まるで野草の調香師!6種の沖縄野草を溶かし込んだクリフビール「ムイヌグスージ」誕生秘話
沖縄、それは大地のパワーを肌で感じることができる場所です。突き抜けるように美しい青い空に、どこまでも続く透き通った海。真っ白な砂浜に、生い茂る力強い緑の木々……太陽の下自然に身をゆだね、ゆらりと目を閉じれば、そこかしこからパチパチと感じる「生」のエネルギーを感じます。
そんな自然の豊かなエネルギーを、ぎゅっと詰め込んだビールが沖縄にはあります。醸造するのは「クリフビール」。沖縄県沖縄市にあるブルワリーです。
現在アート作家でありブルワーである宮城クリフさんが造るビールは、どれも飲んで沖縄を感じるものばかり。沖縄の農家さんとコラボをしながら、大地の恵みをふんだんに使ったビールを醸造しています。
クリフビールの副原料としてしばしば登場するのは、沖縄ならではの農産物。純黒糖に沖縄のシナモンである「カラキ」。島トウガラシに沖縄ミカンである「カーブチー」。そして南国フルーツであるパッションフルーツやパイナップル……クリフさんはそれらを使って、一枚の絵を描くように沖縄を表現しているのです。
そんな色鮮やかなラインナップの中でも、ひと際大地のエネルギーを感じることができるビールがあります。それはやんばる(沖縄本島北部の自然豊かな地域)の野草6種を使用したセゾンビール「ムイヌグスージ」。沖縄の言葉で「森のお祝い」(ムイヌが森の、グスージがお祝いという意味)という名のこのビールは、その名の通り豊かな森の恵みを舌で、そして身体の中から感じることができるビールです。
ムイヌグスージに使用されているのは、月桃、リンゴアザミ、アシタバ、桑の葉、長命草、センダングサの6種の野草。野草と聞くと苦いイメージがありますが、一口飲んで感じるのは柔らかなあまさ。きれいなセゾン香の後に、リンゴのようなフルーティなあまさと麦芽のあまさが幾重にも重なりながら続きます。そして腹にストンと落ちた後にふつふつと沸きあがってくるのは、野草たちのパワフルさ。まさに森のお祝いというのにぴったりなビールです。
今回はこのムイヌグスージの誕生秘話について、クリフビールの宮城クリフさんに(以下クリフさん)にインタビューをしました!
野草調香師のように様々な配分を試した1年間
――ムイヌグスージとてもおいしかったです!このビールはどのような経緯で生まれたのでしょうか?
クリフさん:沖縄のオーガニック専門店「てんぷす」さんからのお話で、このビール企画がスタートしました。野草の選定をしてくれたのは、沖縄野草の第一人者であり、「やんばる野草酵素シロップ」の製造販売や「やんばる野草の宿」の経営をしている森岡尚子さん。尚子さんが選んでくれた12種類の野草を元にビール造りをスタートしました。
――ムイヌグスージを造る上で大変だったことはありますでしょうか?
クリフさん:一番苦戦したのはビアスタイル決めです。野草を使ったビールなので、どんなビアスタイルが合うかイメージできなくて。野草を使って様々なビアスタイルを造ってみたのですが、IPAやペールエールだとうまく特徴がでなかったり、青臭くなってしまったり…いろいろと試行錯誤していく中で、最終的にセゾンに行きつきました。セゾン酵母のフルーティさと野草が合体することで、野草臭さをエネルギーに変えることができたんです。
あともうひとつ、野草の選定にも時間がかかりました。尚子さんから提案された野草の香りとビールに使用した際の味わいを一つ一つ確認し、使用する割合を細かく決めていきました。醸造所に野草をずらりと並べ、漬け込んでみたり、乾燥させてみたり。まるで調香師のような作業をしながら、最終的に6種の野草に決めました。
――この1本ができるのに様々な苦労があったのですね。出来上がるまでにどのくらい時間がかかったのでしょうか?
クリフさん:気づいたら1年経っていましたね。
――1年!長い年月と情熱をかけて生み出されたビールなのですね。ムイヌグスージでは野草をどのようにして使用しているのでしょうか?
クリフさん:野草を乾燥させ、粉にして調合したものを煮沸の最終段階で入れています。麦汁ができると、醸造所内に野草のいい香りが充満するんですよ。特に月桃(げっとう)のあまい香りと、リンゴアザミのフルーティなあまみある香りが強いですね。野草入りの麦汁は甘くて、そのまま飲んでもすごく美味しいです。飲んだら健康になりそうな味わいですね。
――野草を粉にして入れているということは、このビールを飲めば野草そのものを身体に取り込むことができるということですね!
クリフさん:そうですね。野草のよさを存分に感じてもらえると思います。苦味や香りも野草のものを感じてもらえるよう、ホップはほとんど使用していないんですよ。
――飲んだ時に感じたあの柔らかい苦みは、野草由来のものだったのですね。麦汁の段階から完成まで味わいはどのように変化していくのでしょうか?
クリフさん:1次発酵時点ではトゲトゲした感じや、野草由来の独特の苦みが強くあります。それが1か月程度置くことで、角がとれまろやかになっていきます。熟成させることで野草由来の味わいが徐々に変化していくのだと思います。
森の豊かさ想いを馳せて「ムイヌグスージサビラ(森のお祝いをしましょう!)」
クリフさん自身、その味わいもイメージも想像がつかず、手探りで造り上げていったという野草ビール「ムイヌグスージ」。クリフさんによるラベルには、6種の野草を使ったかんむりをかぶったキジムナーの男の子が描かれています。吹いている笛は、森のお祝いをするためのもの。
時間をかけて繊細に紡ぎ出され、飲む人をぐいっと沖縄の大地に引き寄せるようなパワーを持ったムイヌグスージ。最後にクリフさんにこのビールに込めたメッセージをお伺いしました。
『森に生えている野草や、豊かさが永遠に続くことのお祝いというイメージでこのビールを造っています。そんなことに想いを馳せて飲んでもらえればと思います。』
これからぐっと寒くなる季節。沖縄のあたたかなエネルギーがたっぷり詰まったムイヌグスージで乾杯してみるのはいかがでしょうか。
ムイヌグスージはこちらから購入いただけます。
クリフビールオンラインストア
クリフビールHP
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。