Beer&Life Style Fashion編「ビールとジャパーのペアリング」
ビールのペアリングはフードだけではない。
どんな装い=ファッションで、どんなビールを飲むか……。
それが「ビールとファッションのペアリング」だ。
IVY、トラッド、渋カジなんてのが青春だった世代には懐かしく、若い世代には一周まわって新発見になる連載企画。
第3回目は【ビールとスタジャン or スカジャン】のペアリングだ。
*第1回【ビールとボーダーシャツ】は、こちらで。
*第2回【ビールとベスト】は、こちらで。
【11月上旬】リーダーシップはベルギービールとスタジャンやスカジャンで養え!
目次
ジャンパーなの? ジャンバーなの?
11月の声を聞くと、いよいよジャンパーが必要となる季節だ。
なんて言うと、前回のチョッキ同様「ジャンパーって死語ですよ」と笑われるに違いない。
『裾の短い上着』をジャンパーと呼ぶのは日本人(それも中高年?)だけで、海外ではジャケットやウィンドブレーカー、ブルゾンという言葉が使われる。
ちなみに、イギリスでジャンパーは『頭から被る上着』、アメリカでは『袖の無いワンピース』を表すとのことだ。さらに、ジャンパーと聞いて「ジャンバーじゃないの?」と首をひねる人は年齢が高い傾向にある。
戦後すぐの文献では、『ジャンバー』や『ジャンバァ』と表記されていたので、年配の人はジャンバーと言いがちだ。デズニーランドみたいなものか?
ま、どのみち英語圏では通じないのだから、パかバかなんてどっちでもいいのである。トホホ。
タか? スか? それが問題だ。
呼び方問題に決着がつかないままであるが、ここから先はジャンパーで進めさせていただきたい。というのも、スタジャンとスカジャンの話をしたいからだ。
あー、またややこしい。スタジャンとスカジャン。和田アキ子と矢田亜希子を聞き違えるほどの痛手ではないが、スタジャンとスカジャンはかなり違う。
スタジャンはスタジアムジャンパーの略で、スカジャンは横須賀ジャンパーの略である。
スタジャンはヴァーシティジャケット
スタジアムジャンパーはスタジアムで着るジャンパーという意味の英語だと思いきや、これも海外では通じない。
ま、ジャンパーが通じない時点でアウトなんだから、いまさらって感じがするが、ザ・和製英語である。VANの創業者石津謙介氏が命名した。
海外では、ヴァーシティジャケット、アワードジャケットと呼ばれている。
起源はアメリカの大学の「Varsity(ヴァーシティ)=代表チーム」選手が着るジャケットだ。1865年にハーバード大学の野球部が初めて着たと言われている。限られた選手のみが着用できる誇り高きジャケットだったのだ。
大学のイニシャル(ハーバードならばH)が大きく描かれていたのでレターマンジャケットという呼び方もあった。
その後、リーグチャンピオンになった年やチームのスローガンを刺繍で編み込んだりするようになり、デコラティブなジャケットになっていった。
日本では1980年代〜90年代初頭かけ、大学のスポーツサークルで揃いのスタジャンを作るのがブームとなり、◯◯UNIV.やSince〜なんて文字を背中にしょって闊歩する集団をよく見かけたものだ。
一般的なデザインは、以下の通りである。
・セットインスリーブ。
・身頃がメルトン生地。
・袖が革。
・身頃と袖の色は違うのが基本。
・フロントはスナップボタン。
・チーム名、マスコット、創部や優勝した年などのワッペンや刺繍が施されている。
・裏地はキルティングされたナイロンのものが多い。
スタジャンを気取って着こなす
スタジャンは野球チームが起源だけあって、スポーツをモチーフにした柄のパッチや刺繍が多い。
スポーティーな着こなしはお得意の分野だが、オフィスウェアとしても活用したい。
ポイントは「サラリーマンがイベントで仕方なく着せられてる感じ」にしないことである。
