[コラム]2022.11.15

Beer&Life Style Fashion編 ビールとセーターのペアリング その1

ビールのペアリングはフードだけではない。

どんな装い=ファッションで、どんなビールを飲むか……。
それが「ビールとファッションのペアリング」だ。

IVY、トラッド、渋カジなんてのが青春だった世代には懐かしく、若い世代には一周まわって新発見になる連載企画。
第4回目は【ビールとセーター】のペアリング「その1」だ。

【11月下旬】冬はセーターとバーレイワインでポッカポカ

セーターが裂かれてカーディガンが生まれた

11月も中旬になるとセーターやカーディガンを着ることが多くなる。
今さら言うまでもないが、『セーターは被り物』で『カーディガンは前開き』だ。
カーディガンはセーターの進化系と考えて良い。

なぜならば、カーディガンはセーターを切り裂いたことが起源だからだ。
クリミア戦争で、イギリス陸軍カーディガン7世が負傷した際に、セーターの前を裂きボタン留めにしたのが始まりと言われている。

セーターとカーディガンのバリエーション

セーターとカーディガンのバリエーションは、首周りで把握できる。
まず、どちらもクルーネック、Vネック、タートルネックの3パターンに分かれる。
クルーネックは丸首、タートルネックはハイネックやトックリなどと​も​呼ばれる。(もはや死語か?)

クルーネックセーターが前開きになると丸首カーディガン、胸元に2〜3個のボタンが付いている被り物はヘンリーネックネックセーターと呼ばれる。
タートルネックのカーディガンは”立襟のカーディガン”で、第一ボタンを外すと開襟シャツのような感じになるし、全開ではなくポロシャツのような被り物の場合もある。

セーターとカーディガン

セーターとカーディガンは系譜を整理するとわかりやすい。

クルーネックは「乗組員」

クルーネックのクルーは船の乗組員を表す「crew」である。
​そして、そのルーツはアラン島の漁師が着ていたアランセーターであり、さらにその原型はガーンジー島の漁師のガンジーセーターと言われている。(島の名前はガーンジー島と表記されることが一般的だが、セーターはガンジーセーターと呼ばれることが多い)
また、首周りに幾何学的な模様の入ったフェアアイルセーターもフェア島に起源を持つ。

クルーネックセーターは、海に関わる物なのだ。

そんなアイテムを、いちびって着崩してないけない。
教科書通り。基本が一番である。
襟が出ないようにボタンダウンシャツを着て、チノパンにローファーを合わせる。唯一の遊びは裏ネルのチノパンを折り返してチェック柄を覗かせる程度か。
退屈。ベタ。面白みに欠ける。
言わせておけばいい。ペールエールがうまく造れないブルワーがヘイジーだのサワーだのといきがっても、美味しいものは出来ないのだ。
まずはベーシックをおさえてから次に進みたい。

ネイビーブルーが基本だが、2着目はビビッドな色にも挑戦したい。

丸首カーディガンのボタンはどう留めるか?

クルーネックセーターの前を開いた「クルーネックカーディガン」は、一般的に「丸首カーディガン」と言われ、クルーネックセーターとは一味違った雰囲気を持つ。
と言うのも、ボタンをどのように留めるかでシルエットが変わってくるからだ。
ポイントは第1ボタン! 「ここだけ開ける」か「ここだけ掛ける」かで大違いなのだ。

まずは第1ボタンだけ外して胸元を開けるパターン。
ネクタイを絞めて襟元を引き締めたほうがおさまりが良い。
ネクタイはほとんど見えないので、柄物よりストライプのレジメンタルタイやドット柄などを選びたい。

カジュアルになりがちなカーディガンも、ネクタイでちょっとオシャレに。

逆に、第1ボタンだけを掛ける着こなしはショールやポンチョ、マントのようなムードが醸し出され、女性の着こなしに多くみられる。
フレアスカートなどを合わせると全体的に広がったシルエットになり下半身が大きく見えがちなので、サブリナパンツやローヒールのパンプスでボトムスをスッキリさせるとシャープな装いとなる。

ボトムスを細身に仕上げ、軽やかでスマートなイメージを演出したい。

Vネックで小顔効果

セーターであれカーディガンであれ、Vネックには小顔効果がある。
上手く着こなせば、顔を小さく見せることが可能なのだ。

あるTV番組で顔の大きいコメンテーターが、毎回必ずVゾーンの狭いダブルのジャケットを着て出演していた。
ただでさえ大きい顔が、狭いVゾーンの上にちょんと乗っかっている姿は福助人形のようで、他人事ながら気になっていた。(大きなお世話かぁ?)
ところがある時から、ダブルをやめて、Vゾーンの広いシングルのジャケットを着るようになった。スタイリストがついたのか? 誰かが指摘したのか? どっちにしろ以前のような”大きな顔がスーツにめり込んだような感じ”はしなくなった。

