Beer&Life Style Fashion編 ビールと帽子のペアリング
ビールのペアリングはフードだけではない。
どんな装い=ファッションで、どんなビールを飲むか……。
それが「ビールとファッションのペアリング」だ。
第13回目(特別編Vol.1)は【ビールと帽子】のペアリングをお楽しみいただきたい。
特別編Vol.1:帽子にノンアルコールビール
目次
帽子の似合わない人はいない
「私は帽子が似合わないので……」とおっしゃる方がいる。
それは単なる思い込みに過ぎない。
洒落者で有名だったボウシンスキー伯爵は「帽子の似合わない人はいない。似合わない帽子をかぶっている人がいるだけだ」という名言を残している。
あなたにも、似合う帽子は必ずある! と断言したい。
男性の冠帽率100%の時代
明治から昭和初期の街頭写真を見ると、多くの人が「帽子をかぶっている」ことに驚かされる。
男性の”冠帽率=帽子をかぶっている率”がほぼ100%の写真もある。
明治4年(1871年)に発布された断髪令を行き届かせるために「頭に直射日光が当たると体に悪い。ちょんまげのさかやき(髪を剃った部分)は特に悪い」と流布したため「髪の毛だけでは直射日光は防げない。だから帽子を被ろう」という人が増えたという説もある。
また、断髪令でちょんまげを切った男たちが(照れ臭かったのだろうか?)帽子をかぶり、広まっていったとも言われている。
どちらにしても、明治〜大正〜昭和初期は男性も帽子をかぶるのが一般的だった。
帽子の復権
戦後、男性の冠帽率が下がっていき、特に1960年代後半からは帽子をかぶっている男性が少なくなった。
これは、男性が髪型に気を配りだしたことと比例していると考えられる。
セットした自慢の髪型が乱れてしまうので、帽子は敬遠されていったのだ。
しかし、平成後期から令和になると、男女ともに冠帽率が高まってきたように感じる。
帽子そのものがファッションアイテムのひとつとしてとらえられるようになった。
帽子文化は復権しつつある。
まずはベースボールキャップから
ベースボールキャップは悪目立ちすることなく、自然とかぶりこなせる帽子だ。
今年ならば旬なロサンジェルス・ドジャースのキャップがおすすめである。
色もブルーでコーディネイトしやすい。
ドジャースの由来は?
ところで、ドジャースという名前の由来をご存知だろうか?
タイガースならば虎、カープならば鯉といった具合に、ドジャーにも意味がある。
Dodgeは「ひらりと身をかわす」という意味で、Dodgersは「ひらりと身をかわす人達」という意味である。
ちなみにドッジボールはこのドッジという言葉が語源だ。
ドッジボールはボールをぶつける遊びではなく身をかわす遊びなのだ。
では、なぜ、ロサンジェルス・ドジャースは「身をかわす人達」というニックネームなのか?
ドジャースはもともとニューヨークのブルックリンを本拠地としており、地域の住人は路面電車をひょいひょいとかわしながら車道を横断していたため”トロリー・ドジャー”と呼ばれ、それがそのままチーム名になったのだ。
今は本拠地をロサンゼルスに移しているので、身をかわしながらの横断は無謀な行為である。L.A.のハイウェイでは、身をかわす前に轢かれてしまうだろうから。
ベースボールキャップのツバは曲げる
最近、ベースボールキャップのツバを平らにしたままかぶっている人を見かける。
平らなツバの状態には「平ツバキャップ」という名前すらついているという。
ベースボールキャップのツバは日除けである。
今はナイトゲームがほとんどのプロ野球でも照明の灯を除ける必要がある。
特にフライを追う場合、重要だ。
後方のフライを追う場合、肩越しにボールを見るので、平たいツバでは斜めからの光を防ぎづらい。
さらに、視線を隠す目的もある。
ピッチャーが牽制球を投げたり、野手がベースに入ったりする際に有効だ。
もちろん逆もしかりで、ランナーも相手チームの選手に視線を悟られたくないのでヘルメットのツバは平くない。
ベースボールキャップのツバを曲げるか平たいままかぶるかは個人の自由だが、”野球帽”と考えるのであれば、曲げるべきだ。
個人的には、平らのままだとデコが突っ張って両サイドに隙間が空くので、曲げないとかぶりづらい。
ハンチングか? キャスケットか?