スカジャンはスーベニアジャケット
スカジャンも和製英語である。
ま、ジャンパーだけでなくスカも 横須賀のスカなのだから、英語のわけがない。
海外ではスーベニアジャケットと呼ばれていて、直訳すると「お土産の上着」である。
これは、第二次世界大戦後、日本に駐留していたアメリカ兵が帰国の際のお土産として、日本っぽいモチーフと赴任地や所属部隊の名をジャケットに刺繍して帰ったのが起源である。
横須賀海軍施設のゲートにほど近い「どぶ板通り商店街」の刺繍屋が発祥の地とされているのでスカジャンと呼ばれるようになった。
一般的なデザインは、
・ラグランスリーブ。
・生地はサテンか別珍。
・身頃と袖の色は違うのが基本。
・フロントはジッパー。
・龍や鷹や虎、Yokosukaなど赴任地や部隊名などが刺繍されている。
・裏地がキルティングされたナイロンのものもある。
・リバーシブルのものもある。
といったものだ。
スカジャンは可愛く着る
スカジャンは、映画「悪名」シリーズの田宮二郎やドラマ「傷だらけの天使」の水谷豊の影響で、不良系ファッションのイメージが強い。
サテンの光沢や和柄の刺繍も、強面の雰囲気を醸し出す。
米兵のお土産だけに、ミリタリーっぽさも出る。
そんなスカジャンを、あえて上品かつ可愛く着こなしたい。
ボタンダウンシャツやカシミヤのセーター。チェックのボトムスやギンガムチェックのシャツを合わせ、優等生っぽい着方やいい意味で”幼く”見える着こなしをする。
ファッションは、思い切ったもん勝ちである。笑
リーダーに必要なのは、楽観主義? 悲観主義?
スタジャンはスポーツチーム、スカジャンは米軍と、それぞれの発祥に”集団”が大きく関わっている。
チームワークや所属意識が強いファッションアイテムだ。
人は集団で生活をする動物である限り、グループを組み、リーダーシップが求められる。
最近、脳科学の研究で「リーダーは7割の楽観主義と3割の悲観主義を持ち合わせた人物が適任」という説が唱えられているという。
京セラやKDDIの創業者でリーダーシップを発揮した稲盛和夫氏の経営哲学に「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というものがある。
ビールは楽観的なお酒だと思うのだが、”悲観的”な部分はあるのだろうか?
ベルギービールにおける悲観主義と楽観主義
ベルギービール、特にストロングエールのネーミングには独特のセンスがある。
以前、あるイベントでベルギー大使館を訪れた時、陳列されたベルギービールの瓶をベルギー大使がニヤニヤしながら並べ替えていた。
私が「なにをしてるんですか?」と尋ねると「怖い名前の瓶が中央に集まるように並べ直しているんですよ」と答えた。
デュベル=悪魔、サタン=地獄の長、デリリウム・トレーメンス=アルコール依存症患者の震え、モール・シュビット=突然死、マルール=災難、ギロチン=断頭台など、ベルギーのストロングエールにはゾッとする名前が多い。
こんな言葉を、楽しいお酒であるビールにつけるセンスを疑う方もいるだろうが、ベルギー人は楽観主義と悲観主義の絶妙なバランスを楽しんでいるのだと感じる。
「ビール飲むぞぉ!=楽観主義」からの「アルコール依存症になっちゃうの?=悲観的」からの「美味しい〜。楽し〜ぃ!=楽観的」である。まさしく稲盛和夫の哲学だ。
スタジャンやスカジャンを着て、ベルジャンスタイル・ストロングエールを飲めば、リーダーシップが養われるに違いない。
今回紹介するデュベルとデリリウムトレメンスはベルジャンスタイル・ストロングブロンドエールを代表するビールである。
デュベル・モルトガット醸造所
1871年創業の醸造所。
フラッグシップのデュベルの他にマレッツ、ヴェデットなどの銘柄がある。
