店は、近隣のお店からの出火による類焼被害により全焼するという事故に遭ったのです。
年末の繁忙期を目前にしたこの事態に、森下社長も一度はお店を閉めることも考えたといいます。
しかし、お店の焼け跡の中で、奇跡的に無傷で見つかった“タレ”の甕(かめ)や、普段はほとんど連絡を取ることのなかった父親からの援助、気にかけてくれるお客さんの声を受け、2019年3月6日に、現在のお店にて営業を再開しています。

 

-しかし【炭火焼もりのした】のこれまでの歴を振り返ると、順調だった前半に比べて、後半は火事に新型コロナウイルスと大変な状況が続いているね。

火事はともかく、新型コロナウイルスに関しては、日本中全てのお店が同じ条件だから。
その中で順調なお店もあるわけだし、全部が全部、新型コロナウイルスのせいにはできないけどね。

-そういえば新型コロナウイルスが流行り始めた頃、営業再開から1年経って、色々と試していこうと企画していこうって時期だったよね。

飲食店は基本的に営業時間内にお店のスペースの中でだけで売上を稼ぐものだけど、「営業時間外で何かできないかな?」とか、「集客につながるイベントを打てないかな?」というのは考えていたね。

 

「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツが飲める店」を目指す!

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イベントチラシとザ・プレミアム・モルツ

-それで企画したのが「炭火焼もりのした 神泡体験ツアー in SUNTORY武蔵野ビール工場」。東京・武蔵野にあるサントリーのビール工場見学に案内した後、北浦和へ移動して【炭火焼もりのした】で改めてザ・プレミアム・モルツを飲めるっていう内容だったよね。

ずっと樽生ビールの品質管理には力を入れていたし、「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツが飲める店」を名乗ろうかと(笑)
いきなり名乗るのも図々しいから、「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツが飲める店を目指します」にして、そのキックオフイベントとしてツアーを開催する予定だったね。

-しかし、当時から流行り出した新型コロナウイルスの影響により中止…。

当時、軒並みイベントの中止が発表されていたし仕方ないね。
「工場見学ができなくなったから中止します」よりは、その前に中止を発表した方がいいかなと考えていたら、結局サントリーの公式サイトで「当面の間、工場見学は中止する」って発表されたタイミングとほぼ同時になっちゃったけど(笑)

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【炭火焼もりのした】2階は最大20名様の宴会が可能

-定員20名だったのも、お店2階の宴会スペースに丁度良い人数だし、楽しみだったけどね。

そう! 2階が最大20名収容できるから、サントリーの工場見学で最高品質の“神泡”を体験してもらった後うちの店に移動して、ツアー参加者みんなで“北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツ”を飲みながらワイワイ盛り上がる予定だった。

-それは楽しそう!営業再開したらまたツアーの企画はするの?

いや、もうその規模のイベントは厳しい気がする。
面識のない人と大人数で1日行動を共にすることに、拒否反応を示す人も多くなると思う。
やるならもっと内容を濃くして、人数も4~5名規模にして、常連のお客さん向けの感謝イベントの方が興味あるかな。
休業前も支えてもらっていたし、そっちの方が気も使わないし(笑)

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-「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツが飲める店」を目指すことに変わりはない?

それはもちろん!というかもう言い切ってしまおうかな(笑)
特別なことをやっているという認識はないけど、毎日ビール回路をスポンジ洗浄したり、タップやディスペンスヘッド、樽の口金を洗浄したり、グラスは専用スポンジで手洗いして、ビールを注ぐときは丁寧にとか、当たり前のことだと思っているけど、当たり前にできているお店は意外に少ないよね。

北浦和に限らず、それなりに高額なお店でもちゃんとしていないお店あるでしょ?
ビールを注いだグラスに気泡が付着する理由とか、単純に知らないだけだろうけどもったいないよね。
料理が美味いお店なら、なおさら。

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※写真提供【炭火焼もりのした】

-主役の料理にはこだわるけど、脇役のビールは軽く考えているお店も多いってことだよね。

高いお店でも大衆的な居酒屋でも、樽生ビールの存在を軽く考えているお店はもったいないよね。
そのビールが持つポテンシャルを最大限発揮できるのは、やっぱり樽生だと思っているから。
樽生ビールの品質管理も徹底できずに「こだわりのお店」を名乗るのってどうなの?って感じる時もあるよ(笑)。

-品質管理ができていなくてもそれなりに販売量をキープできてしまうから、そこまで品質に意識が向かないお店が多くなってしまうのかもね。

ビールメーカーにとっては販売量の方が大事か(笑)。
本音としては、徹底的に美味いビールを提供しているお店をもっと優遇してくれればいいのにと思うけど(笑)。

 

火事も、コロナ禍のこの状況も、いつか笑い話に

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2019年3月6日 移転オープン時の様子

-営業再開はいつ頃を考えているの?

緊急事態宣言が延長されるなら、休業期間も延長する予定。
アルコールの提供が解禁された時点で、お店の営業も再開しようと思っている。現時点ではね。

-それだと緊急事態宣言が再延長した場合、9月17日の7周年も休業?

緊急事態宣言が再延長されれば7周年も休むよ。
今後10年、20年と続けていくのであれば、「7周年は営業してなかったなぁ」程度に笑い話にできるでしょ。
現に3年前の火事だって、今はもう笑い話となっているからね(笑)。
もちろんその前に緊急事態宣言が解除されて、アルコールの提供が認められればすぐにでも営業再開するよ!

-楽しみにしているよ!今日はありがとうございました!

 

インタビュー後記

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今回のインタビューを通じて、「この男はずっとこんな感じだな」というのが正直な感想です。
目の前で起きている事態に慌てたり、何か別の要因に責任を押し付けたりすることがありません。
自分でコントロールできる範囲外の問題について考えるのを止め、セオリーに拘ることなく、その状況の中で自身が今どう動くべきかを常に選択しているのでしょう。
今回、【炭火焼もりのした】が休業という選択をしたことも、「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツが飲める店」を目指すことも、すべて約7年間【炭火焼もりのした】を経営してきた森下社長が導き出した最適解なのです。

2021年9月9日、緊急事態宣言が9月30日(木)まで延長されることが発表されました。

【炭火焼もりのした】の7周年は休業中に迎えることとなりましたが、後にきっと笑い話にしてくれることでしょう。

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余談ではありますが、先日39歳の誕生日を迎えた筆者に5歳の長女がこんな話をしてくれました。
「みーちゃん(長女の名前)が大きくなったら、父ちゃんが大好きな焼き鳥とビールをいっぱい買ってあげる! でも、つくねはみーちゃんが食べるね!」

1日も早く新型コロナウイルスが収束し、また【炭火焼もりのした】で丁寧に焼き上げられた焼き鳥の数々と「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツ」が飲める日を楽しみにしています。
そして、長女が成人した暁には、【炭火焼もりのした】のカウンターで大好きなつくねを食べながら、肩を並べて飲めるかな。

あなたも北浦和へ立ち寄った際には、是非「北浦和で一番美味いザ・プレミアム・モルツ」を目指すお店なんていかがでしょうか?

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

南原 卓也

ビアジャーナリスト/樽生アドバイザー

埼玉県にある“日本一面積の小さい市”で生まれ育ったビール好き。
サントリー樽生アドバイザー、業務用酒販店の営業を経て、埼玉とお酒を伝えるライターになりました。

【日本ビアジャーナリスト協会】2021年新人賞 受賞
【日本ビアジャーナリスト協会】2022年最優秀執筆賞 受賞

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