[テイスティング,ビアバー,ブルワー]2023.1.4

【ビールを通して感じる韓国➁】釜山のブルワリー(1) カルメギブルーイング(GALMEGI BREWING)@南浦洞

*記事の最後に2024.9の追記があります

2010年代半ばから、韓国でも大手酒造メーカーのビールから一歩進んだ、小規模なブルワリーで作られるクラフトビールが人気を集めてきています。
特に韓国第2の都市・釜山はクラフトビールの醸造が盛んで、ブルワリーの直営店をはじめクラフトビールが飲めるお店が多くあります。これまでに私が訪問したことのある直営店だけでも、7社8店舗を思い出すことができます。
お店の数では首都ソウルよりも少ないはずですが、街の規模がソウルよりはコンパクトで回りやすく、お店も地下鉄や鉄道の駅から徒歩圏内にあるところがほとんど。旅行者でも行きやすいところが多いため、韓国でクラフトビール巡りをするのに私がまずお勧めしたい都市は釜山です。

今回からは釜山のクラフトビールについて、先月現地で久しぶりに見て確認してきたことを中心にご紹介したいと思います。

釜山の代表的なブルワリーは?

現在の釜山の代表的なクラフトビールのブルワリーとしては、まずは下記の3社を挙げておきます。
◎カルメギブルーイング(GALMEGI BREWING)
カルメギブルーイングは釜山在住のカナダ、アメリカ、スコットランド出身の外国人によって2014年にできた釜山で最初のクラフトビールのブルワリーです。釜山にクラフトビールを広め定着させるのに大きな役割を果たしてきました。
ライトな味からほろ苦い味のビールまでいろいろな味わいのビールが楽しめますが、ビールの種類を増やすよりは、「選択と集中」に重点を置いているブルワリーでもあります。
釜山に数店舗、直営店を展開しています。
◎ゴリラブルーイング(GORILLA BREWING)
ゴリラブルーイングは、イギリス人2人によって2015年に設立されたブルワリーです。ビールの味わい以外にビールを通じた多彩な楽しみにも目を向け、ビールヨガ、ランニング、コンサートなどのイベントで、ビール文化の経験の拡大にも貢献しています。
中心ラインナップ以外にも様々なビールが造られ、コラボビールにも積極的。そのため、タップルームでは、常に10種類以上にビールを味わうことができます。ちなみに、日本のFar Yeast Brewingも、2020年3月にゴリラブルーイングとのコラボビール「GREATEST NEIGHBOUR」を造っています。
慶尚北道の自社農場で、ビールの原料であるホップの自家栽培も行っています。
◎ワイルドウェーブブルーイング(WILD WAVE BREWING)
釜山の中心部からは少し離れた、サーフィンのメッカでもある松亭で2017年から醸造を開始したブルワリーです。
ペールエール、IPAなども造っていますが、醸造の中心はサワービール。ワインやウィスキーが入っていたオーク樽に野生の酵母や乳酸菌を入れ、熟成させています。

今回、カルメギブルーイングについてはいくつかある直営店の中から南浦店に行ってきました。

南浦洞エリアとは?

釜山の中心部にあり、釜山を代表する定番の観光エリアのひとつが南浦洞です。(「~洞」は、日本の「~町」にあたります。)地下鉄1号線でアクセスしやすく、KTX(韓国高速鉄道)の釜山駅からも近い場所です。
南浦洞の小高い丘にあるのが、龍頭山公園。その高台には高さ120メートルの展望タワー「釜山タワー(ダイヤモンドタワー)」がそびえ、エリアのランドマークとなっています。ここからは、昼は港町・釜山の景色を一望でき、夜は美しい夜景が見えます。


他にも繁華街の光復路、迷路のような通りで多種多様な店が並ぶ国際市場、韓国最大の水産市場のチャガルチ市場。屋台が並び地面には映画界の著名人のハンドプリンティングが埋め込まれているBIFF広場など、見所が揃っています。

カルメギブルーイング南浦店

カルメギブルーイング南浦店への訪問は4年ぶり2度目です。お店はビルの2階にあります。

営業中は、階段の入り口前にこんな表示が出て分かりやすいです…が、ここに日本語が書いてあっても、中のメニューはビール名の英語表記がある以外はすべて韓国語のみ。こういうことはよくあります。

店内はこじんまりとしていて、入り口近くはテーブル。窓際はカウンターになっています。

カルメギブルーイングのビールは5種類、他にゲストビールも同程度ありました。ゴリラブルーイングやワイルドウェーブブルーイングのビールも、種類にこだわらなければここでも飲むことができます。
サンプラー(200ml×4)は2タイプ。カルメギブルーイングのものだと15000ウォン(約1500円)、ゲストビールだと17000ウォン(約1700円)でした。
私は、まずカルメギブルーイングのサンプラーを選びました。
内容は決まっていて、➀BUSAN LAGER(アルコール度数4.5%・IBU15)、➁AMBER(アルコール度数5.0%・IBU15)、➂SEA BREAZE(コーゼ・アルコール度数4.5%・㏗3.5)、➃GALMEGI IPA(アルコール度6.5%・IBU30)です。もちろん、これらを単品で6000~7500ウォンで頼むこともできます。
コーゼも含めて、全体的に穏やかな味わい。どれも飲みやすくて美味しかったです。

料理メニューはすべて韓国語のみ。説明を読む努力をせずに値段だけみて「チーズとポテト」を頼んだら、見事にW揚げ物が出てきました…
韓国ではひとりで食事をする習慣がなかったせいか、ビールの場合もひとりで飲んでいる人は日本よりずっと少ないと感じます。そのためか、ちょっとした軽めの美味しいつまみなどなく、あるのはボリューミーなピザやハンバーガー、揚げ物類だけだと思った方がいいです。個人的には、これは韓国のタップルームの不満な点です。

ゲストビールの中に、ワイルドウェーブブルーイングの「BEST BITTER」を見つけたので、迷わず追加注文。ゲストビールはだいたい8000~9000ウォンでの提供で、こちらは8500ウォン(約850円)でした。
前述したとおり、ワイルドウェーブブルーイングは釜山の代表的なブルワリーのひとつですが、サワービールが中心。サワービールをそれほど飲みたいと思わず今回は直営店を訪問するのは見送る予定でいたので、ここでサワービール以外のビールが飲めてよかったです。
アルコール度数は3.8%と軽めですが、低アルコールとは思えない深い味わい、IBU20と程よい苦み。さすがだなあ…と思えた美味しいビールでした。

小さなタップルームAKITU

カルメギブルーイング南浦店から徒歩数分のビルに、以前に訪問したことのある別のブルワリーのタップルームもあります。アキツブルーイング(AKITU BREWING)の直営店です。


今回はここままでで、きちんと味わって飲める許容量に達していたので入店はしませんでしたが、一般的なビールに加え、サワービール、フルーティなビールなど個性的なビールも揃っていて、ここも南浦洞ではお勧めのお店です。
釜山の各地を歩き今回寂しかったのは、覚悟していたとはいえ今までにないぐらいあちこちで空き店舗が目立ち、好きだったお店の中にも営業が確認できないところがあったことです。ここも事前に情報がほぼなく、なくなってしまっているのでは…と心配していたので、以前と同じように営業している様子を外からでも感じることができて、とても嬉しかったです。

(2024.9追記)
2024.7に訪問したときには、残念ながらアキツブルーイングはなくなってしまっていました。

次回は、釜山の代表的なブルワリーのひとつ、ゴリラブルーイングをメインに取り上げたいと思います。

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2018)」BEER POST PUBLISHING
*10ウォンを約1円として換算しています

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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