[テイスティング,ブルワー]2023.2.3

【ビールのある風景in岩手㉙】 ファーストバッチを飲んできた! 岩手大学クラフトビール部とベアレン醸造所との共同プロジェクト「つなぐビール」

大学に「クラフトビール部」があるとしたら…いったいどんな活動をしていると思いますか? 飲酒可能年齢は20歳からですが、クラフトビールを飲んで研究する? それとも?

岩手県盛岡市にある岩手大学には、実際に「クラフトビール部」があります。一昨年から、噂でその存在を耳にしたことも、大学構内の掲示を見たたこともありましたが、造り手側からの活動を行うことがが中心らしいことぐらいしか私もわかっていませんでした。

初めて大学構内で見かけた掲示(2021年11月撮影)

昨年末にベアレン醸造所との共同プロジェクト「つなぐビールプロジェクト」が発足し、先月には最初のビールも完成。地元の一般のビール好きにも、ようやくその活動が少しずつ認知されるようになってきました。

岩手大学とクラフトビール部

岩手大学は、1949年に岩手師範学校、岩手青年師範学校、盛岡農林専門学校、盛岡工業専門学校を統合して設置された国立大学です。有名な童話作家で詩人でもある宮沢賢治は、前身のひとつである盛岡高等農林学校の卒業生です。
盛岡市上田にある本部や主要キャンパスは盛岡駅から約2kmの位置にあり、車で約10分、徒歩でも30分かからず行くことができます。緑豊かな敷地内には農学部付属の植物園、昭和初期に建設された洋館の百年記念館などもあり、散策する方々の姿も見かけます。
私事ですが、岩手大学の図書館が入る建物には放送大学の学習センターが併設されているため、放送大学の学生でもある私は、年何回か岩手大学のキャンパスを通っています。

付属植物園側の門(2021年7月撮影)


百年記念館(2021年7月撮影)


北水の池のスイレンも見事です(2021年7月撮影)

また、地域連携、産学官連携に重点を置いており、産業や東日本大震災の復興支援のため三陸地方にも研究所などの施設があります。

そんな岩手大学に、農学部と経済学ゼミの学生を中心に一昨年発足したクラフトビール部。農業の高齢化や離農による農地の荒廃といった課題をビールを通して解消することを目的に、県内の遊休農地や休耕田を活用して、種まきから収穫までビールの原料となる二条大麦の栽培活動に取り組んでいます。

今年度も掲示を見かけました(2022年5月撮影)

つなぐビールプロジェクト

昨年12月、岩手大学クラフトビール部は、株式会社ベアレン醸造所と共同で、ビールを通して岩手県が抱える農業の課題に取り組んでいく「つなぐビールプロジェクト」を発足しました。
このプロジェクトは、岩手県内で拡大する遊休農地などを活用し、ビールの主原料である二条大麦の栽培拠点をつくり農地保全や農業の担い手不足解消を図っていくとともに、原料の生産(一次産業)からビールの醸造(二次産業)、販売(三次産業)へとつながる6次産業を確立し、農業所得向上やビール文化のさらなる醸成を目指すプロジェクトです。
発足に合わせて、このプロジェクト第1弾の製品として、ベアレン醸造所の直営店のひとつ「菜園マイクロブルワリーwith Kitchen」で、岩手県産の大麦麦芽とホップを使用し、初の「岩手県産原料100%ビール」の仕込みが行われました。
このビールは、1月中旬に約150リットルが完成し、菜園マイクロブルワリーwith Kitchenで「つなぐビール ファーストバッチ」として提供されました。

菜園マイクロブルワリーwith Kitchen

つなぐビール ファーストバッチ

つなぐビールファーストバッチは、陸前高田市の二条大麦と、遠野市と軽米町で収穫されたホップを使用。ピルスナータイプの県産の原料100%のビールです。
数日間で完売となったこのビール、実際にお店で飲んでみました。

ピルスナータイプなので飲み口はすっきり軽めですが、後味にしっかりと麦芽の甘みを感じます。飲み終わって次に何を飲もうか…と考えたときに、もう一杯これを飲みたい!と思わせてくれる飽きのこない味わい。私はその場ではお代わりはしなかったものの、これを飲みたくて何回かお店に通うことになりました。
店内で飲むだけでなくその場で缶に詰めてのテイクアウトも可能だったので、オリジナルラベルを貼った缶の持ち帰りもしました。

すでにファーストバッチは完売ですが、店内では次のビールも仕込み中です。2月後半には提供できる予定とのことなので、飲みたい方は是非その時期を狙ってみてくださいね。
ただし、東北の県庁所在地の中でも一番気温が低いことも多い盛岡の冬。1月前半は少なかった雪も、現在かなり積もっています。そして一度溶けかけた雪が凍ると、歩行困難なぐらい滑る道も出現します。この先状況がどうなるかわかりませんが、特に寒さと雪に慣れていない方は覚悟は必要です!

つなぐビールプロジェクトでは、この先、醸造過程で出る麦芽の搾りかすを栽培肥料に活用したり、県内各地に大麦の生産地を造ったりする考えもあるそうです。大麦の収穫量が増えたら、ビールの醸造量も増えることにもなりそうです。
今後生まれてくるかもしれない新たなつながりも含めて、つなぐビールプロジェクトのこれからの活動にも注目していきたいと思います。

所在地
・岩手大学:岩手県盛岡市上田3丁目18-8
・株式会社ベアレン醸造所:岩手県盛岡市北山1丁目3-31
・菜園マイクロブルワリーwith Kitchen:岩手県盛岡市菜園1丁目5-10 グリムハウス1F

*時期の記載がない写真は、すべて2023年1月に撮影しています

つなぐビールクラフトビール部ベアレン醸造所岩手岩手大学菜園マイクロブルワリー

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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