伝統を重んじながらも、ホップにフォーカスしたデュベル・トリプルホップを造るといったチャレンジ精神を持つブルワリーである。
ちなみに、3種類のホップを使った「デュベル・トリプルホップ」は2007年にスタッフ用の試作品として造られたものが好評だったため、2010年から商品として販売され始めた。通常のデュベルのアルコール度数は8.5%だが、トリプルホップは9.5%である。
デュベル
デュベルは現地の言葉で「悪魔」の意味。
第一次世界大戦後、英国のエールを参考にしたビールを造り、「ヴィクトリーエール」という名で販売したが、近所の靴屋が「このビールには悪魔(デュベル)が棲んでいる」と言ったことから名前が変更された。
デュベルの醸造には手間と時間がかかる。
主発酵ののち低温で熟成させ、一旦ろ過したあと糖と酵母を加えて瓶に詰め、24℃で瓶内発酵させたのち4〜5℃で熟成させる。
全体で2〜3ヶ月近くかかる工程だ。(一般的なエール1ヶ月程度で仕上がる。)
デュベル・モルトガット醸造所の外壁には「し〜っ、デュベルが寝ています」と書かれている。
ライトラガーのような外観と口当たりの良さからグビグビグビと一気飲みすると、あとで悪魔が牙を剥いてくるが、じっくりと味わいながら楽しく適正飲酒を心がければ、やさしい悪魔が微笑んでくれる。
藤原ヒロユキ テイスティングレポート:
ゴールデンカラーのビールにホイップクリームのような豊かな泡が立ち、見惚れてしまう。
香りは完熟したリンゴやメロンやハチミツのようなアロマと、クローブにも似たキャラクターを探し出せる。
ホップの苦みも心地よく、アルコールの暖かさも感じる。
ヒューグ醸造所
1906年創業。
1988年、現在のフラッグシップであるデリリウム・トレメンスの販売を開始する。
濃色系のデリリウム・ノクトルムやデリリウム・クリスマス、ギロチン、メール・ノエル、ギロチンなどラインナップは豊富である。
デリリウム・トレメンス
デリリウム・トレメンスの意味は「アルコール依存症患者の震え」。
ラベルに描かれたイラストは、アルコール依存症の初期段階で見えてくる幻覚が「ピンクの象」、さらに症状が進むと「踊るワニ」、そして「月の周りを回る龍」と進んでいくという言い伝えによるものである。
デュベル同様、明るい色の外観とスムースな口当たりに誘われ、一気飲みするとピンクの象やワニや龍がなついてくることになるので適正飲酒を心がけたい。
藤原ヒロユキ テイスティングレポート:
キャンディーシュガーの甘い香りと瑞々しいフルーツを思い出させるアロマが鼻腔をくすぐる。
口に含むと甘味とフルーティーなフレーバー、飲み込むとアルコールの暖かさを瞬時に感じる。
ベルジャンスタイル・ストロングブロンドエールはフルーティで瑞々しい口当たりである。
しかし、どれもアルコール度数が7〜11%ある。そのうえネーミングが恐ろしい。
この『楽しい感じとちょっと怖い感じ』こそ、リーダーシップに必要な『楽観と悲観のバランス』に他ならない。
スタジャンやスカジャンを羽織りながらベルジャンスタイル・ストロングブロンドエールを飲めばリーダーとしてのバランス感覚を養うことができるのである。
《今回紹介したファッションアイテム》
K-SWISS CLASSIC66
KELTY デイパック
ハイドロゲン リブパンツ
オム プリッセ イッセイ ミヤケ ブラックタートルネック トップ
G.H.BASS キルトタッセル
Jプレス ボタンダウンシャツ
ラルフローレン クォータジップセーター
BEAMS HEART スリムフィットスラックス
ウォークオーバー ダーティーバックス
スターバックス ステンレスタンブラー
ウサギ柄スカジャン
グッチ ビットローファー
では、また季節が変わる頃に、、、
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。