[コラム,ビアバー,ブルワー]2024.9.5

【ビールを通じて感じる韓国㉘】~地域を恐竜でアピール~ DINO BREWING@鎮海(昌原市)

前回、韓国の野球場とビールについて書いた際に、NCダイノス(NC 다이노스・NC Dinos)というチーム名を出しました。

*前回の記事はこちら(【ビールを通じて感じる韓国㉗】3カ所の野球場で見た・飲んだビールKelly)から…

NCダイノスの「NC」は親会社名(韓国のオンラインゲーム企業NCソフト)であるとともに、昌原市及び旧馬山市・旧鎮海市(共に2010年に昌原市に合併)を合わせた「新昌原(New Changwon)」を意味しています。
「dino」は恐竜を意味する英語「dinosaur」の省略形で、昌原市のある慶尚南道に恐竜の化石が多く分布していることから付けられました。マスコットも恐竜をモチーフにしています。

そして昌原市鎮海には、DINO BREWINGという名のブルワリーもあります。こちらも、ブルワリーのロゴマークに恐竜が使われています。

昌原市鎮海

鎮海とは

昌原市鎮海(진해・Jinhae・チネ)は、韓国最大の軍港の町。春になると町中に植えられた桜に彩られることが有名で、海軍と桜をあわせた鎮海軍港祭が開催され、多くの観光客が訪れます。私もかつて桜の時期に訪問して美しい光景を見てきましたが、あまりの人の多さに逆にこの町の普段の様子も見たいとずっと思ってきたことが、今回の訪問につながりました。
もともとは日本海軍の軍港都市として発展したため、町の中心部にあるロータリーなどに往時の日本の都市計画の姿を見ることが出来、古い建物も残っています。

鎮海の主な見どころ

・旧鎭海郵便局
1912年に完成したロシア風折衷様式の近代建築で、2000年まで郵便局庁舎として使用されていました。現在は建物の中には入ることができず、外観だけを見ることができます。

・帝皇山公園
前述のロータリーからも近い海抜90mほどの山です。歩いても登れますが、モノレール(往復3000ウォン・約330円)を利用すると楽です。
頂上には海軍軍艦を象徴する高さ28mの塔が建てられていて、最上階からは鎮海の町並みが一望できます。

・余佐川
余佐川は鎮海の市街地を流れる小川。小川の両側には桜の木が並んでいて満開時には桜のトンネルができる、人気のあるお花見スポットです。

DINO BREWING

DINO BREWINGとは…

DINO BREWINGは2017年にできたブルワリーですが、当初の名前からは改名しています。現在のDINO BREWINGという名称には、NCダイノスなどと同じく恐竜の町の文化を反映し、昌原市の象徴的なビールになろうという思いが込められています。

タップルームに入る

DINO BREWINGは上記の主な見どころから徒歩圏内。町の中心部にあるロータリーからだと徒歩7~8分です。

営業しているときは、門が開いています。

中に入ると広めの外スペースがあり、右手にタップルームの建物があります。外スペースではイベントなども行われるようです。


店内も広く、2人掛けの席から6人掛けのテーブルまでいろいろなタイプの席がありました。奥には醸造設備もあります。

ビールを飲む

まず出してくれたのは無料のおつまみとコースター。

定番のビールは6種類。ハーフサイズもありましたが、値段が1000ウォン(約110円)しか違わないので、すべて普通サイズで注文しました。
最初に頼んだのはHefe Weizen。アルコール分は4.5%でIBU14。7000ウォン(約770円)でした。ジャーマンウィート、ブライトカラー、バナナフレーバーと英語で説明が書いてあったとおり、ヴァイツェンらしいバナナの香りがしっかりとある美味しいビールでした。

主な食べ物はピザが6種類、チキンが4種類。この日はお昼を食べていなかったので、ペパロニピザを注文しました。19000ウォン(約2090円)でした。

続いて頼んだのは、Masan Ajaeというブロンドエール。Masan(馬山)の地名が入っているのも選んだ理由のひとつです。アルコール分4.6%、IBU17で7000ウォン(約770円)でした。フレッシュ、クリーン、コンファタブルという説明があり、飽きのこないドリンカブルなビールでした。

締めのビールとして選んだのは、Jinhae Port。せっかくなので、Jinhae(鎮海)の名の入ったビールにしました。アルコール分5.0%、IBU27で、7500ウォン(約830円)。ダークチョコレートの味わいの後からコーヒーの苦みがほどよくくる感じで、ゆったりと飲める美味しいビールでした。

シーズナルビールはタップ上の黒板に5種類ほど記載がありお勧めも教えてもらいましたが、この日は定番ビールだけで満足してしまい頼まないままになってしまいました。次回があればトライしたいと思います。

コースターには恐竜のロゴマーク。グラスもロゴマーク入りで様々な形のものがビールに合わせて用意されていました。韓国のブルワリーにしては珍しくブルワリーのTシャツの販売もあり、こちらも恐竜のイラスト入り。地域の観光資源のひとつである恐竜をアピールしていこうという強い想いを感じました。

◎DINO Brewing(다이노 브루잉)
所在地:Gyeongsangnam-do, Changwon-si, Jinhae-gu, Jungwon-ro 86beon-gil, 22−2 KR
営業時間:17:00~23:00(木~土曜は~24:00)
定休日:日曜

鎮海への行き方

釜山から鎮海へ

鎮海駅を通っていた鉄道は駅舎は残されているものの、2015年に定期旅客列車の運行を終了してしまっているため、利用できるのはバスだけです。

釜山の地下鉄2号線沙上駅直結の釜山西部バスターミナルから市外バスで約1時間20分で行くことができます。料金は6100ウォン(約670円)。30分に1本程度あり、地下鉄1号線の下端駅付近からも乗り降りすることができます。下端駅のバス停を利用すると、所要時間は1時間ほどです。

到着する鎮海のバスターミナルからDINO BREWINGまでは、徒歩で15分ほどです。

ソウルからも行けますが、高速バスで約4時間半かかり本数も1日数本と少ないので釜山から向かうのがお勧めです。

少し焦ったこと

鎮海は桜の時期には町中に人があふれかえりますが、それ以外の時期は穏やかで静かな町。バスターミナルも小さいです。
夜にビールを飲んだ日私がバスターミナルに戻ると、釜山行きのバスはもちろんまだソウル行きのバスもある時間なのに、チケットを売る窓口が閉まっていて人がいなくなっていました。試しに自動券売機も使ってみましたが、韓国のクレジットカードにしか対応していないようでした。
幸い、鎮海から釜山へ向かうバスはバスターミナル以外からも乗り降りできる座席指定がないバスだったので、持っていたT-money(韓国の交通系ICカード)が使え、ここのバス代程度はチャージしてあったので無事にバスに乗って釜山に戻ることができました。
ソウル行きだったらこの手段は多分使えなかったし、そもそもT-moneyを持っていなかったら、持っていてもチャージ金額が足りなかったら、どうすればよかったのかは正直わかりません。小さな町に行って帰りが遅くなりそうなときには、着いたときに先にいろいろ確認しておいたほうがよいのかもしれません。楽しい時間を過ごしたいい思い出が、最後のトラブルで薄れてしまわないためにも…

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています
*写真はすべて2024年7~8月に撮影しています

DINO BREWING鎮海韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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