[コラム,ビアバー,ブルワー]2024.5.30

【ビールを通じて感じる韓国㉓】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(9) プレイグラウンドブルワリー(PLAYGROUND BREWERY)の新しいタップルームでビール!@高陽市

好きだった場所にあったお店が閉店してしまうのは、とても残念なことです。でも完全な閉店ではなく移転ならば、残念な気持ちだけでなく新しいお店に対しての期待もあり、複雑な心境になる…そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
私が最近そんな経験をしたのは、韓国のタップルームの閉店と移転。下記の記事でも紹介した、プレイグラウンドブルワリー(PLAYGROUNG BREWERY)の敷地内にあったタップルームがなくなってしまうというニュースが、昨年秋に飛び込んできました。

【ビールを通して感じる韓国⑦】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(3) 時間をかけても行きたい!プレイグラウンドブルワリー(PLAYGROUNG BREWERY)@高陽市(2023.5.30)

幸い、1か月後に別の場所にタップルームを開店するとのことで、少しほっとはしました。それでも交通の便が悪い場所に苦労して通い続けたことや、ブルワリーの裏側に広がる田畑の光景など…今までの思い出がいろいろあっただけに、残念な気持ちのほうが強かったのが正直なところでした。
そんな複雑な思いを抱えつつもやはり気になっていた新しいタップルーム。先月ようやく訪問することができました。

プレイグラウンドブルワリーと高曜市

プレイグラウンドブルワリー

プレイグラウンドブルワリーは、2015年に高陽市一山西区に設立されたブルワリーです。
プレイグラウンド(遊び場)という名前には、「ビールをひと口飲むだけで私たち皆が子どもの頃に感じていた幸せな気分に戻ることができる」という希望が込められています。
現在のキャッチフレーズは、”Drink Better, Play Better”。常に誠実に信頼性の高い美味しいビールを造り、飲み手がビールの体験を通じて新しい遊びを見つけることができるように…いう意味だそうです。

高陽市

プレイグラウンドブルワリーのある高陽市は、ソウル特別市の北西に隣接。ソウルの玄関口でもある金浦空港から見ると、漢江を挟んだ北側になります。
かつては農村地帯でしたが、最近では都市化が進み、ソウル近郊のベッドタウンとしての性格も非常に強くなっています。

新しいタップルームへ行くには…

新しいプレイグラウンドブルワリーのタップルームは、以前の場所から5キロ程度離れた場所。地下鉄3号線の終点のひとつ手前の注葉(주엽・Juyeop・チュヨッ)駅から徒歩圏内です。注葉駅までは、ソウル中心部からだと1時間ほどかかります。
注葉駅の2番出口あるいは3番出口から外へ出ると、一山湖公園(일산호수공원・イルサンホスコンウォン)へ向かう遊歩道へ出ます。

団地に間にあるその遊歩道を、一山湖公園方面へ歩いて行きます。

立体交差で大きな通りを超えて、下ったところが一山湖公園の入り口になります。


右手には水族館のアクアプラネット、ウォータースライダーやスノーパークなどが楽しめる娯楽施設のOne Mountなどが見えるのでその方向へ向かいます。

右手にお城の外観のショッピングモールを眺めながら進み、One Mountの1階の通路を抜けると広場に出ます。


広場に面して、新しいプレイグラウンドブルワリーのタップルームがあります。ここまで駅から徒歩15分ぐらいです。

新しいタップルームへ行ってみた

1回目(4月10日)

初めて新しいタップルームに向かったのは4月10日の水曜日。日本から金浦空港に到着して、そのまま向かいました。(この方法については、後半で説明します。)
地下鉄3号線の注葉駅を出ると、遊歩道にある桜がまだ満開で迎えてくれました。

駅から一山湖公園へ向かう遊歩道に思ったより人が多く、到着した公園は家族連れがいっぱい。「平日なのにこんな賑やかなのは何だかおかしい…」と思いつつ、新しいタップルームがあると思われるほうへ向かい、迷うことなく無事に到着しました。

到着はお昼過ぎ。以前のタップルームは醸造所内にあり知っている人が目指して来る場所でしたが、今度の場所は通りがかりでメニューなどを見て利用している人も多い様子。店内は20席程度ありましたが、2/3以上席が埋まっていました。今までの、静かでゆったりとした感じではなくなってしまったのを残念に思いました。
それでも、ビールは変わっていません! 気を取り直して、まずはMadam Raspberry Ale(アルコール分5.6%・IBU10)を注文。7700ウォン(約850円)でした。ラズベリーが使われていますが、それほどフルーツ感は強くなく穏やかな味わいのビールで、私がこのブルワリーで一番のお気に入りのビールです。

合わせて頼んだのが、少し軽めの食事ということでパッシーイウ。中華料理の影響を受けたタイの麺料理です。15900ウォン(約1750円)は高く感じますが、韓国のタップルームの料理の値段としては、お手頃なほうだと思います。

続いて頼んだのは、Joker Pale Ale。アルコール分5.6%、IBU28で、6500ウォン(約710円)でした。柑橘系の香りが豊かで、飲んでみるといい意味で軽やかです。

最後は、アルコール分5.7%、IBU25のWitch Chocolate Stout。7700ウォン(約850円)でした。チョコレートスタウトのわりには少し軽やかでした。

