「平和どぶろく兜町醸造所」新たな魅力のブルワリーパブ誕生
東京都中央区兜町は渋沢栄一が証券取引所や銀行を開き日本の金融の礎を築いた街です。和歌山県の平和酒造がこの兜町で「平和どぶろく兜町醸造所」をオープンさせました。
お店の新たな試みであるどぶろく造りと新店舗についてまとめました。
写真提供:平和酒造HP
平和酒造の新たな試み どぶろく造り
平和酒造は1928年に和歌山県で創業した酒造メーカーです。この歴史のある酒造のどぶろく造りのきっかけとなったのはクラフトビールでした。ビール醸造をする中で平和酒造株式会社の4代目・山本典正さんは飲み手を近くに感じられるお酒の素晴らしさに気づきます。
日本酒造りとは違う造り手と飲み手との距離の近さ。
既存のスタイルにとらわれず日本酒の魅力を届け、更に身近に感じてもらうために出来る事はないか、山本さんは考えました。そんな最中に東京への出店の話があり、平和酒造の挑戦が大きく前へと進み始めました。
開店するにあたり、ただ提供するだけではなく「造り立てのお酒をお客様に届ける」そんな想いの中、選んだお酒はどぶろくでした。
どぶろくとは日本酒と同じ原料の米、米麹、水を発酵したお酒で、濾していない日本酒というとイメージしやすいかもしれません。日本酒とは違ってもろみを濾さずに残す。もろみの成分である米や麹の旨味がそのまま含まれた栄養分の高いお酒です。
手軽に造られるため昔から家庭でも造られてきました。そのためか粗悪な密造酒のイメージがついていた時期もありましたが、2003年からの構造改革特区制度による規制緩和(※どぶろく特区)など、どぶろくを見直す機会もあり高品質などぶろくが各地で造られるようになりました。醸造工程がシンプルなだけに、様々なフレーバーを自由に造ることが出来るどぶろく。訪ねる度に新たな味わいを発見出来るでしょう。
※どぶろく特区とは地域の活性化のため、本来ある酒税による最低醸造量がなく製造できる制度。特区内で「どぶろく製造免許」を取得するためには、 (1)地域で農業を営んでいる(2)民宿やレストランを 経営している(3)自ら生産した米でどぶろくを製造できる という三つの要件を満たす必要がある。
どぶろくのブルワリーパブ
お酒を飲みに行く時、クラフトビール好きには居酒屋ではちょっと寂しく、日本酒好きにはクラフトビール店ではちょっと物足りない。ビール好きでも日本酒好きでも満足できるのが、このお店の魅力だと思います。
好みのお酒を探したかったら店員さんに相談すると良いでしょう。どぶろくの造り方や愉しみ方、ビールのスタイルについてなど、なんでも教えてくれます。
どぶろくは店内裏手で造られています。まさにどぶろくのブルワリーパブです。
フードのメニューはお酒と合わせるのが楽しみな押し鮨や漬物など和歌山県にちなんだフードが揃っています。
平和酒造のビール造り
平和酒造のビール部門、平和クラフトは2016年に始動。おすすめビールは「平和クラフトレッドエール」です。世界中からビールが集まるワールドビアカップで2022年金賞を受賞しました。冷やしてもまた、ゆっくりと少し温度を上げても楽しめます。
このビールは「アメリカンアンバーエール」というビアスタイルで、美しい赤みは焙煎されたカラメルモルトという麦芽を使用しているためです。麦芽が主役の優しく甘やかな味わいです。食事ではではカラメルモルトの色からペアリングを考えると日本食には欠かせない醤油や出汁に合わせても楽しめると思います。
麦芽感の強いビールだけでなく店内では他にも華やかな香りのヘイジーIPAやホップの苦味が楽しめるインディアンペールエール(IPA)など様々な種類のビールを楽しめます。
平和酒造が出店した兜町の近くには日本橋川という川があります。この川は徳川家康が整備した人工的に作られた運河で、古くからお酒の船着場として使用されていました。先述の山本さんはそこに大きな縁を感じたそうです。
日本橋、兜町辺りは現在、大きな再開発が行われています。歴史を持ちながら未来へと受け継いでいく姿勢。その街で新たな一歩を踏み出した「平和どぶろく兜町醸造所」
どぶろく、日本酒、ビールが繋いでいく未来へのバトン。この先も楽しみに見守り続けたいお店です。
写真提供:筆者(1枚目除く)
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