[イベント]2010.12.27

新ジャンルがスゴイ

1995年、いわゆる「節税型発泡酒」が生まれた。
麦芽の使用率を下げることによって酒税を低くし、販売価格を下げるという画期的な手法である。
たまに、この1995年に「発泡酒が誕生して…」といった表現を目にするが、正確にはそれ以前も麦芽を使用した発泡酒は存在している。それは第二次世界大戦中に生まれた「芋に少量野麦を混ぜて造った合成麦酒」を「ビール」と区別するために「発泡酒」と名付けたことに端を発する。
戦後、国は「これほど低い麦芽率ではまともな味のビール風飲料は出来ないだろう」と思っていて、高い税金を取る必要はないと考えていたようだが、大手メーカーの技術が「これほど低い麦芽率でもまともな味のビール風飲料を造った」ということである。
ところが、国というのはエゲツナイもので「ならばそこからも税金を取ろう」と発泡酒の定義を変更してきた。
すると、大手メーカーは「さらなる一手」を打つことになる。
それが新ジャンルというカテゴリーだ。
大豆ペプチドなどを使って造ってみたりもしたが、ある意味「究極」と言える(?)のが「リキュール(発泡性)①」である。
缶をクルッと廻し、原材料お表記をチェックすると「発泡酒とスピリッツ(小麦)」と記されている。ひらたく言うと「発泡酒に麦焼酎を入れました」ってことだ。
スピリッツがどのぐらい入っているのかは明確にされていないが、アルコール度数は5~6%といったところが平均的なので、さほどの量は入っていないと推測される。
極端な話、でっかいビール(発泡酒)タンクに焼酎をポタっと垂らせば、酒税の安いリキュールになるということだ。
正直言って、これはすごい! 
そりゃー、キャッチコピーの通り、”ビールと間違う”わ。
もはやこれは醸造のお勉強ではなく法律のお勉強が成せる賜物という感じである。

勘違いされては困るのだが、私はこの”新ジャンル”を揶揄しているのではない。
このようなやり方で旨いビールが安く飲めることは消費者にとってはありがたいことだ。
(唯一、気になることは、その「スピリッツ」がどのような物なのか? ということだ。食品の産地偽装や賞味期限偽装などにこれほどナーバスになっている国民が、なぜビールの”麦芽”や”ホップ”そして、添加されているスピリッツの出所に無神経なのだろうかか…?)
やはり、日本のビール業界はスゴイとしか言いようがない。一枚も二枚もウワテということだ。

先日、サントリーの新ジャンル「琥珀の贅沢」が素晴らしいと書いたが、このシリーズの「かほりの贅沢」がこれまた素晴らしい。

このようなビール(新ジャンル)を飲むたびに、日本のビール界の面白さと素晴らしさを思い知らされる。

「かほりの贅沢」テイスティングレポート
マスカットようなアロマが印象的。口に含むとシャルドネのような風味とほのかな甘味が広がり、フィニッシュはビールらしい苦味が余韻としての凝り実に心地よい。

限定仕込みということだが、是非とも定番にしていただきたい銘品だ。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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