《米澤美里さん》女性ブルワー 連載取材 「彼女がビールを造る理由」vol.2
クラフトビールのブルワリーで働く女性を取材するこのシリーズ。
第2回は東京山手線大塚駅のブルーパブ「NAMACHAん Brewing」の米澤美里さんにお話を伺いました。
目次
NAMACHAん Brewing 米澤美里さん
一度聞いたら忘れられない名前とアイコニックなキャラクターが特徴のNAMACHAんブルーイング。こちらのヘッドブルワーが若い女性だということも注目の的!早速お話を聞いていきます。
米澤さんの熱意から生まれた「NAMACHAん Brewing」
現在では3軒もの醸造所をもつNAMACHAん Brewingですが、実は元々の会社は醸造事業は行っていませんでした。さて、米澤さんがどのように関わり、今に至るのでしょうか。
2015年スモークビアファクトリー要町店開店
燻製料理とクラフトビールを楽しめるお店としてスタート。当時学生だった米澤さんは学校が近かったこともありオープニングスタッフとしてアルバイトを始めます。クラフトビールが好きでホールのお仕事をしていました。ボトルのクラフトビールの取り扱いで、醸造設備はありませんでした。
2017年スモークビアファクトリー大塚店開店
米澤さんが就職について考える時期が近づいてくると同時に、クラフトビールをもっと広めたいという思いが強くなってきました。企業の広報になる選択肢もありましたが、入社からそれを達成するためには時間もかかります。「卒業してすぐできることってなんだろうと考えた時、私が造って私が発信すればいいんだと思ったんです。」そこでオーナーに「ビールを造りたいんです。自らのビールをお客様に提供するお店を始めませんか?」と直談判!当時22歳の米澤さんの目の輝きと溢れるビール愛が会社の事業内容さえも動かした瞬間でした。
熱い想いを受け取った当時のオーナーと二人三脚で醸造設備とレストランが併設された大塚店を開店することになったのです。
師匠はビール醸造界の巨匠 丹羽智氏
開店に向け、当時アウトサイダーブルーイングにいた丹羽氏(現在:カマドブルワリー醸造長)の元でビール醸造を学びます。「当初から有名な方でファンだったので教えていただきたいと思っていました。」オーナーの縁を辿って弟子入りを果たします。ブルワリー近くにマンスリーマンションを借り1ヶ月半住み込んで研修をしました。「2日おきに仕込みをしていたのでとても勉強になりました。」と、米澤さん。彼女の思いをカタチにしていく力、すごいですね!
ーまわりの人の反応はいかがでしたか?
「親にブルワリーを作りたいって言ったら“えっ?”とびっくりしてました。反対はされませんでしたが、新卒で最初にやる仕事なのか?というのは言われましたね。」
今から8年前。まだまだブルワリーの数も少なく、クラフトビールはまだコアなファンにしか知られていなかった時代なので、ご家族の動揺は当然です。
「でも早くやりたい。今じゃなきゃダメなんだ。という気持ちが強くて半ば押し切っちゃいましたね。」今ではお店にも来るほど、応援してくれるそうです。
実はテコンドーの選手でした!
就職してからお仕事に邁進している米澤さん。日々のスケジュールやプライベートについて聞いてみました。
ーまず1日・週のルーティンを教えてください。
「起床は8時頃。10時にはお店(大塚店)へ出勤します。SNSに力を入れていて、皆さんのランチタイムに投稿したいのでそれまでに内容を考えてUPしています。そのほかは16時の開店に向けて準備しています。大塚店は毎週月曜日が仕込みで、他の店舗は他の曜日で仕込みをするのでそれにも携わってます。」
ーお休みはどのくらいとってますか?
「仕込みの後の午後や、シフトで余裕のあるところで休むようにしています。まだまだ体で覚える事も多いので若いうちに動けるだけ動いておこうと思ってやっています。」
ー休日の過ごし方を教えてください。
「お洋服は古着が好きで、よく古着屋さんへ行きます。そのほかでいうと・・・それが、あんまりキャピっとした趣味はないんですよね・・・笑。でも美術館へ行ったり、観葉植物の世話をしたり少しビールとは離れた事をしています。」
そして米澤さんとても意外な一面があり、なんと学生時代はテコンドーをやっていたとのこと!
「今はやめてしまってるんですけど、体動かしたい時はやっぱり格闘技をもう一回やりたいな、と思っています。」
日頃のストレスを発散できそうですね!
