IPAは作らない(ジャーマンラガービールに熱い思い)
北海道帯広市にある株式会社帯広ビールに見学に行った際、帯広ビールの運営会社Sogo Brewing 代表 十河文英氏とビールについて対談しました。
十河氏とは、個人的にサクランボ(ナポレオン)ビールの醸造に協力して頂いています。
以下Mは森。Sは十河氏として記載します。
M・このコロナ渦で本州では廃業している醸造所もある中、北海道では後志地方を中心に醸造所が増えそうです。41(余市)ビールや今年度中に仁木町等にも醸造所ができるみたいです。
S・道内はこれからもクラフトビールブームが続くと思います。そして、その後の展開ができてくると思います。
M・淘汰されることですか?
S・それもあるかもしれません。
M・ちなみに、余市町民に41(余市)ビールについて酒屋(コンビニ除く)に全て聞いてみましたが、よく知らないとの回答でした。飲食店関係者や余市町民に聞いても同じくよく知らないとの回答で認知度はほとんど無い状況です。ただ、幸いにもビール情報を持っている方は余市駅のお土産屋とか余市の道の駅そして金土日の各曜日の夕方から余市駅前の41ビール直営店で飲むことができます。また、札幌の一部のお店で購入できます。
作っても売れなければどうしようも無い。自分も昨年トマトを作りましたが引き取り手が無く、ほとんど廃棄しました。ビールもどのように売るかカギになると思います。
倶知安ニセコ地方にある大手の経営母体が経営しているクラフトビールは、倶知安やニセコのコンビニや一部飲食店でも購入できる他、余市町にも営業かけていて数店舗で飲むことや購入することができます。ターゲットを外国人にしているため、観光客が多い町にターゲットを絞っている感じがします。このビールは余市町民でも認知はあります。今後、後志地区にできる醸造所は町民にまず認知してもらうことが必要だと思います。
S・そうですね、ターゲットを絞る事や町民の認知も重要ですが、それよりもビールの種類が細分化されていくと思います。
M・と言いますと?
S・例えば、日本人は、エール系よりラガー系を好む人が多いと思います。
M・確かに倶知安ニセコ地区はオーストラリア人等外国人が別荘を購入し最初は冬季期間だけでしたが今は、年中滞在されていますね。そのため、エール系のビールが売れているようです。
S・自分はジャーマンラガータイプのビールを作っています。先日、帯広のあるイベントでビールを買いに来た人が「IPAみたいのありますか?」と言われて、「IPAは作っていませんが、苦みの強いビールならあります。」と話すと「じゃあそれで。」と。クラフトビール=IPAと認識されている感じがします。道内ではIPAブームなのでしょうか。どこの醸造所でもIPA作っていますよね。こんなこともありました。卸売りの店に「IPAの樽はどんな方法で送ってもらっていますか?」と聞いたところ、「クール便です。」と返答。そもそも、腐らないようにホップをたくさん入れて作っているのがIPAなのだから通常で送ってもらってもよいのではと思っています。
M・実は私、酸味の強いビールと苦みの強いビールは苦手です。
S・私も苦みの強いビールは苦手です。自分としては、クラフトビール=IPAという認識ははずしてほしい。しかし、これからは、ある醸造所はIPAしか作らない。ある醸造所は、自分のところで取れたホップや麦でしか作らない。自分はこのスタイルのビールを作る等の個性ある醸造所が出来てくる感じがします。
M ・何故そのように思うのですか?
S・偏ったビール好きと話をしても話が合わないのです。例えば、森さんはIPAよりベルギービールがお好みですよね。IPA好きの集まりに参加されても盛り上がるでしょうか?
M・正直自分が好きな帯広ビール、ニセコビール、大沼ビールの事でしたら多少話すことができます。もちろんベルギービール好きの友人となら何時間話しても飽きませんが、道外のクラフトビールや飲んだ事のないビールは頓珍漢です。第一、北海道の市場になかなか出てこない。ネット等で有ったとしても、送料や手数料で割高になってしまう。
S・自分はビール全体の知識はありますが、自分の得意分野以外の細かい部分は勉強しないと解らない。クラフトビールがブームの中、今後は個々の好きなビールのスタイルや醸造法が定着すると思います。
M・例えば、こんなことでしょうか。鉄道マニアの中に「撮り鉄」(大きく分けるとその他、乗り鉄、収集鉄、卓上鉄、模型鉄等)がありますが、これにも実は細分化があって今問題になっている風景撮り(列車と景色)や車両(駅構内)撮りがありますが、その他、駅名取り(駅名あるいは乗り鉄の証明写真)や車景撮り(列車の前方の窓や客席の窓からビデオや写真を撮る)や車内放送録音等。鉄道マニアの撮り鉄同士でも話は合わないのが現状です。ベルギービールにしてもランビックしか作らない醸造所もありますし。レッドビールしか作らない醸造所もあります。
ベルギービール愛好者にはランビックを中心に飲んでいる人もいます。
S・そうだと思いますよ。今、森さんが仕切っているベルギービール愛好会も分裂してランビックビール愛好会とかトラピストビール愛好会等に細分化される日も来るかもしれません。
M・私は、元々ドイツの黒ビールが好きで特にケストリッツァー シュヴァルツビア黒ビールが大好きでした。生を飲みたくて札幌で飲める店を探しましたが無くて、ポールさん(ポールズ・カフェ)のお店に行きついてそこでベルギービールが病みつきになりました。十河さんのクロウトは、ケストリッツァー シュヴァルツビア黒ビールに似ていてすごく美味しかったです。
S・ありがとうございます。私はジャーマンラガータイプのビールが好きで好きだからこそこれを極めて追求していきたいと思います。ジャーマンラガータイプにもホップを多く入れ苦みがやや強いものもありますが、でもそれは、IPAではありません。製法そのものが違うし、自分自身が苦みは苦手なので自分飲みたいと思わないビールは造ろうとは思いません。極めてシンプルなことです。
これからのビールは、先程も申し上げましたが、ジャーマンラガーだけを作るとかIPAだけ作るとか自分の農場で収穫したものだけで作るとか何かしら特色を持つ種類のビールが残り、単に売れそうなビールを作るだけでは淘汰されると思います。自分は自分のスタイルで作って行きたいと思います。
M・ジャーマンラガータイプにものすごく愛着を感じます。
S・ありがとうございます。
M・最後に十河さんの今後の取り組みを教えてください。
S・現在ビールは環境負担への配慮から、ゴミとなりがちな瓶などのワンウェイ容器での販売は行っておりません。リユース可能な樽のみで出荷しています。樽は個人利用可能な5ℓから取り揃えております。ビールの種類等はお尋ねください。将来的にはリサイクルが容易な缶かペットボトルで販売したいと思います。また注文により家庭用サーバーも作ります。
M・今日は本当にありがとうございました。
S・ありがとうございました。
株式会社帯広ビール
〒080-0026
帯広市西16条南6丁目13-20
℡ 0155-36-8820
ペットボトルでの販売が始まっております。
販売先は以下の通り。地方発送も可能です。
藤丸百貨店地下 道産品売場
帯広市西2条南8丁目1番地
℡ 0155-24-2101
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。