【羽生・こぶし花ビール ピルスナー】『映画 翔んで埼玉』の名言「口が埼玉になる」を真面目にビールで考える⑤
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羽生ブルワリー休業 22年の歴史にいったん幕を閉じる
2022年3月末。
埼玉県では桜が見頃を迎えていた頃、ビール業界に衝撃のニュースが流れた。
「羽生ブルワリー休業。22年の歴史にいったん幕を閉じる」
醸造責任者で工場長の市岡慎司さんの定年退職、新型コロナウイルス感染拡大による売上不振、製造施設の老朽化など、いくつもの要因が重なっての休業だ。
『羽生ブルワリー』にとっても、苦渋の決断だったに違いない。
羽生ブルワリー【こぶし花ビール】とは
埼玉県北部、利根川に面するまち・羽生市の地ビールとして、2001年4月に『羽生ブルワリー』は誕生した。
“麦の酒”らしさあふれるビール造りを心掛け、麦芽100%で造られるビールは、すべて手作業、少量バッチで丹精込めて造られていた。
さらに、タンク内のビールの美味さをそのまま味わってもらう為、ろ過や熱処理など保存処理をせずに出荷されていたのも特徴だ。
【こぶし花ビール】の名は、『キヤッセ羽生』の“四季の丘”に立つシンボル「こぶしの木」に由来する。
ピルスナー以外にも、ベルジャン・ホワイトやマイボックなど、『羽生ブルワリー』で造られるビールは、いずれも数々の鑑評会で好評価を得ている。
その品質は、折り紙付きだ。
【こぶし花ビール ピルスナー】との出会い
私と【こぶし花ビール】との出会いは約10年前、2012年頃だったと記憶している。
当時、バイクで日本中を走り回っては、その土地のお酒を買って帰るのがルーティーンだった。
私は、『キヤッセ羽生』で休憩した際に、何の気なしに【こぶし花ビール ピルスナー】を購入して帰ったのだ。
飲みなれたピルスナーだったが、いつもより少し濃い液色、モルトの甘味と爽やかな苦み。
その一つ一つの個性が、普段飲んでいたビールとは違って感じたことを覚えている。
【こぶし花ビール ピルスナー】は「口が再開を待ち望むビール」
【こぶし花ビール】全製品の製造および工場出荷は、2022年4月にて終了している。
私は改めて『キャッセ羽生』を訪れてみたが、当然、ビール醸造は行われていない。
農業物産館『むじなも市場』でも、すでに全商品が完売していた。
様々な事情により、ブルワリーとしての稼働が継続できなくなってしまうことは、残念だが仕方のないことだ。
しかし、多少なりとも救いに感じているのは、『羽生ブルワリー』が“廃業”ではなく“休業”と発表したことだった。
「22年の歴史に幕を閉じる」ではなく、「22年の歴史に“いったん”幕を閉じる」
つまり、私たちは、いつの日か『羽生ブルワリー』が再開する日を思い描き、待ち続けることができる。
私は、『キャッセ羽生』を訪れた日の夜、事前に購入していた【こぶし花ビール ピルスナー】の栓を開けた。
偶然出会ったあの日から約10年。
濃い目のゴールド、泡立てて注ぐことで際立つ、ホップの苦みとモルトの甘味。
芳醇でありながら爽快。
この一本を飲み終えたら、【こぶし花ビール ピルスナー】とは暫くお別れだ。
間違いない。
【こぶし花ビール ピルスナー】は、埼玉県民のみならず、「口が再開を待ち望むビール」だ。
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