【BEER VISTA BREWERY】飲むシチュエーションから起草するビール造り、始めます。
「ビールは好きだけど、全然詳しくないんです。だから恥ずかしくてクラフトビールが好きって言えなくて。」
先日、とあるブルーパブでそんな話をする方がいた。
私の頭の中に「??」が浮かぶ。
確かに、ビールを知ることでその楽しみ方は何倍にも広がる。しかし、ビール好きを公言することに、ビールに詳しい必要はあるんだっけ?
そんなわけはない。クラフトビールは誰でも気軽に楽しめる飲み物なのだから。
2023年8月26日、「BEER VISTA BREWERY」は、自社醸造ビールのリリースを開始した。お店があるのは場所は森下駅と清澄白河駅のほぼ中間。下町情緒を残しつつも、お洒落で個性的なお店も増えている注目のエリアだ。
「“クラフトビールってよくわからない”という人たちにも、気兼ねなくクラフトビールを楽しんでもらいたい。」
そう話すのは「BEER VISTA BREWERY」醸造責任者の古里大輔さん。今回は自社醸造ビールをリリースしたばかりの「BEER VISTA BREWERY」を訪問。古里さんに話をうかがった。
目次
「BEER VISTA BREWERY」開業ストーリー
新規事業でブルワリー開業へ
―古里さんがクラフトビールを好きになったきっかけは?
元々、ホステルやゲストハウス、カフェやバーを運営する「株式会社Backpackers’ Japan」で、バーテンダーとしてサービスを担当していました。
クラフトビールの存在感が増してきて、お店でも扱う量が増えてきた10年ぐらい前に、まずは飲み手としてクラフトビールにハマりました。
―飲み手からブルワーを志したタイミングは?
バーテンダーとして、ビールの原材料や製造、その背景にあるストーリーを追うようになったんです。取引先としてブルワリーの見学をさせていただいたり、OEMでコラボビールを造るようにもなりました。そしたら「俺、こっちの方も好きかも」って思ったんです。
そんな時に世間はコロナ禍に突入して、飲食店がほぼ営業できない状態が続きました。
その間をインプットの時間だと割り切って、クラフトビールについて学んでいたら、自然とブルワリー事業を起ち上げたいと考えるようになったんです。
―転職ではなく、新規事業としてブルワリー開業を目指したと。
会社にとっても絶対にやった方がいい事業だと感じたんです。世界中から訪れるお客様と自社醸造のビールで乾杯、おもてなしできたら最高だなって。
幸いコロナ禍で時間はあったので、すぐに事業計画を作って会社に提案しました。
※「株式会社Backpackers’ Japan」では、覚悟を持って名乗りを上げたスタッフが、自らを責任者として新規事業を提案し、会社がその事業をバックアップするスタイルを採用している。
バーテンダーからブルワーへ
―提案はすんなり通りましたか?
自社の販売構成比でクラフトビールが占める割合とか、自社醸造に切り替えた場合の粗利とか、すでに有する販売網とか、一般的なマーケット志向の企画を練って提案したんです。会社にとってブルワリー事業をやるべき理由を挙げて。
そしたら「そんなことより、なんでやりたいの?」「どんなブルワリーにしたいの?」って予想外の反応が返ってきて(笑)
そこで、改めて自分の考えを深堀していたら、バーテンダーとしての経験に辿り着きました。
―バーテンダーとしての経験?
「私、ビールが飲めないんです。」というお客様にクラフトビールを提案して、「これ好きかも!」と喜んでくれたことが何度もありました。まさにビールの世界に足を踏み入れた瞬間に立ち会えたんです。だから“クラフトビールってよくわからない”という人たちにも、気兼ねなく楽しんでもらえるビールが造りたいと思ったんです。
―ビール造りはどこで学びましたか?
「ベアード・ブルーイング」、「Y.Y.G Brewery」にはOEMで仕込みを体験させていただきました。
ブルワリー立ち上げに際して見学させてもらったりアドバイスをいただいたのが「DD4D BREWING」、「2杯目のビール」、「KUNITACHI BREWERY」、「Passific Brewing」、「Barbaric WORKS」です。
特に「DD4D BREWING」にはお世話になりました。代表の山之内圭太さんとはかなり前からの付き合いで、ブルワリー起ち上げ前には、全ての工程をほぼ一人でやらせてもらえる機会もいただきました。
「BEER VISTA BREWERY」でも、一緒に仕込みをやって勉強させてもらってます。
「BEER VISTA BREWERY」が造るビール
基本に忠実にベーシックなスタイルを醸造
―最初にペールエール、アンバーエール、IPA(2種)を造ろうと思った理由は?
テクニックのあるブルワーでも、新しい設備でビールを造るときには癖を探る時間が必要だっていうじゃないですか。
だから、基礎を固めるって意味でも基本に忠実にベーシックなスタイルで、自分がどれだけキレイに造れるのかチェックしたかったんです。
それに「BEER VISTA BREWERY」の立ち位置は、クラフトビールカルチャーを広げていくポジションだと思っています。ビールへの入口。最初にベーシックなスタイルを選んだことで、クラフトビールの世界に足を踏み入れたぐらいの方にも楽しみやすいビールが造れたと思っています。
―飲んだお客様の反応はどうでしたか?
ありがたいことに、みんな美味しいと言ってくれています。
先日「Best BEER JAPAN」CEOのピーター・ローゼンバーグさんが来てくれて、一通り飲んだ上で「本当に初回ですか?」って言ってくれました。プロがそう言ってくれたのは素直に嬉しかったです。
―お客様のリアルな反応は嬉しいですね!
ブルワリー開業が決まって、事前にグッとくるだろうポイントは予想していました。
ひとつは、お店やブルワリーの内装が決まったとき。もうひとつは、醸造設備が設置されたときです。でも実際は、どちらも忙しくて感傷に浸っている時間はなかった。
実際に自社醸造ビールがリリースされた当日、何気なく満席の店内を撮影したんです。
そしたら「この人たち全員が、俺の造ったビールを飲んでいるんだ!」って気づいちゃって。そのときに感じた、これまで感じたことがない不思議な感覚は忘れません。
A Pint of Imagination
―今後造っていきたいビールについても教えてください。
クラフトビールって、その味を楽しむのと同時に、どんなシチュエーションで飲みたいかってのもあるじゃないですか。
わかりやすい例がキャンプです。現地について車を止めたら、何より先にまずは乾杯したくなりますよね?そんな時は、ゴクゴク飲める軽いビールが良く似合う。
BBQのときは肉の味にも負けない飲みごたえのあるビールがいいし、寝る人は寝て、起きてるメンバーで焚火を囲んでいるときはゆっくり時間をかけて飲みたいビールを選ぶみたいな。
コンセプトは「A Pint of Imagination」。
これからはビールが飲みたくなるシチュエーションからレシピを起草して、ビールを造りたいと思っています。
飲んでくれる方にも、このビールならどんなシチュエーションで飲みたいかを想像しながら飲んでほしい。そんな楽しみ方なら、クラフトビールの世界に入ってきたばかりの方でも存分に楽しめると思うんです。
「BEER VISTA BREWERY」店舗概要
所在地: 東京都江東区常盤2-13-17 トキワハイツ1F
通常営業時間:16:00〜22:00
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/beervista_brewery/
自社醸造ビールとゲストビールを合わせて10タップで提供。日常的に飲みやすいスタンダードなビールから、インパクトのある個性的なビールまで幅広く取り揃えている。
「BEER FRIENDS」をテーマにする料理は、旬の食材を使って、親しみやすさと驚きを両立。ジャンルにとらわれない自由な料理が人気。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。