最高の樽生ピルスナーウルケルを届けたい!旅するビアトラックの挑戦
最高の樽生ピルスナーウルケルを届けたいという想いで、クラウドファンディングで「旅するビアトラック」を作った小松大輔さん(以下、ダイスケさん)という人が大阪にいる。
彼はピルスナーの元祖、ピルスナーウルケルの本場チェコ・ピルゼンにてプログラムを修了し、ピルスナーウルケルの完璧な注ぎ方をマスターした注ぎ手「タップスター」という資格を持っている。
タップスターは世界で250人程度(2019年時点)、日本にはたった4人しかいない。そして、キッチンカーならぬビアトラックでビールを届けるのはダイスケさんだけ。
そんなダイスケさんが注ぐほんまもんのピルスナーウルケルをホテル日航大阪前で飲むことができると知り、新米ビアジャーナリストが飲みに行ってみた。
目次
ピルスナーウルケルとは
ビールの歴史を少しでも学んだことのある人なら、ピルスナーウルケルという銘柄を知っているだろう。
ピルスナーウルケルは、世界初の黄金色のビールであり「ピルスナーの元祖」。
ピルスナーというのはビールの「スタイル」の1つで、日本の大手ビールメーカーの主力商品はほぼこのピルスナースタイルだ。
1842年にチェコで生まれたピルスナーウルケルは、それまでの濃色ビールと違い、輝くような黄金色。同じ頃に普及し始めていた透明なボヘミアガラスのグラスが美しい黄金色を引き立てたこともあって大評判となり、あっという間に世界中に広まった。
そして、ピルスナーウルケルのすごいところは、誕生から180年経った今でも、当時の味を守り続けていること。昔のように木樽で発酵・熟成・貯酒する製法と現代の設備でそれぞれビールを造り、同じ味になっていることを確認するパラレルブルーイングを行っている。
「180年前も、今も、200年後も同じ味なんてすごくないですか!」
目を輝かせて話すダイスケさんから、ピルスナーウルケルへのリスペクトが伝わってくる。
ピルスナーウルケルの日本のインポーターは現在アサヒビールグループとなっており、2018年からビンと樽の販売を開始。今年4月からは330mlの缶が大手スーパーやリカーショップで通年販売されていて、手に入りやすいビールとなっている。
タップスターとは
アサヒビールのプレスリリースに以下のような記載がある。
“タップスター”とは、『ピルスナーウルケル』を最高の品質で提供し、自らの言葉でその歴史や品質を語り、ブランドの魅力を発信していく役割を担います。『ピルスナーウルケル』誕生の地であるチェコ・ピルゼンにて5日間にわたる「タップスタープログラム」を修了し、試験に合格することで認定されます。
『ピルスナーウルケル』は、「醸造家がビールを醸造し、バーテンダー(注ぎ手)がビールを完成させる。」というブランド理念があり、“タップスター”の育成を強化しています。
2019年6月末現在、全世界で約250名、日本国内では4名が“タップスター”に認定されています。
2019年にプログラムを受けてタップスターに認定されたダイスケさん。
なぜタップスターになったのかを聞いてみると、日本人初のタップスターである佐藤裕介さんが注いだビールを飲んで衝撃を受けたからだと教えてくれた。
そう、ビールとは注ぎ方で味が全く変わる、実に繊細な飲み物なのだ。
旅するビアトラックの誕生
ダイスケさんは今年2022年1月末にクラウドファンディングで「旅するビアトラック」のプロジェクトを開始し、目標金額70万円を開始わずか20分で達成。最終的には314人の支援者によって270万円の資金が集まった。
このビアトラックの誕生を待ち望んでいた人が、それだけ多くいたということである。
そもそも、ダイスケさんはなぜ「旅するビアトラック」を作ったのか?
それは、一人でも多くの人にピルスナーウルケルの美味しさに気づいてほしいから。
彼自身がそれを飲んだ瞬間に衝撃を受けたように、たくさんの人に世界が変わる体験をしてほしいという想いがあった。
そのためには、「専用サーバーから注がれる、鮮度の良いピルスナーウルケルを飲む機会をどうやったら増やすことができるのか」という課題を解決する必要があり、行き着いた答えが「旅するビアトラック」だったのだ。
待っているんじゃなく、自分から日本中のいろんな場所へ注ぎに行けば良いんだ!
