Beer&Life Style Fashion編 ビールとダウンパーカーのペアリング
ビールのペアリングはフードだけではない。
どんな装い=ファッションで、どんなビールを飲むか……。
それが「ビールとファッションのペアリング」だ。
IVY、渋カジなんてのが青春だった世代には懐かしく、若い世代には新発見になる連載企画。
第9回目は【ビールとダウンパーカー】のペアリングだ。
【2月上旬】ダウンパーカーにダブルIPA
目次
ダウンとは?
1月下旬から2月初旬は一年で最も寒い時期だ。
そんな折に重宝するのがダウン素材である。
今やダウンパーカ、ダウンベストを持っていないという人のほうが少ないのではないかと思われる。
しかし、そもそも「ダウン」とはなにか?
「羽毛」と訳されているので「鳥の羽根の毛」と思われているが、鳥の羽根ならばなんでもダウンと呼んで良いというものではない。
グース(ガチョウ)やダック(カモまたはアヒル)といった水鳥の胸の毛がダウンである。
羽軸がなく放射線状に羽枝が広がりフワフワとしたボールのような形だ。
それに対して、私たちの羽根のイメージ(軸がある形のもの)はフェザーである。
ダウンは空気をはらみやすいので、軽くて保温効果が高い。
そのうえ、畳むととてもコンパクトになり、かさばらない。
ダウンパーカーの品質の見分けかたは?
ダウン製品の品質を見極めるひとつの目安がダウンとフェザーの割合である。
ダウン率の高い物のほうが良い。が、100%でなければダメだというものでもない。
ダウンは鳥の胸から少量しか採れない貴重で高価な素材なので、フェザーを混ぜて保温性と価格のバランスをとるのが一般的だ。
また、ジャケットの形を保つためには、偏りやすいダウンだけではなくフェザーも必要だという考えから、フェザーやスモールフェザー(腹の部分の毛。フェザーよりも羽軸が細い)をあえて混ぜるというメーカーもある。
品質を見極めるもうひとつの方法が「フィルパワー(FP)」である。
フィルパワーとは「かさ高性」とも言われ、ダウン30g(2013年にオンスからグラムに変更)のかさ高(体積)を表すものである。数字が大きいほど空気をはらんで温かいということだ。
例えば、700FPならば30gのダウンが700インチ立法に膨らむということである。
もちろん、保温性はジャケットの素材やデザインによっても変わるので、フィルパワーだけでは判断できないが、目安にはなる。
600以上あれば充分だと考えて良い。
ダウンパーカーをアウトドアっぽく着る。
ダウンウェアの起源は登山家ジョージ・イングル・フィンチが、1922年にオーダーメイドした「アイダーダウンコート」だと言われている。
しかし、これはあくまでも個人用の一点物だ。
一般的にダウンウェアが市販され始めたのはいつ? どのような製品なのだろうか?
それは、アメリカの「エディー・バウアー」社が1936年に発表した「スカイライナー」である。エディー・バウアー社の創業者エディー・バウアー氏は真冬に釣りに出かけ、低体温症になった。
この忌まわしき経験から生まれたのが「スカイライナー」という商品である。
極寒から身を守る! というコンセプトは、凍死寸前という経験をした者の強い思いに違いない。
エディー・バウアー氏に敬意を評して、アウトドアっぽく着こなしたい。
なお、エディー・バウアー社は2021年12月に日本市場から撤退したが、2023年の春夏シーズンから再び日本に上陸すると伝えられている。
エディー・バウアーファンには朗報である。
ダウンパーカーを街っぽく着る。
アウトドアでのダウンパーカーを一般化したのがエディー・バウアー社だとすると、街着として広めていったのはフランスの「モンクレール」社だと言える。
1952年に、テントやシェラフなどの登山用品メーカーとして誕生したモンクレールは、1968年にはフランスの冬季五輪チームの公式ウェアに採用されるなど、地位を確立していった。
1980年代に入るとパリのセレクトショップやファッション誌から注目され、2009年に販売が始まった「MAYA」のシャイニーナイロンの光沢が人気となった。
特に、アメリカのラップミュージシャンやNBAの選手がこぞって着だしたことで、クラブ系のファッション・アイテムにもなり、アウトドアウェアの領域を飛び出した感がある。
高額なブランド品としての人気も高く、ステイタスシンボルとしても利用されている。
個人的にはあまり興味を惹かれないが、好きな人にはたまらない世界観だろう。
手軽にウルトラライトダウン。
ダウンがアウトドアからタウンウェアに普及していったもうひとつのきっかけはユニクロのウルトラライトダウンではないだろうか?
