地域住民が集う温かみのある空間を提供するブルワリーを目指す【ブルワリーレポート みぞのくち醸造所編】
BURIMMER BREWING、東海道BEER 川崎宿工場、鍵屋醸造所、TK BREWING、T.T BREWERY。
これらは、神奈川県川崎市にあるブルワリーです。同じ市内にこれだけのブルワリーが集まっている地域は全国的に見ても多くありません。この激戦区ともいえる川崎市に2022年5月2日、新しいブルワリーがオープンしました。
その名は、みぞのくち醸造所です。
運営は、人が集うコミュニティとなるその街に唯一の場所をつくりあげることをミッションにしている株式会社ローカルダイニング(以下、ローカルダイニング)。
なぜ、彼らがビール事業をスタートさせたのか。ブルワリーを訪れてみました。
地域住民やビール好きが集う温かみのある空間を提供したい
「人が集まる、温かいお店をつくりたい」
そう話すのは代表取締役の榊原浩二さん。ローカルダイニングは、地域と人にクローズアップした業態開発とコミュニティ構築を特徴としている会社であり、みぞのくち醸造所も榊原さんが醸造責任者である安川雅志さんと出会い、「地域に住む人やビールを飲んだ方々が集い、楽しくて温かい時間を過ごしていただきたい」という思いから、スタートしたプロジェクトです。

ブルワリーは、東急田園都市線高津駅から徒歩4分と好アクセスの場所にあります。渋谷から最寄りの高津駅までは約20分、川崎駅からは約30分です。
ブルワリーに併設したタップルームでは、ブルワリーにある5つの発酵・貯酒タンクを見ることができます。ガラス越しに見せることでブルワーと飲み手が近い距離感でコミュニケーションをとれるように設計されています。

発酵・貯酒タンク。現在は600Lが5本で対応している。【画像提供/株式会社ローカルダイニング】
タップルームでは最大13タップのビールが提供されます。料理は醸造工程で出た麦芽粕を活用した自家製パンで仕上げたホットドッグやホットサンドの他に、ピザ職人特製のナポリピザ、8種の特製ディップソースが楽しめるフライドポテトやフィッシュ&チップスなどビールが進む料理が提供されます。

パンは食べると麦の風味が口の中に広がる。生地の外はカリっとして、中はもっちりした食感が楽しめる。ホットドックのソーセージもボリュームがあり、1本で満足感が得られるメニュー。ホットドッグで使用しているソーセージは、ラテン大和の生ソーセージ。ホットサンドはイムイェムのドライグリーンカレーを使用している。
また、地元農家から仕入れた果物を使ったクラフトジュースの提供もあるので、子供も大人と一緒に美味しい料理を食べながら楽しい時間を過ごせるようになっています。

自社農園で栽培したみかんを使ったジュース。家族で楽しく過ごせる場としても利用できる。将来的は店舗の外のスペースで遊んで過ごせる構想もあるという。
「溝の口の街に暮らす人たちの好みや気風が反映された街のアイコンとなるビールを造りたい」と話す榊原さん。目指すのは、「地域の生活圏に根ざしたマイクロブルワリー」です。
地域に住む人たちと一緒に育てるブランド「ノクチビアーズ」
ブルワリーの最初のブランドは、「ノクチビアーズ」。
これは地域の方々と一緒に育てていきたいという思いから名付けられました。ビールは3種類あり、IPA、ペールエール、ヘイジーIPAです。

ペールエール(1番左):繊細で優しい飲み口とキレのある味わいにこだわっている。華やかな柑橘系のフレーバーとクリアなゴールデン色のビールは、誰でも気軽に飲めるような工夫をたっぷり詰め込んでいる。
Hazy IPA(左から2番目):ホップ大爆発のフルーティーでクリーミーな味わいが特長。濁った見た目、まろやかな口当たり、そして突き抜けるパッションフルーツやバナナなどの芳醇な南国フルーツの香りが楽しめる。ビールが苦手な方におすすめ。
IPA(右から2番目):濃厚な麦のコクと大量のホップを効かせたビール。苦味の中にシトラス、パイナップルなどの爽やかな香りが口と鼻を突き抜ける。ビール好きにこそ飲んでほしい1杯。
ヴァイツェン(1番右):小田原にある自社農園で無肥料無農薬の自然栽培で育った八朔を使用したビール。ヴァイツェン特有の酸味と八朔の甘酸っぱさで爽やかな飲み口が楽しめる。
「ノクチビアーズ」は挑戦のアイコンであり、飲み手の表情や声を取り入れて常に改良を重ね、時には自社農園の果実を加えるなどしてブルワーは日々新しい挑戦を行っていきます。
来店するたびに「今日はどんなビールだろう」と、進化する味わいを楽しんでほしいと榊原さんは言います。
秋にはフラッグシップビール「ウタウト」「ワラウト」の発売を計画中。この2種類のビールには、「歌いたくなるような、笑顔になれるような、楽しい時間をつくりたい」という願いを込めています。

今後展開予定のフラッグシップビールのイメージデザイン。地域に愛されるビールは、どんな感じになるのか? 完成が楽しみだ。【画像提供/株式会社ローカルダイニング】
ビールが購入できるボトルショップや地元で愛されるお店の商品も併設
みぞのくち醸造所には、タップルームの他にも瓶詰めされたばかりのビールやブルワーが国内外から厳選した約80種類のビール、全国各地の“地元で愛される”お店の商品も販売します。テイクアウトするだけではなく、タップルームで飲むこともできます。
購入できる商品は、銚子市Hennery Farmの「アフロきゃべつ餃子」や多摩プラーザで惜しまれつつも閉店した名店イムイェム、溝の口にあるピッツェリアのロクアーチェ・ダ・マリオなどです。
もちろん購入した商品は、タップルームで食べたり飲んだりすることも可能。全国の美味しいものとみぞのくち醸造所のビールを合わせて楽しめるのは良いですね。

お店で食べられる料理を自宅でも楽しめるのは嬉しい。ビールはグラウラーでの販売も行っているので樽でつながっているビールのテイクアウトも可能。
タップルームは1階ですが、窓からの光が射し込んで温かみのある空間を演出していました。スペース的にも広すぎず、周りの人とコミュニケーションをとるのにちょうどいい大きさです。ふらっと立ち寄り、自分時間を過ごしたり、家族や仲間たちと会話を楽しんだり色々な使い方ができる場所だと感じました。

麦芽粕を使ったパン。サステナブルな取り組みにも力を入れている。
溝の口の地に誕生したみぞのくち醸造所。「肩ひじを張らないで楽しめる溝の口らしい場所にしたい」と榊原さん。彼らの思いが今後どのような形で地域に根付いていくのでしょうか。注目したいと思います。
近隣の方、新しいビールを飲んでみるのが好きな方。足を運び体感してみてください。

榊原浩二代表取締役(左):2009年に株式会社ローカルダイニングを設立。1号店となる「溝の口 海鮮大衆割烹 えんがわ」を創業。その後、イタリアン・タイ料理業態などを溝の口エリアでドミナント展開を進めている。
安川雅志ヘッドブルワー(右):バーテンダーとしてキャリアをスタート。ウイスキー、ワインの専門家として経験を積む中でベルギービールに衝撃を受ける。「いつか自分のビールを造りたい」という思いを持ち、数えきれない程のクラフトビールを飲み、都内のブルワリーでブルワー経験を積み、みぞのくち醸造所のブルワーを担当することになる。
みぞのくち醸造所 Data
住所:神奈川県川崎市高津区溝口3-2-5 BOIL 1階
電話:080-3722-0423
営業時間:11:00~23:00
定休日:不定休
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