【ビールのためにキャンプする vol.1】ビールを灯りに人が集うキャンプベアード/子連れビアキャンプ
キャンプ場で飲むビールは、信じられないくらいに胸に響く。
その事実に気づいてから、わたしはキャンプにどハマりした。もともとアウトドア派ではなかったし、子どもたちは5歳3歳とまだまだ手がかかる年頃。どうして大変な思いをしてテントを立ててまで、野外で寝なければならないのだ!と思っていたのに、いまや隔週で子連れキャンプに出かけている。
テントを設営し、太陽がまだ高いうちに飲むピルスナー。
バーベキューで焼いた肉に、勢いよく齧りつきながら飲むIPA。
ゆっくりと空の色が変わってくのを眺めながら飲むペールエールに、夜空を眺めて飲むスタウト。
自然の中で飲むビールは笑ってしまう程においしくて、身体中の細胞は歓喜に震える。空に風、木々に日差しなど自然すべてがビールを美味しくする要素。そんな自然×クラフトビールのペアリングを楽しむために、わたしは毎回様々なビアスタイルを保冷バッグに詰め込んでキャンプに出かけるのだ。
大人はビールを堪能するために、そして子どもは自然の中で存分に遊びまわるために。そんな目的でキャンプをしているのだけれど、先日行ったキャンプ場はずば抜けて楽しかった。その場所は、「キャンプベアード」。言わずと知れたクラフトビール×キャンプの聖地だ。
ベアードビールを灯りに。心地よい空間に集う
青々とした山々に、ゆったりと流れる狩野川。「穏やかな自然」という言葉がよく似合う伊豆修善寺に、キャンプベアードはある。
子連れで行く、初めてのキャンプ場はいつだって少し緊張するものだ。他のテントとの距離はしっかり取れるだろうか(子どもはテントのまわりを駆け回る生き物だ)、水回りはキレイだろうか(暗かったり汚かったりすると、子どもはシャワーを怖がる)、どんな人たちが集うキャンプ場なのか、周辺に子どもが遊べる場所はあるだろうか……などなど細かなことが気になってしまう。でもここキャンプベアードはすべてが快適で完璧だった。
わたしたちが泊ったのは、フリーサイトの「クールブリーズサイト」。ベアードビール工場と狩野川に挟まれたサイトで、日差しを柔らかに遮るように木々が生えている場所だ。フリーサイトなのだけれど他のキャンパーさんとの距離はゆったりと取れるようになっており、トイレやシャワールームなども清潔。そしてそこかしこにベアードビールのロゴやデザインがセンスよく散りばめられていて、まさに「大人の遊び場」という感じだった。
そこにいたのは仲良しの友人たちで来ているグループに、子連れ家族、犬連れ家族、ソロキャンパーなど様々。もちろん見ず知らずの人々なのだけれども、「ビールが好き」という絶対的な共通点があって、だからだろうか不思議な安心感があった。
誰しもが居心地の良いタップルーム
汗だくでテントを設営したら、まずはタップルームへと向かう。外からでも見ることができる大きなタンクに、ずらりと並べられたビア樽。大人がわくわくするそれらに、子どもたちは目を丸くして質問を繰り返す。
「ここでビールを造っているということ?」
「ビールが壁から出てきたよ!なんで?」
「このマーク、おうちで見たことがある!」
タップルームには満面の笑顔でビールを楽しむ人々がいて、子どもたちは買ってあげた山盛りポップコーンを食べながら「お祭りみたいだ」とはしゃいでいた。
わたしは常々「大人たちが全力で楽しんでいる姿を子どもたちに見せたい」と思っている。いくつになっても遊ぶことは大切で、世界は広くて、おもしろい。それを小さな頃から知ってもらうことで、彼らの未来が広がると信じているからだ。キャンプベアードのタップルームには「喜」という感情がたくさんで、そんな光景をみて子どもたちはキラキラと顔を輝かせていた。
そしてタップルームの奥には、嬉しいことにキッズスペースが設置されている。パズルにおもちゃ、ぬいぐるみ……子どもたちが飽きずに遊べるよう、おもちゃがたっぷりと用意されていて、大人は子どもたちが遊ぶ姿を横目にビールをゆっくりと飲むことができるのだ。
午後3時。わたしは「セゾンさゆり」をいただいた。やはり労働の後の一杯にはセゾンがよく似合う。午後の日差しに煌めく黄金色。セゾン酵母の香りが美しく、続くオレンジの苦みやジューシーな味わいにうっとりと目を細める。フルーティでくっきり爽やかなセゾンで、とにかく幸せだった。
ふと、ベアードビールのブライアン・ベアード、さゆり夫婦が4人の子どもたちをタップルームで育てたという話を思い出す。人と人とのつながりを大切にし、すべての人を歓迎するベアードビール。この空間はたしかにわたしたちを全力で受け入れてくれていて、ビールは愛に満ち溢れていて、それを感じることができただけでもここに来て心底よかったと思った。
自然とビールと共に過ごす、贅沢な夕暮れ
タップルームで心と喉を潤した後は、ボトルビールを買ってテントへと戻る。3本以上買うと貸し出ししてくれるバケツは、もちろんベアードビールのロゴ入りだ。氷がたっぷりと入ったそれで子どもたちはリンゴジュースを冷やし、料理をしながらパーティを始める。
キャンプの料理はなんでもアリだからおもしろい。子どもたちにとっては野菜の皮剥きも、米とぎも、フライパンを混ぜることもすべてが遊びの延長線上で、でも真剣なまなざしで料理を進めていく(そして自分が作ったものは必ず残さず食べる)。やたらでかいニンジンの入ったカレーに、みじん切りになったしいたけソテー。それらをツマミに飲むビールもまた格別だ。
少しだけ傾きかけてきた日差しにペアリングしたのは、ブルワーの悪夢 ライIPA。
柑橘の香り豊かで、口にした瞬間にライ麦のスパイシーで酸味ある味わいとホップのフルーティさがぐうっと広がる。個性的で、圧倒的な存在感。キャンプで一番好きな時間帯は夕暮れ時なのだけれど、最後の最後まで日差しを届けようとする夏の太陽に、このビールはとてもよく似合った。
ベアードビールが見せてくれる、鮮やかな世界
キャンプベアードは周囲の散歩もとても楽しい。虫の声を聞きながら歩く黄昏時。狩野川の音を聞いたり、キャンプベアードにあるホップ畑を眺めてみたり。どこまでも続く道をひたすら歩いて行くだけでも気持ちがいい。
ひとしきり探検をし、とっぷりと日が暮れたキャンプサイトに戻ると、そこはまた別世界のような雰囲気になっていた。木々の間に吊るされた小さなライトに、各テントを照らす焚き火、そしてベアードビール工場の壁で大きく光る「BAIRD BREWING COMPANY」の文字。
それらはなんだかとってもビビットで、夜の闇が濃いにも関わらず、すべてがとっても鮮やかに見えた。日常の延長線上にある、特別で愛おしい空間。
そこでベアードビールを飲むことで、身体の中にさらにカラフルな鮮やかさが流れ込んでくるのだ。キャンプベアードはやっぱりベアードビールがものすごく似合う場所だった。
ビールをおいしく飲むためにキャンプをし、そのビールによって世界の美しさを味わう。
ビールのために巡るキャンプ旅は、確実にわたしの人生を豊かにしてくれていると思う。次はどこでどんな出会いがあるのか、いまから楽しみで仕方ない。
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