[コラム,テイスティング]2024.3.1

[知られざるベルギーの絶品郷土料理タルタル・ジョットとビールのペアリング] ①現地で聞いたマル秘レシピ!

ヨーロッパ屈指の美食の国として知られるベルギーの名物として、チョコレート、ワッフル、ムール・フリット、カルボナード・フラマンド(牛肉のビール煮込み)などが挙げられますが、各地方の一般家庭では、日本ではほとんど知られていない多種多様な郷土料理が作られています!今回は、ワロン地域の町ニヴェルの隠れた絶品郷土料理「Tarte al Djote, タルタル・ジョット」のレシピを紹介したいと思います。

ニヴェルについて

ニヴェルは、ワロン地域のブラバン・ワロン州に位置する人口約2万6000人程の小さな町です。町の名物としては、これから紹介する郷土料理のタルタル・ジョットのほか、今年で120回目の開催を迎えた伝統的な祭りであるカーニバルが挙げられます。カーニバルでは、「Gille, ジル」という伝統衣装を身にまとった人々が、夏を象徴する果物であるオレンジを沿道の参加者達に投げ渡しつつ、町を練り歩きます。時には勢いよくオレンジが投げられるため、少々危険が伴う祭りでもありますが、多くの人々が寒さが厳しい冬の終わりと暖かな春の訪れを祝い、毎年大盛況で終わりを迎えます!

2024年のカーニバルの様子①

2024年のカーニバルの様子②

ニヴェルの郷土料理タルタル・ジョットとは?

タルタル・ジョットは、町の特産品である「Boulette de Nivelles, ブレット・ド・ニヴェル(和訳 : ニヴェルの玉)」という牛乳で作られたフレッシュタイプのチーズと、スイスチャード(フダンソウ)、パセリをふんだんに使用した濃厚な味わいが特徴の郷土料理です。16世紀頃の文献にもそのレシピが記されているほどの長い歴史を持ちます!1980年には、その歴史と伝統的なレシピを守るため、さらには町の特産品としての知名度を広めるために「Confrérîye dèl Târte al Djote, タルタル・ジョット協会」が設立されました。

一人前に切り分けたタルタル・ジョット。お好みでバターを加えていただくのが現地流。

ブレット・ド・ニヴェル。発酵した牛乳を使用するため、その味わいや香りの芳醇さは白カビやウォッシュタイプのチーズに近い。

現地在住者にマル秘レシピを聞いてみた!

日本語ではほとんどその情報がないベルギーの隠れた郷土料理タルタル・ジョットの超貴重なレシピを、ベルギーの郷土料理や食文化に詳しいニヴェル在住の料理研究家であるSAYAさんに聞きました!

[SAYAのプロフィール]

料理研究家。福岡県出身。ベルギー人男性との婚約を機にベルギーへ移住。元々食べることは大好きであったが、学生時代に経験したルーヴァン・カトリック大学(UCL)への1年間の交換留学をきっかけに、西洋料理、さらには日本料理の奥深さを知り、料理研究家を志す。大学卒業後は、日本とベルギーの日本食レストランにてアシスタントシェフを担当。現在はベルギーでの飲食店開業を目指し、ブリュッセルにある職業訓練センターの調理科に在籍し、西洋料理全般および外食産業マーケティング、店舗マネジメントについて学んでいる。自身のSNSやYouTubeチャンネルでは、ベルギーと日本の衣食住の紹介や双方の比較、さらには両国の郷土料理のレシピ解説などの発信活動を行っている。

【SNSアカウント】Instagram : kot_saya 【YouTubeチャンネル】Saya en Belgique

タルタル・ジョットのレシピ

調理時間 : 約2時間

材料 (一枚分)

[生地]

・ドライイースト  5g

・牛乳  18ml

・薄力粉 100g

・無塩バター 30g

・溶き卵 30g

・塩 3g

[具材]

・玉ねぎ 15g

・スイスチャード(フダンソウ) 20g ※チンゲンサイ、またはほうれん草や小松菜でも代用可。

・パセリ(生) 10g

・有塩バター 45g

・ブレット・ド・ニヴェル 200g ※外皮を取り除いたカマンベール・ド・ノルマンディ、ブリー・ド・モー、モンドールなどの芳醇な香りと豊富な旨味を持つほかのチーズでも代用可。

・溶き卵 45g

作り方

① 予備発酵のためにドライイーストと牛乳を混ぜて10分間置いておく。

② ボウルに薄力粉、無塩バター、溶き卵、塩、①を入れる。バターは指で押し潰しながら加える。

③ 粉っぽさがなくなるまで全体を捏ねる。

④さらに10分間捏ねる。

⑤ 生地を丸め、清潔なタオルを上にかけて約2倍の大きさに膨らむまで寝かせる。※室温が20°前後の場合、発酵の目安は約1時間。

⑥ 生地を寝かせてる間にタルトの具材を作る。玉ねぎ、スイスチャード、パセリを微塵切りにする。

⑦有塩バターを耐熱容器に入れて電子レンジで溶かし、その中にブレット・ド・ニヴェルを手でほぐしながら加えて混ぜ合わせる。

⑧ボウルに⑥、⑦、溶き卵を加え、全体をよく混ぜ合わせる。

⑨ 寝かせていた⑤を薄さ3~4mm に伸ばし、クッキングシートを敷いたタルト型に敷き詰める。

⑩タルト生地の上に⑧を流し入れる。

⑪180°のオーブンで約15分焼き上げる。全体に焼色が付いたら完成!

次回の記事では、タルタル・ジョットとベルギーおよび日本のビールとのペアリングについて考察します。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

安彦良紀 (Kazuki Abiko)

ビアジャーナリスト/ JSA認定ワインエキスパート/ WSET Level3 Award in Wines

1996年生まれ、福島県出身。ブリュッセル自由大学(ULB) 博士課程在学中。2023年度日本ビアジャーナリスト協会新人賞受賞。
インスタグラム@bierebelgequejaime114でも、飲んだクラフトビールの記録およびベルギーや他のヨーロッパ諸国で訪れたバーや醸造所の情報を発信中。

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