人生最初のお酒がクラフトビール
バイトを始める前からクラフトビールは好きだったという米澤さんですが、そもそも好きになったきっかけを聞いてみました。
「学生時代、お酒を飲めるようになって初めてサークルの仲間でオクトーバーフェストに行ったんです。その時の雰囲気がたまらなく楽しくて一気にビールが好きになりました。実際、何を飲んだかも味も覚えてないですけど(笑)。」
すっかりビールを好きになった米澤さんですが、周りのお友達はビールと距離がある事が気になるように。
「特に女の子は“私ビールはちょっと・・・。”という子が多かったですね。もし最初にヒューガルデンのようなビールを飲んでいたらこの子の感覚は違ったんじゃないかと思うと残念で。この頃からもっとクラフトビールを広めたいと思うようになっていったと思います。」
ビールの味の多様性など、まだまだ知られていない事を課題に感じた彼女は、自身のやり方でビールの魅力を発信をしていくことになります。
私には“カワイイ”の心が分かる
NAMACHAんブルーイングと言えばお馴染みの、ビールごとのイメージデザインですが、それには米澤さんの女性らしい感性が活かされています。
「ビール一つ一つのキャンバスを作っているのですがそのイメージを考えたり、デザイナーさんに伝えたりするのは幸せだなと思います。クラフトビール自体が一つのアートというか、造り手からの表現だと思うので、それを絵に落とし込むというも私にとって楽しい作業です。」
「最近、若い女性が増えたんです。そのお客様たちがたくさんキャンバスの写真を撮って“カワイイ!”って言ってくださるんですけど、私にはその“カワイイ”の心が分かるので、自分の考えた名前やデザインを楽しんでもらえるのがとても嬉しいですね。」
“ぱぴぷぺぽ”って、カワイくないですか?
ビールのレシピも米澤さん独自の“カワイイ”の感性から生まれています。
「最近パイナップル・ピーチ・ココナッツを使った「パピコ」という名前のビールを作ったのですが、発想元は有名なアイスではなくて、“ぱぴぷぺぽ”っていう響きがカワイイなって思ったんです。そしたら頭文字が「パ」だからパイナップルを使おう、という感じでレシピも決まって行きました。遊び心とカワイイを掛け合わせる事ができるのもクラフトビールの面白さですよね。」
それでもお客様の反応にはいつも緊張
そんな”カワイイ”を発信している米澤さんですが、様々なビールのアイディアを得るためにどのような事からインプットをしているのでしょうか。
「最近、食べ物からヒントを得てビールを造りました。食べ物は比較的幅広いお客様と認識を共有できるので、味も想像しやすいですしね。でも、初めて造るビールをお客様に出す時はいつも手が震える思いでお出ししているんですよ。そこで「美味しい」と言っていただけると本当に嬉しいです。」
初志貫徹。そしてもっとビールファンを増やしていくために。
ーブルワーのお仕事のやりがいを教えてください。
「今までビールが嫌いだった人がビールを好きになってくれることですね。スムージースタイルなどを入り口に、ビールが飲めるようになったという声も少しずつ聞くようになったので、それが嬉しいです。」
もっとクラフトビールを広めたい、好きになってもらいたい、という思いでブルワーになった米澤さん。当初の志そのままに、ユニークなビールや可愛いキャンバスを通して、ワクワクや驚きを届け、着実にファンを増やしています。
現在全部で5店舗を展開していますが、今後は各店舗の個性を引き立たせるために、そのお店らしいビール造りに力を入れていくということです。
「NAMACHAんスタンド椎名町店は“カワイイ”がコンセプトなのでパピコのようなスムージーや、ペストリー系を充実させていきます。NAMACHAんスタンド北池袋店は“大人っぽい・おしゃれ”なお店にしたいので、バレルエイジド(樽熟成)を取り入れていきます。燻製ビールをさらに樽熟成させるという、今までにないビールに挑戦していきたいです。」
店舗からのお知らせ
(NAMACHAんスタンド北池袋店)
(NAMACHAんスタンド椎名町店)
桃をふんだんに使用した「桃スムージー」を開栓しました!
- NAMACHAん Brewing(ナマチャンブルーイング)
醸造所 / タップルーム
所在地 :東京都豊島区南大塚1-60-19 パルムハウス 103
TEL : 03-3942-0180
JR大塚駅南口を出て徒歩2分
営業時間:[火〜金] 16:00~23:00 [土] 13:00~23:00 [日・祝] 13:00〜22:00 定休日:月曜日
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