福岡のビールシーンを熱くする!新鋭ブルワリー「あおぞらブルワリー」を訪れて
「杉能舎ビール」「門司港レトロビール」「オークラブルワリー」「ブルーマスター」。これらは1990年代後半からあるブルワリーです。近年、福岡県では新規に立ち上がるブルワリーが増えており、2022年末時点で16となっています(きた産業調べ)。
2022年6月10日に醸造免許(発泡酒)が交付された「あおぞらブルワリー」もその1つ。醸造開始から数か月後に開催された「INTERNATIONAL BEER CUP 2022(以下、IBC2022)」では、ケグ部門「 Session India Pale Ale 」カテゴリーにて金賞を受賞している勢いのあるブルワリーです。
彼らはどんな思いでビールを造っているのでしょうか。現地を訪れて話を聞いてきました。
まずは馴染んでもらうため、飲みやすさを追求したビールを提供
「ブルワリーのある博多区店屋町は、オフィス街と観光地の中間地点にあります。全国的にみるとクラフトビールの認知度は高くなっていて、福岡にもブルワリーやビアパブは増えています。ただ、日常的なお酒にはなっていないと思っています。まずはクラフトビールに馴染んでもらうため、基本的なビアスタイルかつ親しみやすい味を意識したビールを造り提供しています」
ジューシーIPAやサワーエールといった個性的な味もクラフトビールの魅力の1つ。しかし、個性が強いがゆえに敬遠してしまう場合もあります。それとオーナーである森弘晴さんの料理と一緒に楽しんでほしい考えもあり、料理の味を邪魔しないで親しみやすい味にしていると醸造責任者の渡邊雄介さんは話します。
醸造開始から約半年。ビール造りのどんなところに魅力を感じているのでしょうか。
「酵母のお世話をするところですね。酵母が気持ち良く活動できる環境を整えて、自分がイメージした香りや味が実現できた時は嬉しいですね。それと黙々と作業するのが好きなので醸造所の掃除や樽洗浄なども苦じゃないです。」と渡邊さん。
渡邊さんと一緒にビール醸造を行っているアシスタントブルワー・ホール責任者の日野稔之さんは、「自分の手で作品(ビール)を生み出せるところでしょうか。自分たちが造ったビールの感想をお店に来てくださったお客様から直接聞けるのは幸せに感じています」とやりがいを話します。
その反面、税務署に提出する書類作成や品質向上に必要な知識・技術の獲得、店舗業務などでオープン前に考えていたことができていないと2人は言います。
「まだ、定番ビールをどんなペースで醸造すれば良いとか掴めていない現状もあります。挑戦してみたいビールもあるので限定ビールにも力を入れていきたいですね」と渡邊さん。日野さんも「SNSなど活用して宣伝活動に力を入れて、自分たちの色をアピールしていきたい」と語ります。
コロナ禍に出会ったブルワリーに魅せられてスタート
渡邊さんと日野さんを中心に運営している「あおぞらブルワリー」。始まりは新型コロナウイルスの影響がありました。
「きっかけは、オーナーご夫妻が経営しているホステルの近くにある『あすなろブルワリー』さんです。そこで飲んだビールやコミュニティの雰囲気の良さに惹かれたことでビール醸造に関心をもったと聞いています。その後、コロナ禍となり、同じ経営母体でブルワリーの1階にある『博多 酒佳蔵』の宴会場だった2階フロアがコロナ禍で利用する機会が減ってしまい、活用方法を考えていた時に『自分たちのビールを造り、ここでしか体験できない場を提供したい』という夢を実現するため、ブルワリーを始めることになりました」
店舗はカフェのような雰囲気で女性が1人でも気軽に訪れてビールを楽しめるのが特徴です。奥のカウンター席からは「醸造設備を眺めながらビールを飲めるところもお勧めポイントです」と日野さん。普段目にすることがない醸造設備を見てもらうため、発酵・貯酒タンクの位置を客席寄りに設置することでビール醸造を身近なものに感じてほしいと言います。
料理は、ピアパブ定番のおつまみの他、1階の「博多 酒佳蔵」の本格海鮮料理も注文する事ができます。また、逆に1階で「あおぞらブルワリー」のビールを注文する事も可能です。料理は定番メニューと限定メニューを提供しているので、飽きずに楽しめます。
ビールは、あえて泡を少なくして提供しています。これは「単純にいっぱい飲んで欲しいからです(笑)。泡の役割もありますが、香りを楽しんでもらいたい考えもあり、泡は少なめにしています」と渡邊さん。
競争よりも結束をして福岡のクラフトビールを盛り上げる!
オープンから半年。全国でブルワリーが増える中、これから県内にも新規ブルワリーが増えていくと渡邊さん。ライバルが多くなり、競争が激しくなることが予想されます。勝ち残るためにどんなことが必要と考えているのでしょうか。
「個人的にですが、競争よりも力を合わせて福岡のビールシーンを盛り上げる方が先だと思っています。昔からあるブルワリーさんは当然のこと、ここ数年で立ち上がったブルワリーさん、これからスタートするブルワリーさんと力を合わせて、もっと福岡のクラフトビールを知ってもらう必要があります。その上で、私たちのビールをもっと知ってもらい楽しんでほしいと考えています」
福岡県内のクラフトビールを周知する。そのためにはブルワリー同士が交流を深めて、積極的に意見交換をしてお互いが品質の良いビールを造っていくことが重要だと語ります。
最後にこれから挑戦してみたいことを聞いてみました。
「自分が好きなものをマッチングしたビールを造っていきたいですね」と渡邊さんが新しいビールへの取り組みを話せば、日野さんは「コーヒー業界のようにサードウェーブがクラフトビール業界でも実現できると思っています。ぜひ、私たちのビールから福岡、そして、九州のビールを知ってもらいたいです」と展望を語ります。
「あおぞらブルワリー」では、外販にも力を入れていきたいと言います。彼らのビールに関心のある方は問い合わせてみてください。
新規のブルワリーも増え、益々盛り上がりをみせそうな福岡のクラフトビール。これからどんな風に成長をしていくのか楽しみです。地元の方も福岡に旅行に行く人も渡邊さんと日野さんの造るビールを飲みに行ってみてください。
◆あおぞらブルワリー
住所:福岡県福岡市博多区店屋町4番28号We冷泉公園2F
電話:092-292-8600
営業時間:月~金 17:00~23:30(L.O.23:00)土 15:00~23:30(L.O.23:00)※フードメニューは17:30~22:00(L.O.)
定休日:日曜
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