【ふらっとブルーパブ巡り 都内編】区内初のブルワリーを訪ねて
酷暑の夏を乗り越えてなんとかこの時期までたどりつきました。
暑さを乗り越えたらやりたかった事。それは散歩がてらのブルーパブ巡りです。ブルーパブとはブルワリー(醸造所)が併設されているスタイルのビールパブの事を言います。
全国的にブルワリーは増加傾向で2021年12月末が559ヶ所、2022年12月末で667ヶ所というデータがあり667ヶ所中、東京都は91箇所で全国最多です。(キタ産業HPより)
涼しくなり出かけやすくなったこの時期に最近開業し区内初となった2つのブルーパブを訪ねました。
今回、両ブルワリーに同じ質問を投げかけてみました。それぞれのブルワリーの個性や違いを感じていただけたらと思います。
きちブルーイング
東京都葛飾区内初のブルワリーです。2022年4月に店舗をオープン。場所は京成本線の堀切菖蒲園前駅から徒歩6分程で堀切ラッキー通り商店街の中にあります。
代表兼ブルワー(醸造家)の羽鳥亮介(はとり りょうすけ)さんはオーストラリアで飲んだビールに影響を受け醸造家になる事を決意します。日本国内の伊豆や北千住で修行し開業に至りました。
Q &A (羽鳥さん回答)
1、ブルワリーのある街の良いところ
醸造所のある葛飾区の堀切菖蒲園駅周辺は下町情緒が色濃く残るエリアで、昔ながらの町中華や惣菜屋などが多くある住み良い町です。
駅名にもなっている”堀切菖蒲園”では、毎年6月初旬頃に葛飾菖蒲まつりが開催され約200種6000株の菖蒲の花が見頃を迎え、毎年多くの人が訪れています。
2、「区内初のブルワリー」と言われることについて感想
私が葛飾区出身という事もあり、自身のブルワリーが区内初になれた事が非常に喜ばしく、
また、地元の皆さんからもいつも応援をいただいていることも「葛飾区で唯一」であるという事が大きな理由だと感じています。
3、openから今までで一番の失敗、大変だった事(お店での事、醸造でもどちらでも)
失敗だと思えたことは無いのですが、大変だった事は山ほどあります。一つ目は物件探しです。
地元葛飾区で開業したいと物件探しをしていましたが、下町にある店舗物件は個人店が多く、醸造設備を置けるスペースが確保出来る場所がなかなか見つからず、今の物件に出会えるまでに一年以上も掛かりました。また、開業にあたりほとんどのことを代理店を通さず自分でやった事です。(お金が無いので!)
中国メーカーからの設備の購入及び搬入、酒造免許の申請、店内レイアウトやロゴ作成など。
時間も労力も掛かりましたが、コストを非常に安く抑えられた事に加え、醸造所開業に関する知識や経験を得る事ができました。
4、お店のおすすめポイントは何ですか?
お一人様ずつ100円チャージでお食事の持込みを自由とさせていただいております(飲料の持込みはNG)
駅周辺の惣菜や料飲店などでテイクアウトしたお食事などと一緒にビールをお楽しみいただけます。
5、これからの夢
醸造量を増やし、ご提供出来る場所も増やして行きたい考えています。
現在一人で醸造と店舗営業をしているのですが、今後は店をお願い出来る方をお雇いして私がもっと醸造に注力出来る体制を作り、醸造量を増やして行きたいです。イベント出店の他、区内に直営店を作るのが夢です!
OKEI BREWERY
こちらは東京都荒川区初のブルワリーです。日暮里駅から約徒歩6分。大きな道路から少し住宅地に入った場所にあります。元自動車整備工場を改装し2021年10月に開業しました。
ブルワーは松山陽介(まつやま ようすけ)さん。
元は調理人で飲食業一筋に歩んできました。ブルワリーの開業のため宇都宮マイクロブルワリーなどで修行しました。
店長は藤田 圭太(ふじた けいた)さん
松山さんと共にこのお店を運営しています。
Q&A(店長 藤田さんが回答)
1、 ブルワリーのある街の良いところ
自分達の街のビールがあるという事を喜びを感じてくださり、また応援して下さる方多い事。
2、「区内初のブルワリー」と言われることについて感想お客様はクラフトビールに馴染みの少ない地元住民がメインであまり『区内初』ということ知らない方が多いと思います。醸造開始当初はむしろこちらからアピールしていました。1.の答えにも重なりますが、荒川区唯一ということで町屋など少し離れた所から通って下さる方もいらっしゃったり、遠方の友人が来た時などに荒川区唯一のブルワリーという事で紹介して下さる方がいらっしゃる事を嬉しく思います。
3、openから今までで一番の失敗、大変だった事(お店での事、醸造でもどちらでも)
醸造設備が予定通り届かず、それに伴い醸造免許の取得も思うように進まず、中々醸造がスタートできなかった事。
4、お店のおすすめポイントは何ですか?
フレンチ出身の女性シェフの作る料理がビアバーとしては品数も多く美味しいと評判です。彼女の作る料理のファンでビールは得意ではないけど通って下さる方もいらっしゃいます。
料理が強みということもあり、イタリアンの料理人だった松山醸造長の造るビールもあらゆる料理に合わせやすいドリンカブルなものが多いです。本格的に醸造を初めて一年半程にも関わらず、昨年、今年とインターナショナルビアカップでも銅賞を受賞しています。
また、常時自家醸造ビールが8種前後繋がっておりますが、定番商品と呼べるものは現状で2種のみで色んなビールの醸造にチャレンジしており、来店する度にビールのラインナップが大きく変わっており楽しんで貰えているようにも感じます。
5、これからの夢
地元の方だけでなく、あらゆるお客様達に
『ここに来れば何か楽しい事がある』と通って貰える場所にして行きたいです。
地元のビール、自ビール?
ブルワリーが増える中でその数が過剰気味なのではと心配する声もあります。
国税庁のレポートでは酒類業界をめぐる状況として少子高齢化や消費者の低価格志向からビールの出荷量は年々減少していると報告しています。お酒を飲む人がより安いものへと流れていく傾向があるのは事実でしょう。(国税庁 酒レポート)
そして実際、クラフトビールは決して安いものではありません。
今回、私はブルワリーを巡りこれからのクラフトビールの生き残りのヒントを見つけた様な気がしました。それは「人との繋がり」です。
2つのブルワリーは東京都内で隣の区という近距離ですが、お客さんとそれぞれの地元の話題で盛り上がっていました。
きちブルーイングでは羽鳥さんがお客さんに近くの美味しい焼き肉店を教えていたり。OKEI BREWERYでは藤田さんが店の外を通った犬を散歩中の少年と話してみたり。その様子をみている店員さんもお客さんもほんとに嬉しそうです。まさに笑顔の空間。この土地に、このブルワリーが根付いてきているんだなと感じました。
それぞれの地域の違い、そこで作られる個性豊かなビール。
そこに訪れる人たちとの出会いを大切にしながら時間を重ねていくことで地元のビール、自分たちのビールという文化が根付いて行くのだろうと思いました。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。