つまり、顔が大きくても、顔の周りを大きく広く見せれば良いのだ。
ホップの苦味が強いビールも、モルトの甘味を高めればドリンカブルになるように、バランスを取ることが重要だ。
顔の大きい人はVゾーンをなるべく広くするべきでなのである。ベストの回にも登場したチルデンセーターはVゾーンにラインが広がっているので一段と小顔効果が高まる。
​さらにトドメは、つばの広い帽子。照れずにかぶれば怖いもの無しである。

顔の上下に目立つ要素を持ってくることで顔を小さく見せる。

セーターとバーレイワインで身も心もポッカポカ

セーターは漁師や船員の防寒具がルーツだが、ファッションアイテムとして利用されたのは1891年からと言われている。
アメリカの大学のフットボール選手が、減量の時に汗をかくために着た羊毛のシャツ「Sweater」を、一般の学生が防寒用として利用し始めたのだ。
セーターは、汗(=Sweat)をかくほど体を温めてくれるのである。

セーターと同様に体を温めてくれるのがハイアルコール系のビールである。

イングリッシュ・ストロングエールやオールドエールあたりをパイントグラスでチビチビ飲むのも良いが、一番のおすすめはバーレイワインだ。
ワインという名を持つが葡萄は一切使われていない。
バーレイ(大麦)で造る、「ワインのように芳醇でアルコール感のあるビール」である。
アルコール度数は銘柄によって差はあるものの8.5%〜12.5%の範囲が一般的だ。

モルトの甘味としっかりとしたボディが特徴で、カラメルやトフィー、ドライフルーツを思わせるアロマが漂い、年代物のオロロッソシェリーにも似たふくよかなフレーバーが広がる。
ハイアルコールビールならではの温かさをしっかりと感じることもできるリッチなビールだ。

しっかりとした味付けの肉料理、シチューなどの煮込み料理にマッチする。
また、食後酒としてスイーツやブルーチーズと合わせるのも乙な楽しみ方である。

飲むときの適正温度は13〜15℃がおすすめ。香りや味が華やかに開いてゆく。冷やしすぎるともったいないビールだ。
口の広いグラスに、半分から八分目ほどの量を注ぎ、香りを籠らせて味わおう。
お燗(ホットビール)にしても美味しいので、ぜひお試しいただきたい。

寒い日も【セーター】を着て【バーレイワイン】を飲めば、身も心もポッカポカに温まる。

ヤッホーブルーイング

長野県軽井沢町に本社をかまえる「クラフトビール最大手のビールメーカー」。1997年創業。
フラッグシップは「よなよなエール」。他にも「東京ブラック」「水曜日のネコ」など人気の銘柄が豊富だ。
都内に公式ビアレストランが8軒あり、そのいくつかには藤原ヒロユキが原画を描いた「よなよなエールの巨大な缶」の立体作品がある。

 

ハレの日仙人

半年以上の熟成を経て醸し出される香りと味わい、アルコール度数10.5%の豊かさ。
ゆっくりと時間をかけて飲みたい逸品。
750ml入りだが、リキャップできるので毎日少しずつ数日かけてゆっくりと味わうことができる。

ハレの日仙人

ラベルはボトルの裏側まで続き、鯛や鶴といったイラストが和風タッチで描かれている。
銘柄:ハレの日仙人2020
ビアスタイル:イングリッシュスタイル・バーレイワイン
醸造所:ヤッホー・ブルーイング
アルコール度数:10.5%

藤原ヒロユキ テイスティングレポート:
カラメルの甘香ばしいアロマとレーズンやプラムを思わせるフレーバーが口全体に広がる。
モルト由来の甘味と酵母が醸し出すフルーティーなフレーバーが心地よい。

アルコールの温かさを感じるが、甘味があるので度数10.5%を感じさせずスムースに飲める。
ビーフストロガノフやジビエ料理、すき焼きやうなぎの蒲焼といった和食にマッチする。
食後ならば、チョコレートやアイスクリーム、小豆餡や干し柿といったスイーツに合わせたい。

では、また季節が変わる頃に、、、

第1回【ビールとボーダーシャツ】は、こちらで。

第2回【ビールとベスト】は、こちらで。

*第3回【ビールとジャンパー】はこちらで。

 

Beer & Life Styleハレの日仙人ファッションペアリングヤッホーブルーイング藤原 ヒロユキ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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