ユニクロのウルトラライトダウンはフィルパワーが640〜750あるので充分温かい。
そのうえ、安く、コンパクトに収納できる。
さらに、ウルトラライトダウンは「ダウンをインナーに着ることができる」「部屋着にして良い」という概念を浸透させた。
セーターやカーディガン、トレーナーの感覚で着ることができるのだ。
復刻のロッキーマウンテンを西部劇っぽく着る。
最後は、個人的に思い入れのあるパーカーについて紹介させていただきたい。
それは、ロッキーマウンテン フェザーベッドのダウンパーカーだ。
ロッキーマウンテン フェザーベッド社は1960年代にアメリカワイオミング州ジャクソンホールで誕生した。
ワイオミング州は「カウボーイ・ステイツ」という別名があり、素晴らしいスキー場がいくつもあるウインタースポーツ天国でもある。
1933年には気温ー54.4℃を記録したこともある寒冷地だ。
この地で生まれたダウンウェアは、極寒の地に耐えられる機能はもちろん、襟がムートン、肩に革のヨークという”私好みのデザイン”が施されていた。
20代に愛用していたが、小さくなって(私が太って)しまい着れなくなった。
で、新しく購入しようとしたのだが、どこを探しても売っていないのである。
なんと……、1980年代にロッキーマウンテン フェザーベッド社は消滅していたのだ。
ところが、2005年に日本で復活した!
嬉しい限りである。
着こなしは「ヘイ、カウボーイ! 馬や牛はどこにいるんだ?」と冷やかされるぐらいウェスタン・ファッションでキメてみたい。
ダウンパーカーにダブルIPA
一年で最も寒いこの時期は、体調を崩しがちである。
寒いと体温が下がるため、抵抗力が弱まるうえに、喉の繊毛運動が弱くなり、ウイルスが侵入しやすくなる。
体を温めるには、ダウンパーカーとアルコール度数の高いビールが必要だ。
と言っても、高すぎるのはダウンの軽やかさに反するし、酔っ払いすぎると抵抗力が落ちて逆効果である。
高めといえども、7度から10度ぐらいが頃合いであろう。
さらに、ホップには抗菌作用がある。
カンロ飴で有名な株式会社カンロによると、喉の痛みを引き起こす「A群溶血レンサ球菌」に対する殺菌力は、研究に使用した123種類のハーブの中でホップが最強だったとのことだ。
この季節は【ダウンパーカー】を身に纏いながら【ホップが効いてアルコール度数が高めのビール=ダブルIPA(*1)】を飲み、寒さを乗り切りたい。
(*1:アメリカのブルワーズアソシエーションのビアスタイル・ガイドラインによるとダブルIPAのアルコール度数は7.6%〜10.6%)
箕面ブルワリー
1996年大阪府箕面市に設立。国際的な賞も多数受賞している老舗ブルワリー。
直営店の「WAREHOUSE」や系列店の「BEER BELLY」、毎年開かれる「創業感謝祭」には全国から多くのファンが訪れる。
他の醸造所からもリスペクトされていて、先代社長の故大下正司氏が他界した際には11社(箕面ビールを含む)で追悼ビールが醸造された。
定番ビールはもとより、地元の柚子を使った柚子ホ和イトなどの限定ビールも人気。
フーダー(木製タンク)で熟成するBATONシリーズも加わり、今後も目が離せない醸造所である。
https://www.minoh-beer.jp/
銘柄:箕面ビール W-IPA
ビアスタイル:ダブルIPA/インペリアルIPA
醸造所:エイ.ジェイ.アイ.ビア株式会社 箕面ブリュワリー
アルコール度数:9%
藤原ヒロユキ テイスティングレポート
しっかりとしたホップの苦味とそれを支えるモルトの甘味、アルコールの温かさも加わりバランス良いビールに仕上がっている。
ビーフ・ステーキやポークビーンズ、メキシコ料理やBBQ、ジビエ料理、すき焼きやうなぎの蒲焼といった和食、酢豚や火鍋など中華料理との相性が良い。
食後にチーズ、チョコレートや和菓子と一緒に楽しむのも洒落ている。
薪ストーブや焚き火を囲み、チビチビと飲むのも心地よい。
では、また季節が変わる頃に、、、
*第1回【ビールとボーダーシャツ】は、こちらで。
*第2回【ビールとベスト】は、こちらで。
*第3回【ビールとジャンパー】はこちらで。
*第4回【ビールとセーター】その1はこちらで。
*第5回【ビールとセーター】その2はこちらで。
*第6回【ビールとマウンテンパーカー】はこちらで。
*第7回【ビールとツイードジャケット】はこちらで。
*第8回【ビールとスキーウェア】はこちらで。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。