その強い想いで、世界最古の黄金色のビール「ピルスナーウルケル」を乗せた「旅するビアトラック」は完成した。
ピルスナーウルケルの注ぎ方
前述のように、ピルスナーウルケルは専用サーバーを使ったハラディンカという注ぎ方でサーブされるのが一般的であるが、実は他にも注ぎ方があり、ダイスケさんのビアトラックでも3種類の注ぎ方をオーダーすることができる。
ハラディンカ(Hladinka)
日本でよく飲まれる生ビールは「ビールを入れてから泡をのせる」というケースが多いが、ハラディンカは泡の下にビールを注ぐ。
泡の量が 3Finger と決まっているのも特徴。ピルスナーウルケルといえばハラディンカである。
シュニット(Šnyt)
グラス上部にわざと1Finger のスペースをあけ、3Finger の泡と2Finger のビールを注ぐシュニット。
バーテンダーが品質チェックするための特別な注ぎ方で、アロマとクリーミーな味わいを感じやすい。
ミルコ(ムリーコ)(Mlíko)
飲み会でやったら怒られそうな、泡を楽しむ独特な注ぎ方。チェコ語で牛乳を意味する。
本場チェコでも飲む人は少なく、ビールとビールの間の休憩がてらに飲んだり最後の一杯として飲んだりするための注ぎ方のようだ。
3種の注ぎ方の飲み比べ
私がホテル日航大阪前で出店しているビアトラックを訪問したのは、7月のとある木曜日の夕方。この場所での初出店の日だった。
御堂筋に面したその場所は、いわゆる大阪ミナミのど真ん中。買い物や勤め帰りなど、たくさんの人が行き交う場所である。
トラックの前に白い小さなテーブルが3つ。既にグラスを傾けている人も数人おられた。
せっかくなので、私は3種類の注ぎ方のピルスナーウルケルをオーダーし、並べて写真を撮ってから飲み比べることにした。
時間が経つと泡がなくなってしまうので、まずはミルコから一口飲んでみる。
なんといっても、泡がとってもクリーミー。ふわふわの生クリームやメレンゲのようで、牛乳(ミルコ)という名前がしっくりくる。
ビールの泡は苦いというイメージがあるが、ウルケルの泡はほんのり甘く、ミルコはビールとは別の飲み物のような気がしてくる。
続いてシュニット。まずはアロマを楽しんでから一口。
バーテンダーが品質チェックするための特別な注ぎ方だと聞いて、五感を研ぎ澄ませて飲んでみる。
クリーミーな泡と冷たいビール、甘味と苦味の絶妙なバランスが感じられる。
最後にハラディンカを一口。うーん、美味しい!!
難しいことを考えなくても、ただ美味しいと感じられる。
専用サーバーで最高の注ぎ手が注いだからこそ完成された味わい。そして、暑い夏の夕方に都会のビル群と御堂筋を走る車、行き交う人々を眺めながら飲むビールは最高だった。
ほんもののピルスナーウルケルを届けたい
出店場所さえあればどこでもビールを提供できるのが旅するビアトラックのメリット。もしかしたら、あなたの街で出会うことがあるかもしれない。
今回、私が伺ったのはホテル日航大阪前であったが、関西を中心に他の場所やイベントやフェスなどにも出店していて、ホームページから出店カレンダーを確認することができる。
また、条件が合えば個人で依頼もでき、友達が集まるBBQパーティーなどで注いでもらうことも可能だ。
ピルスナーは日本人が最も飲み慣れたビールのスタイルで、仕事帰りにグビッと飲むにはもってこいの味わいだ。
今や空前のクラフトビールブームではあるが、いろいろなスタイルのビールを飲んだ人たちが一周回って「やっぱり美味しい」と戻ってくるのがこのピルスナーだというのはよく聞く話。
ピルスナーウルケルはその元祖、原点である。
飲み飽きない、飲み疲れしない、そんなビールが180年前からずっと同じ味を守り続けているなんて、まさにロマンと言ってもいいのではないだろうか。
手に入りやすく、身近な飲み物だからこそ、時にはちょっと目線を変えてみてはどうだろう。
専用サーバーでタップスターが注ぐビールは、ビンや缶を買って家で飲むのとは全く違う味がするはず。きっと、あなたの世界観を変える一杯になるに違いない。
ひとりでも多くの人にそんな体験を届けたい!
ダイスケさんと「旅するビアトラック」の挑戦はこれからも続いていくことだろう。
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