[イベント,コラム]2024.2.20

北大生のビア活 ~ビールサークル、オリジナル・ブランドビールからビアフェスまで

北海道大学の農学部といえば、かのクラーク博士が開校した札幌農学校から始まった「北大」の創始学部です。漫画『もやしもん』は農大が舞台となっていたように、農学と醸造は近い世界ですが、残念ながら北大には醸造学部がありません。
しかし、農学部農業経済学科の宮地帝輔さんが中心となりビールのサークルが昨年誕生し、1年目ながら活発に活動しています。サークルは2024年3月にビールフェスティバルを主催します。また宮地さんは酒類販売免許を取得してオリジナル・ビールの販売を始めています。北の大地で大志を抱いて積極的に活動する「ビール北大生」の動向をレポートします。

北大ビールサークル「Be Are kids」

宮地さんがビールの美味しさに目覚めたのは、今から3年ほど前、札幌のビアパブで飲んだスタウトでした。苦みが柔らかく口当たりがやさしく、コーヒーのような風味。「こんなビールがあるんだ」と衝撃を受け、次第にビールにのめり込んでいきます。

直後の夏休みを利用し上富良野町のホップ農家でアルバイト。さらに思い切って2022年春から1年間休学し、農業研修生としてオランダへ渡ります。渡航先のオランダを拠点に、ベルギーやドイツの醸造所を巡り、300種類以上のビールを体験します。

宮地帝輔さん

ドイツのプランク醸造所も訪問

札幌で復学すると、ビールが活動目的のサークル「Be Are kids」を立ち上げます。

その動機について、宮地さんはこのように説明してくれました。

「ヨーロッパの素晴らしいビール文化を経験しましたが、一方で日本はどのようなビール文化があるのかを改めて学びたいという気持ちがありました。そしてビールが大好きな学生たちを集めて、皆で学んだ方が面白いのではないかと思ったのがきっかけです。と言いつつ、友だちがみんな就職したので飲み友達がほしかったのもありますけどね(笑)」

ただし、として「ビールを学ぶだけでなく、多様な味わいのビールから日本独自のビール文化を作っていきたいという思いもあります」と、将来のビジョンも大きく描いています。

サークルの活動としては、Zoomでの勉強会、市内のブルワリーの見学、ビールイベントのボランティア、ビールツアーのガイド補佐(こちらの記事参照)など活動は多岐にわたります。(以下の写真は、すべて宮地さんからの提供によります)

醸造所見学

Zoom勉強会

ビールを活動テーマに置いた大学のサークルはこれが初めてのケースではないそうです。岩手大学にあるクラフトビール部との交流会も実施しました。

北大ビールサークル「Be Are kids」

「Be Are kids」は、3月に本格的なビールイベント「Hokkaido Craft Beer Factory 2024」も開催します。詳細は後述いたします。

オリジナルブランドビール「パイオビア」

また、宮地さんは「Be Are Kids」の活動とは別に「パイオビア」というブランドを立ち上げ、「未来開拓倶楽部ビール」を販売しています。

北大には「未来開拓倶楽部」という学生団体があり、教授や外部の実業家とさまざまな活動を行っています。すでにビールサークルを立ち上げていた宮地さんがこの倶楽部に入会すると、顧問の先生から「オリジナルのビール造りをしてはどうか」と提案を受けます。もちろんビール造りは無料ではできないため、企画書作りやビールゼミから始めて倶楽部内で出資を募り、資金を集めることに成功しました。

仕込を札幌市内のマイクロブルワリー澄川麦酒に委託し、酒販免許も取得。2023年夏にセッションIPAを発売します。3種類のホップを使用し、桃、オレンジ、ライムのような香りのビールでした。

ビールラベルは、倶楽部内の別グループに依頼し、生成AIから創り出しました。

2023年冬には「レッドIPA」を発売。現在、第3弾のビール「バルティック・ポーター」を樽のみで販売中です。

「記憶に残る特別なビールを造っていき、クラフトビールをより身近な存在になるきっかけを作りたい、と考えています」と宮地さんは意気込みを語ります。

■パイオビア公式ページ:https://www.piobeer.com/

Hokkaido Craft Beer Factory 2024 開催

ビールサークル「Be Are kids」が実行委員となるビールフェスティバルが、来る3月3日(日)に札幌で開催されます。

Hokkaido Craft Beer Factory 2024

日程:2024年3月3日(日)
開場 11:00  閉場20:00
会場:サッポロファクトリー (北海道)
北海道札幌市中央区北2条東4丁目1-2

北海道内から7社のクラフトビールを選定。ビールを造る醸造士(ブルワー)ご本人を実際に招聘し、造り手の「顔」を見せることで、クラフト(職人)ビールの面白さ、魅力を伝えるイベントです。

会場のサッポロファクトリーは、サッポロビールの発祥地で、日本で初めて本格的なラガービールの製造が行われた場所。その「聖地」で職人が丹精込めて造ったクラフトビールを楽しみ、北海道のビール文化の醸成を目指すイベントとして開催されます。

登場ブルワリー:H.M.Works ozigi 函館麦酒製造所(函館市)、IWANAI BREWERY(岩内町)、Black Fox Beer(倶知安町)、Lake Toya Beer(洞爺湖町)、NAKAFURANO BREWERY(中富良野町)、士別サムライブルワリー(士別市)、美深白樺ブルワリー(美深町)

スペシャルゲスト:重富寛(広島) 札幌開拓使麦酒(札幌市)をサービング

まだ雪の解け切らない札幌ですが、初春のビアフェスでの若人の活躍にご期待ください。

 

イベント詳細

・イベント公式ページ:https://hcbfactory2024.crayonsite.com/

・チケットサイト:https://t.livepocket.jp/e/hcbf2024

・Instagram https://www.instagram.com/beer_students_hokkaido

・Facebook https://www.facebook.com/hcbf.official.0303

Be Are kidsビアフェス北海道北海道大学札幌重富寛

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

坂巻 紀久雄

ビアジャーナリスト

東京都葛飾区出身。1998年ビアテイスターを取得。2000年に北海道札幌市へ移住。ビール専門店勤務で経験を積み、2013年にビールとモルトウイスキーの専門店「Maltheads(モルトヘッズ)」を開店。
https://maltheads.net/

店は「クラフトビールのお店」でも「世界のビールのお店」でもなく、「ビールの広い世界を実感できる店」をコンセプトとしている。

ビアジャーナリストとしては、北海道の記事を中心に執筆しているが、国内外を問わずビール全般を追っている。

札幌は、日本のビールの発祥地のひとつ。さらに「ビールの都」ドイツ・ミュンヘンと「ビール天国」アメリカ・オレゴン州ポートランドと姉妹都市でもある。そこを「日本のビールの首都」として盛り立てるべく奮闘中。

ビア検(日本ビール検定)1級(2013-14 初の2年連続合格者・2022年3度目の合格)/クラフトビアアソシエーション(CBA)認定ビアテイスター/ウイスキー検定2級

「サッポロ・クラフト・ビア・フォレスト」実行委員
http://www.sapporo-craft-beer-forest.com/

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