新しいタップルームを無事見つけることができて、以前のように美味しいビールが飲めたことはとにかく嬉しかったです…が、田畑の中からアミューズメントパークの一角への移転は、この日人が多かったことも加わり、まったく雰囲気が変わってしまい残念に感じてしまいました。ただ、お店を営業していく立場になれば、人がいない静かな場所から人が集まる場所への移転というのはやむを得ないという思いもありました。
余談ですが、この日水曜日だったのにどこも人が多かったのは、4年に一度の韓国総選挙の日で祝日になっていたからでした。日本だと選挙=日曜日なので、選挙のある平日を祝日にするという感覚がなく、途中まで気が付いていませんでした。

2回目(4月16日)

移転を残念に感じてしまったこともあり、最初タップルームへの訪問はこの1回で終わりのつもりでした。
でも時が経つにつれ、普通の平日の昼間ならばそれなりのまったり感が味わえるのではないかと思いなおし、6日後のホテルの移動の途中に再訪問してみました。今度は本当の平日。駅周辺を歩く人も公園にいる人もまばらでした。
前回と同じような時間にタップルームに着きましたが、先客は一組だけ。店員さんにも余裕があり、お店に入るとまず私が運んできたスーツケースを運ぶのを手伝ってくれそうに。(大丈夫だったので、丁寧にお断りしましたが…)
前回は混んでいて言い出せなかった店内の撮影も、快くOKしてもらえました。



以前と同じ平日のランチセットのメニューもありました。ビールも料理が3種類の中から1種類選べて、15500ウォン(約1700円)と通常の料理の値段を考えるとお得です。

私はLife Best Lager(アルコール分4.8%・IBU18)とトマトチーズパスタを選びました。

続いて頼んだビールは、季節限定ビールのRed Velvet Stout。アルコール分5.5%、IBU25で7900ウォン(約870円)でした。フルーツスタウトとのことでしたが、甘すぎず、重すぎず、絶妙なバランスの取れたビールでした。

Red Velvet Stoutを楽しんでいると、「新しく提供し始めたビールだけれど…」とサービスでビールの試飲を持ってきてくれました。アルコール分が11.2%あるバーボンバレルエイジドインペリアルスタウトとのこと。私は高アルコールのビールはあまり得意ではありませんが、ありがたくいただき時間をかけてゆっくりと味わいました。

以前と立地はがらりと変わり、それによって客層も変化していたのは確かです。でもビールは美味しくて店員さんは優しいというのは変わっていませんでした。そして私にとっても大好きなブルワリーであることも変わらない…そう思えたので、私はこれからもソウルへ来たら、時間をかけてもここへ通うことになりそうです。

一山湖公園を歩く

2回目に行ったときは時間に余裕があったので、帰りに東洋最大規模の人工湖公園という一山湖公園を少し歩いてみました。ここは宅地開発事業の一環で造成された公園で、1996年に開園。面積が30万坪にも及ぶ東洋でも最大級の人工湖水公園です。
公園の中心に人工の淡水湖が広がり、湖の周りには、自然豊かな4.7kmのサイクリングロードや5.8kmの散策路が整備されていて、多様な施設と合わせて湖を中心としたレクリエーション空間となっています。また、多くのドラマのロケ地にもなっているそうです。


100種類・約2万本のバラが栽培されているというバラ園はシーズンに向けて整備中で入れませんでしたが、その代わり湖畔のチューリップがちょうど見頃で楽しめました。

この日歩いたのは公園内の1/5程度。公園を出て隣駅の鼎鉢山(정발산・Jeongbalsan・チョンバルサン)駅までを含めると3km弱になりました。飲んだあとで歩くのも悪くありませんが、歩いてから飲んだほうがいいかもしれません…

金浦空港から西海線に乗ってみた

金浦空港から漢江を挟んで北側にある高陽市。今までは金浦空港に近いところで漢江を渡る鉄道がなく、高陽市方面へ行くにはタクシーを利用するか、地下鉄でいったんソウル市内に入ってかなり遠回りするかしかありませんでした。
ところが、昨年7月に西海線が延伸し、金浦空港駅を通って漢江を渡り地下鉄3号線の大谷(대곡・Daegok・テゴク)駅を結ぶようになりました。これによって、金浦空港から鉄道で漢江の北へも動きやすなり、金浦空港駅から注葉駅まで今回は30分程度で行くことができました。
列車は1時間に4本程度あるので、使い勝手も悪くはありません。ただし金浦空港駅のホームはかなり深くて、改札を通ってからホームに着くまでにエスカレータが延々と続くので、かなり時間がかかります。利用される際は、時間に余裕を持つことをお勧めします。


*ソウルと近郊の地下鉄路線図について詳しく見てみたい方はこちら(KONEST地下鉄路線図)をお勧めします。今回の記事に関係するのは、左上の部分になります。

醸造している敷地に併設されていたタップルームがなくなってしまったのは残念ですが、見方を変えると、もっと行きやすい場所でプレイグラウンドブルワリーのビールを楽しむことができるようになったとも言えます。
それでもソウルからでもかなり距離はあり時間はかかりますが、一山湖公園の散策もできますし、水族館やウォータースライダーなどもあるので、機会があればレジャー感覚で出かけて合わせてビールを楽しんでみてはいかがでしょうか。

◎プレイグラウンドブルワリータップハウス本店(플레이그라운드 브루어리 탭하우스 본점)
所在地:경기도 고양시 일산서구 한류월드로 300 1204호(1204 300 Hallyu world-ro,Ilsanseo-gu,Goyang-si,Gyeonggi-do)
営業時間:12:00~22:30(平日は15:00~17:00は休憩時間)
定休日:月曜

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています

PLAYGROUND BREWERYプレイグラウンドブルワリー一山湖公園韓国クラフトビール高陽市

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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