[コラム]2024.8.22

【ビールを通じて感じる韓国㉗】3カ所の野球場で見た・飲んだビールKelly

昨年(2023年)、韓国のプロ野球と大邱の野球場で飲んだビールについて書かせていただきました。

*昨年の記事はこちら(【ビールを通して感じる韓国⑧】野球観戦でビールを飲む@大邱サムソンライオンズパーク)(2023.6.16)から…

今月も韓国の野球場を訪問する機会があったので、そこで飲んだビールや売られていたビールを野球場の様子や観戦の雰囲気と合わせてご紹介します。

韓国プロ野球について

概要

韓国のプロ野球を運営するのは韓国野球委員会(한국야구위원회・Korean Baseball Organization、略称KBO)で、韓国プロ野球リーグはKBOリーグという名称です。1982年に6球団でスタートし、1991年からは長らく8球団制を維持してきましたが、2013年に1チーム(NCダイノス)、2015年にさらに1チーム(KTウィズ)が参入し、現在は1リーグ10球団制で運営されています。
2024年の公式戦は144試合、延長戦は日本と同様に時間制限なしで12回までです。日本でのクライマックスシリーズにあたるポストシーズンには、公式戦1位から5位までのチームが進出可能です。
試合開始は平日は18時30分。土曜の試合開始は17時(夏は18時)。日曜は春・秋は14時ですが、夏は17時が試合開始時間です。

今季新たに導入された制度

・自動投球判定システム
KBOリーグでは今季から自動投球判定システムを導入して、ストライク・ボールの判定を機械が行っています。機械の判定が球審が装着したイヤホンに届き、球審はそれを聞いてコールする仕組みです。このシステムは、トップリーグではMLBより先で世界初の採用です。
・ピッチクロック
今季からピッチクロック(投手が打者に投球するまでに使える時間を制限する仕組み)の試験運用が開始されました。投手はボールを受け取ってから18秒以内(走者がいるときは23秒以内)に投げなければなりません。ただし今季は罰則規定はなく、警告のみです。

大邱サムソンライオンズパーク

昨年も訪問した大邱サムソンライオンズパークは、サムソンライオンズが本拠地にしている収容人数24000人の野球場。まずはここでのビールに関して、昨年との違いに触れたいと思います。

ビールの変化

昨年はこの野球場のどこでもTERRA一択でしたが、今年はグラウンドの表示も含め、すべてKellyという銘柄のビールに変わっていました。このKellyについては後半で改めて書くことにします。

外野席のお店では4タップのうちのひとつだけフランスのビール「1664」のようでしたが、ここ以外ではKelly以外のビールを見つけることはできませんでした。

私は8000ウォン(約880円)で1ℓ入りののペットボトルを買いました。ラベルもなく銘柄ははっきりしませんでしたが、飲んでみた味わいから考えるとこれもKellyだった可能性が高いです。

スタンド売りは…

野球場での試合観戦の際、日本ではタンクを背負ってビールを売り歩く売り子さんがいるのが当たり前ですが、韓国では少ないです。私が観戦したときは、ひとりだけ見かけました。Kellyの制服を着ていたので、注いでいるのはやはりKellyだったのでしょう。

待っていてもビールが飲めるとは限らないので、売っている人が見当たらない場合は、お店まで積極的に買いに行くことをお勧めします。

かつてのスポーツパブは…

D FIRSTという野球場でしか飲めないクラフトビールが何種類か提供されていたスポーツパブ。昨年は閉まっていたもののその面影がは残っていましたが、今年は改装され、グッズ売り場が拡張されていました。
残念ながら、クラフトビールの復活はありませんでした。

他の訪問した野球場

今回は大邱サムソンライオンズパークのほかに、昌原市の昌原NCパーク、大田市のハンファ生命イーグルスパークの2カ所の野球場を訪れました。

昌原NCパーク

2019年に完成した昌原NCパークは昌原市馬山にあります。NCダイノスの本拠地で、収容人数は約22000人です。

昌原市とは…
昌原(창원・Changwon・チャンウォン)市は、大韓民国慶尚南道の道庁所在地で行政、文化、産業の中心都市です。
1970年代に韓国の重化学工業化政策の下で最初の計画都市として開発が進み、現在では世界的企業が集積する工業都市として知られています。2010年に港湾都市である馬山(마산・Masan・マサン)、軍港の町である鎮海(진해・Jinhae・チネ)が市域に編入され、人口100万人を超す大都市となっています。
大型合併のイメージは、日本だと清水市を合併した静岡市に近いと感じます。

