[コラム]2022.12.15

Beer&Life Style Fashion編 ビールとマウンテンパーカーのペアリング

ビールのペアリングはフードだけではない。
どんな装い=ファッションで、どんなビールを飲むか……。
それが「ビールとファッションのペアリング」だ。

IVY、渋カジなんてのが青春だった世代には懐かしく、若い世代には新発見になる連載企画。

第6回目は【ビールとマウンテンパーカー】のペアリングだ。
【12月下旬】マウンテンパーカーで焚き火&ラオホビール

マウンテンパーカーとは?

マウンテンパーカーは文字通り「山の上着」である。
山登りに重宝なパーカーだ。
マウンテンパーカーの元祖は、1965年にカリフォルニア州リッチモンドで創業したシェラデザイン社のマウンテンパーカーである。

シェラデザイン社は、バークレーのアウトドア用品店「スキーハット」の製造部門で働いていたジョージ・マークスとボブ・スワンソンという2人の若者が独立し、小さなロフト付き倉庫からスタートした会社である。
これは、アメリカのクラフトビール・ムーブメントが始まる時期や創業ストーリーと重なっていて面白い。
旧態依然とした企業では、湧き出る想像力を発揮できないというジレンマ。
小規模な設備で、こだわりの商品を創り出していくクラフトマンシップ。
アメリカ西海岸から起きたムーブメントの一環と言える。

そしてこのシェラデザイン社が1968年に発表し、飛躍的なヒット作となるのがマウンテンパーカーなのだ。
現在、数あるマウンテンパーカーはすべて【シェラデザインのマウンテンパーカー】をお手本にしている。

シェラネバダ山脈に由来する「シェラデザイン」の名に愛着を感じるビールファンも多いはず。

マウンテンパーカーの60/40とは?

シェラデザインのマウンテンパーカー人気は、機能的なデザインはもちろん、その素材にもある。
日本ではロクヨンの通称で呼ばれる【60/40クロス】が使われている。
コットン約60%、ナイロンを約40%の比率で折り込んだ生地である。

コットンは摩擦や引っ掛け傷に強く、熱にも強い。
肌触りがよく、使い込むほどに味わいが増してくる。

ナイロンは、風を通しにくく、撥水機能が高く、軽量である。

ロクヨンはコットンとナイロンのエエとこどり素材なのだ。

新素材が開発され続けているが、60/40の機能と風合いへの人気は廃れることがない。

マウンテンパーカーはシティーパーカー?

マウンテンパーカーは、”マウンテン”という名前から登山限定の服だと思う人もいるかもしれないが、都市生活者にとってこれほどありがたいパーカーはない。
まず、撥水性が良くフードもあるので、少々の雨ならば傘をささずにやり過ごすことができる。
ビルや地下街やカフェなどに避難するまでの数分間、とりあえず雨をしのげば事足りるわけだから、マウンテンパーカーがあれば傘を持ち歩く必要はない。

ポケットが多いのも便利だ。背中に大きなマップポケットが有る(メーカーや品番によっては無い場合もあるので注意)ので、雑誌やノートパソコン程度ならば収納が可能である。
マップポケットは、地図や防寒用のシートなどを入れるためのものだが、ブリーフケース並みの収納力がある。

単なる防寒着ではない。マウンテンパーカーがあれば手ぶらで街を闊歩できる。

マウンテンパーカーはツーリストパーカー?

ポケットが多いのは、旅行の時にも役に立つ。
一般的なマウンテンパーカーは、両胸と前身頃に大きなポケットがついている。(これまたメーカーや品番によって違うので要注意)
効果的に使えばショルダーバッグ1つぶんぐらいの収納力がある。
よく使うものはポケットに入れておけば、いちいち旅行鞄を開ける必要もなくなる。

マウンテンパーカーは、もはや「鞄」と言える。ポケットの大きさと数で収納力抜群。

マウンテンパーカーは焚き火パーカー?