ベースボールキャップに続いて、一般的なのがハンチングキャップとキャスケットだ。
ハンチングとキャスケットは似ているが、「ハンチングは前の部分がフラットで全体的に小ぶり」なのに対して、「キャスケットはボリュームがあり大きめ」である。
ハンチングキャップは狩猟(Hunting)の際にかぶる帽子が由来だが、なぜハンティングではなく、ハンチングなのだろうか?
デズニーランド、プラッチックに通じる心地の悪さだが、ハンチングキャップはいまだにハンチングだ。
ハンチングキャップは、男っぽいイメージが強いが、女性がピシッとかぶりこなしている様は魅了的だ。
ツイードのジャケットと合わせてカントリー風にコーディネートしていきたい。
狩猟を趣味にしていた貴族階級がアウトドアでハンチングキャップをかぶっていたのに対して、キャスケットは芸術家、思想家、労働者階級のイメージが強い。
アメリカで新聞売りの少年がよくかぶっていたことからニュースボーイ・キャップと呼ばれた時代もあった。
ハンチングよりも丸みを帯びた可愛らしいシルエットなので、日本では女性に人気のある帽子だが、男性にもかぶってほしいアイテムだ。
芸術家っぽく見えるから不思議だ。
「パリを拠点におく造形作家です」と自己紹介されると信じてしまいかねない。
画家でなくてもベレー帽
ベレー帽も人気のある帽子だ。
しかし、男性がかぶると画家か軍人といった雰囲気になりがちだ。
ミリタリーに関しては、革命家チェ・ゲバラやアメリカの陸軍特殊部隊グリーンベレーのイメージだが、画家のイメージはいつからなのだろうか?
ベレー帽が画家のイメージに繋がった発端はルネッサンス期と言われている。
ラファエロもベレー帽をかぶった自画像を描いている。
その流れでベレー帽=絵描きのイメージが広まっていったと考えられる。
彼らがベレー帽をかぶっていた理由のひとつは、髪の毛が制作の邪魔にならないようにするためとのこと。
もうひとつは、自由にかぶれるファッション性からと言われている。
斜めにかぶったり深くかぶったりすることで個性を出しやすいので芸術家に好まれた。
日本では手塚治虫が有名だ。
しかし、画家でも軍人でなくとも、ベレー帽を臆することなくかぶってほしい。
まずはバケットハットから
バケットハットはハットの入門編と言っても良い。
バケットハットは、80〜90年代にヒップホップ系ミュージシャンのストリートファッションから市民権を得、今ではアウトドア系のファン層も掴んでいる。
クラッシャーという呼び名もあるように、脱いだあとはカバンをもちろんのことポケットに入れてしまうこともできるので便利である。
旅行にはもってこいのアイテムだ。
カジュアルな雰囲気なので、アウトドアっぽくまとめたファッションによく似合う。
ソフト帽はオーソドックスに
ソフトフェルト帽、略してソフト帽。
これは着崩してかぶりたくない。
ソフト帽をカッコよく着崩せるのはインディー・ジョーンズ時代のハリソン・フォードかキング・オブ・ポップスのマイケル・ジャクソンぐらいなので、まずはオーソドックスにかぶるところから始めたい。
具体的には、スーツやコートに合わせる。
誰になんと言われようが、気分はハンフリー・ボガートである。
この組み合わせは女性にもトライしてほしい。
ソフト+トレンチコートをピシッと着こなしている姿は実に素敵だ。
ウエスタンファッションもドレスアップ
テンガロンハットの由来は「10ガロンの水を汲むことができる帽子」と言われているが、ウソである。なぜならば、10ガロンは約38リットル。無理無理。
スペイン語の「ヒモを編む」を意味するgalonが語源とも言われるが、どっちにしろ本物のテンガロンハットは長い山高帽のようなデザインだ。日本人が思うシルエットとはかなり違う。
日本で「テンガロンハット」と呼ばれている「カウボーイハット」にも様々なデザインがあり、最近はツバがあまり跳ね上がっていない物が流行っている。
クラウンの凹みも縦に平行に二列の山を作るのが人気だ。
ステットソン社製など本格的なカウボーイハットに初めて触れた人は、その硬さに驚くことだろう。
ウールにビーバーの毛を混ぜたフェルト素材で、簡単に形が変わらないほどカチカチである。
なので、買うときはしっかりと納得できるデザインを選ぶべきだ。
もし、どうしてもツバの跳ね上げなどの角度を変えたいというのであれば、蒸気をあててシェイプすることができる。
蒸気をあてるとへなぁ〜と柔らかくなり、冷えると硬くなるので、やかんの口から蒸気を出したり蒸気の出るアイロンを利用して、自分好みに変えることができる。
デニムジャケットやムートンのランチコートに合わせるのが定番だが、リボンタイに襟付きベスト、後ろが深く切れ上がった乗馬用コートとドレスアップするのも面白い。
しかし、ジーンズにカウボーイブーツは譲れないところだ。
ソフト帽やカウボーイハットはもとより、「ハットには羽飾りを付ける」のがおすすめだ。
価格も1,000円前後と手軽である。
羽飾りがあるだけで、ググッと洒落っ気が増す。
コスプレでいいんじゃな〜い?