ここでのビールも、グラウンドの表示も含めビールに関してはほとんどKelly。大きな広告も何カ所かあり、力の入れようを感じました。スタンドの売り子さんは見かけませんでした。




もちろん私が買って飲んだのもKelly。韓国らしくストロー付きです。5000ウォン(約550円)でした。

韓国のビールでKelly以外のものは見かけませんでしたが、キリンの一番搾りは売られていました。値段は7000ウォン(約770円)とKellyよりは高めです。

観戦した日はWATER FESTIVALの開催日。内野席の応援団近くのエリアにウォーターキャノンが複数設置されていて、ホームチームのヒットや得点のたびに大量の水が噴射され、さらにホースでも水が撒かれていました。

試合終了近くには、このエリアだけでなく近くの通路やトイレも水浸し状態。日本の球団も視察に来たことがあるようですが、さすがにこの規模での実施は日本では難しいのでは…と思います。
NCダイノスだけでなく、いろいろな球団で実施しているようです。体験してみたい方は、ぜひ夏に韓国の野球場へ!

ハンファ生命イーグルスパーク

大田市にあるハンファ生命イーグルスパーク。名前のとおり、ハンファイーグルスの本拠地です。

大田市とは…
大田(대전・Daejeon・テジョン)市は、大韓民国中西部に位置する広域市で、人口規模は大韓民国の都市の中で5位になります。首都圏ではない広域市の中でソウル特別市と最も近く、政府機関など首都機能の一部も分散されています。
1993年には大田国際博覧会(科学エキスポ)が開催され、韓国随一の科学技術都市としても知られており、研究機関が多く位置しています。その点で、日本のつくば市に似ている感じがします。

1965年に完成した、現在の収容人数13000人のこの野球場が使用されるのは今年限り。隣で新球場の建設が進行中でした。

古い野球場のためか、野球場内の売店で目立っていたのはコンビニ。TERRAの500ml缶が4000ウォン(約440円)で売られていました。

樽生のビールを求めて歩いていると、見つけたのは、Eagles Brewery Co.の文字。

期待したのですが、出てきたのはやはりKellyのビール。4500ウォン(約500円)でした。

ビールに関しても来年から使用される新球場に何ができるのか、期待して待ちたいと思います。

この日の試合は残念ながら急な雷雨で中止になってしまいましたが、中止決定後に選手が出てきてシートの上でスライディングを見せてくれ歓声が起こっていました。日本でもすることがあるとは聞いていますが、実際に見たのは初めてでした。

Kellyはどんなビールなのか

今回、もちろん全部の野球場にいったわけではないし、ソウルとその近郊の野球場にも行っていません。そのためこれが全体的な傾向だとは言い切れませんが、とにかく野球場でのビールのKellyのシェアの高さに驚かされました。
野球場でここまで浸透しているKellyは、どんなビールなのでしょうか。

Kellyは2019年にTERRAを発売したハイト真露が、2023年に新しく発売したビールです。TERRAが「清浄」というキーワードに合わせて製品化されたビールなのに対して、Kellyは多様性の時代に、他と差別化した「柔らかさ」と「涼しさ」を同時に感じられるビールをテーマに製品開発。北大西洋からの海風に吹かれて育ちまろやかな味わいが特徴のデンマークプレミアム麦芽を100%使用し、7℃で一度、そして氷点下1.5℃でもう一度熟成する「ダブル熟成」で強烈な炭酸を引き出しています。

最初に野球場で飲んだときには、温度が高めだったためか麦芽の甘さをかなり感じるビールという印象を受けたKellyでしたが、改めて缶を買って飲んでみると、最初の口当たりでは清涼感を感じますが、味わいは柔らかでバランスの取れたビールだと感じました。
野球場だけでなく、お店でもCASSやTERRAに続くビールとして飲めるところも増えているようです。ちなみに広告モデルに起用されたのは、俳優のソン·ソックさんです。

TERRAとはまた少し違った味わいなので、もし機会があれば飲み比べしてみてはいかがでしょうか。

*参考文献:室井昌也「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑2024」(論創社)
*100ウォンを約11円として換算しています

KBOKELLYハンファ生命イーグルスパーク大邱サムソンライオンズパーク昌原NCパーク

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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