オフフレーバーを学ぶ!フレーバーキット体験レポート
みなさんは「オフフレーバー」という言葉をご存じでしょうか?飲み物や食べ物などの製品において、製造工程や原料、若しくは保存環境により、その製品本来の香味を損なうにおいのことです。
例えば、天気の良い日にビアガーデンで友達とのおしゃべりに夢中になっていたら、いつの間にかビールが臭くなったという経験はないでしょうか?それがオフフレーバーです。
オフフレーバーには何種類ものにおいがありますが、普段普通にビールを飲んでいる分には滅多に遭遇することはないかと思います。
そこで、官能検査トレーニングのためのフレーバーキットを用い、様々なオフフレーバーを体験してみました。
フレーバーキット
今回使用したのはFlavorActiV社より販売されているビール用フレーバーキット「Enthusiast Brewer Sensory Kit」。
(FlavorActiV社のサイトはこちら)
試薬の入ったカプセルが10種類あり、価格は2万円台前半。円安の影響もありますが、お気軽に買える値段ではないのが痛いところです。決して「ビール何本買える?」などと考えてはいけません。
また、試薬は1リットルのビールに溶かす必要があるため、10種類で10リットルのビールが必要になります。
オフフレーバー体験会
せっかくのフレーバーキット、ひとりで体験するには勿体ないということで、北海道北部にある名寄市のビアバー「Moltrip(モルトリップ)」オーナーの風間健さんに協力いただき、オフフレーバー体験会を開催していただきました。
ちなみに、風間さんは2021年北海道士別市に開業した士別サムライブルワリーのマスターブルワーでもあり、オフフレーバーの知見もある方です。
オフフレーバー体験会には、北海道内でブルワリーの立ち上げ準備をしている方やコアなビールファンなど、好奇心と向上心溢れるメンバーが集まりました。
準備手順
(1)1リットルの計量カップに200mLのビールを入れる。
(2)カプセルを空け、中の粉末を200mLのビールに溶かし込む。(カプセルは溶けないので注意)
(3)1リットルまでビールを継ぎ足し、泡立たないようにゆっくりかき混ぜる。
(4)小さなカップに50mLほど取り分けてテイスティングする。
テイスティングコメント
ここからは筆者の主観も入りますが、それぞれのオフフレーバーについてのコメントです。
ダイアセチル/バターのようなにおい
乳製品のような独特の風味に感じましたが、それほど不快には感じませんでした。
もしかしたらあまり感じ取れていないのかも知れません。個人差によって感じ取れない人もいるようです。
ビアスタイルによっては、多少のダイアセチルは許容されるようです。
チオール化合物/日光臭
たまに遭遇する風味ですが、非常に不快です。ビールは日光に当ててはいけません。
スカンク臭とも言われますが、スカンクのにおいを嗅いだことがないので本当かどうかはわかりません。
メチルメルカプタン/排水溝、ガス臭、腐った玉ねぎ
10種類の中で一番強烈で最悪な臭いでした。この香りが出てしまったらよほどの事故だと思います。
金属/金属臭
においというよりも鉄の味がするので、美味しくありません。割と分かりやすいフレーバーだと感じました。
トランス-2-ノネナール/ダンボール臭
ダンボールというか表現し難いにおいに感じましたが、これもかなり不快なにおいです。
ビールを高温の環境で保管すると、このにおいが発生するようなので注意が必要です。
フェノール/クローブ、けむりのような臭い
ベルギービールを思わせるスパイスのような香りで、わかりやすいです。参加者からも割と好評な香りでした。
作り手が意図していないのに、この香りが出てしまった場合、オフフレーバーになってしまうということかと思います。
酸/お酢、青りんご、レモン
普通に酸味を感じますが、酸味だけならあまり不快に感じないのかも知れません。
雑菌で汚染されたら、酸っぱいだけでなくもっと違ったにおいを伴うのではないでしょうか。
これも造り手が意図しなければ、オフフレーバーということなのでしょう。
硫化水素/硫黄、温泉、腐った卵
硫黄のにおいそのままなので不快ですが、ほかのフレーバーが強く感じたためか今回の試薬では味わいへの影響は少なかったように感じました。でも、やはり臭いです。
ジメチル(DMS)/トウモロコシ、腐ったキャベツ、磯の臭い
トウモロコシというのも独特で表現し難いにおいですが、不快で味わいにも影響します。
製造過程で発生するオフフレーバーのため、ブルワーの方は特に気を付けるオフフレーバーだと思います。
酪酸/腐ったチーズ
チーズのにおいがはっきり感じました。個人的にチーズは好きですが、ビールからチーズの香りがするのは好ましくありません。
体験会で感じたこと
においの感じ方は個人差が大きいようで、参加者によって感じやすいにおいと感じにくいにおいは異なるようでした。何名かブラインドテストも挑戦しましたが、判別出来るにおいと出来ないにおいも人それぞれで、全てのにおいを当てた人はいませんでした。
ビールの温度も非常に重要で、冷えているときよりも、少しぬるくなった方がにおいは判別しやすいと思います。
また、今回はいきなり1リットルのビールで溶かしましたが、最初は少ないビールで濃いフレーバーから試し、徐々に薄めた方がにおいの違いが分かりやすいと思いました。
今回の体験会はひたすら美味しくないビールを飲むという会だった訳ですが、集った仲間同士いろいろ感想を言いながら、和気あいあいと楽しんで勉強することができました。
どんな味であっても場を和ませ盛り上げる、あらためてビールの懐の深さを思い知った気がします。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。