[コラム,ビアバー,ブルワー]2024.9.19

【ビールを通して感じる韓国㉚】~自家製ビールのセルフタップが並ぶ~ SMOKED BEERに惹かれて訪問したTrevier@蔚山

今年4月、韓国のビールEXPO(KIBEX)に参加したときに試飲したビールの中に、「現地のタップルームへ行ってちゃんと飲みたい」と感じたビールがいくつかありました。

*KIBEXについては下記のリンクからどうぞ…
韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」に行ってきました<前編>(2024.4.30)
韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」に行ってきました<後編>(2024.5.3)

その中で一番印象に残ったのが、蔚山にあるTrevier(트레비어・トレビア)が造ったSMOKED BEER。燻製の独特な味わいがあるのに、飽きることなくもっと飲みたくなる美味しいビールでした。Trevierでも力を入れているビールのようで、ブースに立ち寄ったときに一番にお勧めされただけでなく、このビールだけのリーフレットも用意されていました。

Trevierのビールは他のブルワリーのゲストビールとしてメニューに載っているのは見たことがありましたが今まで飲んだことがなく、かなり衝撃を受けました。
改めて地図でブルワリーの所在地を確認すると、蔚山の街中ではなく交通の便は良さそうではありません。それでも現地へ行きたい思いが勝って、7月に実際に訪問してみました。

蔚山とは

蔚山(울산・Ulsan・ウルサン)は、大韓民国南東部にある日本海に面した広域市で、釜山広域市からは北へ70kmほどの位置にあります。人口は約110万人。工業都市と郊外の農村が存在する複合都市です。
韓国を代表する自動車メーカーである現代自動車やそのグループ企業のお膝元であり、蔚山は自動車の生産高で韓国トップです。また海岸沿いに韓国最大の石油コンビナートが広がり、造船に関しても長らく地域経済をリードする産業でした。
かつては捕鯨が盛んなことで有名で、捕鯨の歴史やクジラについて学べる博物館や当時(1960~1970年代)の街並みを再現した文化村などもあります。
蔚山を日本に例えるとのはかなり難しく、意見の分かれているところです。挙げられている地名は、都市や車の製造業のイメージから名古屋周辺の愛知、造船業が有名という点で広島などです。

Trevierとは

Trevierの設立は2003年。韓国で初期にスタートしたクラフトビール醸造所です。
どんなに美味しいビールでも一緒に楽しんでくれる人がいなければ成り立たないということから、モットーは「より良いビールを通してより良いコミュニティを作る」。また最高のビールは最善の努力から始まると、基本にこだわり、新鮮な原材料や細心の注意を払ったプロセス管理を行っています。
韓国全域の約100軒のビアパブで飲まれ、蔚山を中心にフランチャイズ店も10数店舗あります。

Trevierに向かう

釜山駅から蔚山駅へ

釜山から蔚山の中心部に向かうとすればバスの利用が便利ですが、今回の目的地はあくまでも郊外にあるTrevier。地図で確認すると、街中にあるバスターミナルからよりもKTX(Korea Train Express・韓国高速鉄道)の蔚山駅のほうが近そうなので、釜山駅からKTXに乗ることにしました。
蔚山駅に停車するKTXは日中は1時間に2本程度。料金は8400ウォン(約920円)。乗車すれば釜山から20分ほどで到着します。

蔚山駅からTrevierへ

蔚山駅は、KTXが通ることで郊外に新しくできた駅。もともとは何もなかったのでは…という感じの場所ですが、駅は思ったよりも大きくて立派でした。

駅前のバスやタクシー乗り場も広々としていて、蔚山市街地へ向かうにはリムジンバスが5路線も運行されています。客待ちしているタクシーも多くて、街から外れた駅でもまったく困らないようになっていました。
ところが、端のほうにあるそれ以外の市内バスの乗り場の表示はちょっとわかりにくく、最初は自分の乗りたいバスが次に何時にくるのかがよくわかりませんでした。タクシーにしようか何度か迷いつつも、11時30分にはバスがくるように表示を理解したので最後まで待ちました。
KTXで蔚山駅に着いたのは10時50分頃だったので、少し遅れてきたバスに乗れた時には到着してから1時間ぐらい経っていました。