シャーロック・ホームズのトレードマークとも言える「ディアストーカーハット」、日本では「鹿撃ち帽」と呼ばれている。
イギリスのスポーツハンティング「ディアストーキング」の際に使用されていたのが名前の由来だ。
前のツバは日除け、後ろのツバは枝などから首を守るために付けられていて、通常は跳ね上げて頭頂部で結ぶようになっている耳あては防寒に利用される。
ディアストーカーハットを一躍有名にしたのは名探偵シャーロック・ホームズだ。
コナン・ドイルが生み出した架空の人物だが、ロンドンにその名もずばり「シャーロック・ホームズ」というパブがあり、2階にはホームズの書斎も再現されているので、ロンドンに行ったときには是非とも訪れてほしい。エンバンク駅のすぐ近くの便利な場所だ。ビールはもちろんのことフィッシュ&チップスも美味しい。
ディアストーカーもかぶるのであれば、「コスプレ?」と言われるぐらいにキメこんでみたい。照れは禁物だ。
帽子にはノンアルコールビール
基本的に、帽子は屋外でかぶるものだ。
ファッションの一部と考える場合(特に女性は)、屋内でかぶっていてもマナー違反ではないが、やはり「帽子は屋外でかぶる物」というのが一般的だ。
また、ハンティング、ウエスタンホースバックライディング、ディアストーキングなど、危険の伴うアウトドアスポーツにまつわるものも多い。
酔っ払っている場合ではない。
というわけで、ペアリングするビールはノンアルコールビールである。
以前、Beer&Life Style Fashionの第8回【スキーウェア編】でもノンアルコールビールを紹介したが、もはやノンアルコールビールは「ビールの代替品」や「我慢して飲むもの」ではないと言い切りたい。
健康問題やアルハラ、多様性の容認などの観点からもノンアルコールビールは今後ますます人気が高まると考えられている。
キリン 零ICHI(ゼロイチ)
ノンアルコールビールのほとんどが「アルコール度数1%未満(酒税法上のノンアルコールビール)」に過ぎなかった2009年、キリンビールから販売された「キリンフリー」はアルコール度数0%の「完全なノンアルコールビール」だった。
その背景には、2007年の道交法改正によって飲酒運転の罰則が強化されたことにあったのだが、休肝日や妊娠授乳時にも飲めるノンアルコール飲料として人気が高まった。
その後、ホップの品種を変えるなど幾度かのリニューアルを経て2017年まで販売されたが、現在はキリンの一番搾りと同じ製法により造られている「キリン 零ICHI(ゼロイチ)」が後継商品となっている。
藤原ヒロユキ テイスティングレポート
開栓とともにかぐわしいホップの香りを感じる。
グラスに注ぐと、クリーンで黄金色のビールに純白の泡がたち、ヘッドが美しく泡保ちも良い。
香料臭や発酵前の麦汁のような甘ったるさ、雑味をマスキングしようとする過度な苦味といったものが全く無い。
ホップのフレーバーと苦味もほどよく心地よいく、スムーズな喉通りが楽しめる。
チキンソテー、ピザ、シーザーサラダ、焼き鳥、卵焼き、餃子、八宝菜など和洋中ほとんどの料理に合う。
個人的に、今もっとも気に入っているビール(?)だ。
サブスクで箱買いしているが、ランチの時にも飲むので、24缶入りの箱が月に2箱では足りなくなることがしばしばある。
それでは、Cheers!
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。