キャンプでもマウンテンパーカーは大活躍だ。

テントサイトで使うナイフや手袋などの小物をポケットに入れておくことができる。
さらに、キャンプの醍醐味とも言える【焚き火】には欠かせない上着である。

まずは、薪作り。
原木を玉切りしたり割ったり積んだり運んだりする際に必要な細々したグッズをポケットにどんどん収納できる。

刃物や薪でウェアを傷つけてしまいがちな薪作りも、破れにくい60/40なら安心だ。

そしてなによりも、60/40クロスは火に強い!
焚き火の近くで、ナイロン製の上着を着ていると火の粉で穴が開くことがある。
表面が起毛したウェアなどは、一瞬にして火が広がることもあるのできわめて危険だ。

つまり、、、、
マウンテンパーカーこそ、焚き火に最適なウエアなのである。
THE 焚き火パーカーといっても過言ではない。

ポケットが多いので栓抜きや空き瓶なども入れておける。火から離れる回数も減る。笑

ラオホビールってなに?

火をあつかう動物は人間だけである。
火を焚き、火をコントロールすることで、進化した。

火がなければビールを造ることもできなかった。
麦を乾燥させたり焙煎して麦芽(モルト)を作ることができなかったからだ。
私達がビールを好む理由は、そこに「麦芽の香ばしさ=火の香り」を感じるからに違いない。火を扱う動物の遺伝子に組み込まれた本能なのだ。

一般的な麦芽は、発芽を促した麦を乾燥して作る。
色の濃い麦芽は焙煎もおこなう。
さらに個性的な【燻製麦芽=スモークモルト】は、ウッドチップで燻されている。
スモークモルトを使った【燻製ビール=ラオホビール】からは、ハムやベーコンのような燻製香が漂う。これぞ究極の【火の香りのビール】だ!

ラオホビールはドイツのバンベルクで生まれたと言われている。
ラオホ(Rauch)はドイツ語の「煙」の意味だ。
麦芽工場が火事になり、偶然「燻製麦芽」が出来、それを使ったら美味しかったのでラオホビールが生まれたという。

マウンテンパーカーで焚き火&ラオホビール

ラオホビールと焚き火は相性が良い。
火の香り、煙の香りつながりだ。
そして、焚き火にもっとも似合うのは、火に強く、火の似合うTHE 焚き火パーカーこと【マウンテンパーカー】である。

ということは……。
ラオホビールとペアリングするべきファッションはマウンテンパーカーに他ならない。

日本で最も有名なラオホビールといえば富士桜高原麦酒の【ラオホ】である。
富士桜高原麦酒はドイツビールに軸足をおき、素晴らしいビールを造り続けている。
それもそのはず、醸造長の宮下天通氏はドイツの名門「デーメンス醸造学校」でビール造りを学んだキャリアを持つ。

そのうえ、懐古主義に陥ることなく、新種のホップを使ったヴァイツェン【マンダリナバーバリアン】など創造的なビールにも数多く取り組んでいる。
伝統+新取。まさにクラフトビールの精神である。
ワールドビアカップをはじめ、数多くのコンペティションでメダルを獲得しているのも頷ける。

ラベルはどことなくアールヌーボーの雰囲気を醸し出している。よく見ると龍と思しき横顔も。
銘柄:富士桜高原麦酒ラオホ
ビアスタイル:バンベルクスタイル・ラオホビア
醸造所:富士桜高原麦酒
アルコール度数:5.5%

藤原ヒロユキ テイスティングレポート

口に含むとハムやベーコンを思わせるスモーキー・フレーバーが程よく感じられ、喉を通るとその余韻は心地よく残って広がる。
本場バンベルクのラオホが放つ強烈な燻製香よりも上品に仕上がっており、日本人好みのラオホビールと言える。スムースに飲める逸品である。
BBQやスモーク料理全般はもちろんのこと、豚肉や鮭、チーズやナッツなど「燻製すれば美味しい食材」を使った料理との相性は抜群である。

では、また季節が変わる頃に、、、

*第1回【ビールとボーダーシャツ】は、こちらで。
*第2回【ビールとベスト】は、こちらで。
*第3回【ビールとジャンパー】はこちらで。
*第4回【ビールとセーター】その1はこちらで。
*第5回【ビールとセーター】その2はこちらで。

Beer & Life Styleファッションペアリングマウンテンパーカー富士桜高原麦酒藤原ヒロユキ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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