バスは街中を少し走ったあと畑などが広がる郊外へ出て、蔚山駅からは約30分の乗車。

最寄りのバス停Goha Entrance着く直前に、バス通りからレンガ造りの建物が並んでいるのが見えました。窓から外さえ見ていれば、降りるバス停を間違える心配はいりません。

Trevierでビールを堪能

広い敷地

敷地には建物が何棟か並ぶ敷地があります。一番手前の建物はカフェで、パンなどが食べられるそうです。



一番奥の左手にタップルームがありました。

タップルーム

店内はとても広々としていました。


とても暑い日だったので出ませんでしたが、外には足湯のスペースも見えます。

ビールは入店時に渡される赤いバンドをタッチしてセルフで注ぐ形になっています。自家製ビールだけで約20タップ並んでいました。大体のビールは10mlで140~170ウォン(約15~19円)程度。高めのものだと250ウォン(約28円)のものもありました。

グラスはタップが並んでいるところに並べてあり、好きなタイプを使うことができます。私はいろいろ飲むことを考えて、小さめのグラスを選びました。

お目当てのSMOKED BEERを味わう前に、まずはピルスナーを飲んでみました。

この量で168ml。10mlが140ウォン(約15円)なので、2300ウォン(約250円)でした。アルコール分4.5%と少し軽めで、爽やかな味わいのビールでした。

料理は店内にあるタッチパネルから注文します。ここでもバンドのタッチが必要です。

美味しそうな肉料理やピザはちょっと量が多すぎなので、選んだのは6000ウォン(約660円)のこちらのスープとスティックパン。韓国のビールを飲む場所では、ビールに比べて料理が高くつくことが多いので、この値段で注文できるものがあるのはありがたかったです。

無料のおつまみも、セルフで自由に取ることができるようになっています。ここのやり方に慣れていない私のために、最初は店員さんが持ってきてくれました。


水もセルフで自由に飲むことができ、食べ物の持ち帰り用の箱も用意されていました。

念願のSMOKED BEERも

続けてヴァイツェン、ドゥンケルと飲んでみました。どちらもピルスナーと同じく10mlが140ウォン(約15円)。ヴァイツェンが163mlで2200ウォン(約240円)、ドゥンケルが125mlで1700ウォン(約190円)でした。

そろそろ本命を…と、念願のSMOKED BEERを注ぎました。10mlで170ウォン(約190円)で、最初の量は159mlで2700ウォン(約300円)でした。


アルコール分は4.6%でIBUは15。燻製の香りがしっかりとあり、他ではなかなか味わえない…好みは分かれるかもしれませんが、ラオホが好きならばたまらないビールです。
続いてペールエール、セゾン、IPL、トリプルヘイジー、IPAなども少しずつ飲んでみたので、結局30ml程度試したものも含めて、味わったビールは全部で10種類。お気に入りのSMOKED BEERは2度お代わりしました。

それでもビール代は15100ウォン(約1660円)と格安で済みました。いろいろ飲んでみたいときには、このセルフで注げるシステムは本当にありがたいです。
残念ながらSMOKED BEERはありませんでしたが缶ビールも売っていたので、帰りに蔚山ラガー(4000ウォン・約440円)とT-ドゥンケル(4500ウォン・約500円)を購入しました。

帰りのバスを待つ…

タップルームを後にしたのは13時30分過ぎ。取り合えずバス停に行ってみると、20分ほど待てば13時50分にバスがある表示になっていました。バス停の路線図を見ると、乗ってきた308番でなくても318番も348番も蔚山駅に行きそうなので、どれか先に来たのに乗ろうと思って待っていました。


13時50分になって、バスが来ないまま変わった表示がこちら。

バスの遅れは理解できますが、13時50分到着予定の表示があった318番のバスは到着もしていないのに17時の表示に変わってしまいました。そして、それから約30分経って、最初に姿を現したのは308番のバスでした。先に来そうだった348番のバスはどうしたの?
まあこんなこともあるので、Trevierに行くには時間の余裕を持って出かけるか、タクシーを使うことを考えるほうがいいとは思います。

最初は「あのSMOKED BEERを飲みたい」という思いで行ったTrevierのタップルームでしたが、セルフで自由にこれだけの種類の自家製ビールが注げるところもとても珍しく、周囲の環境と合わせてとてもいい訪問になりました。
機会があればぜひ実際に足を運んで、Trevierのビールや雰囲気を体験してみてくださいね。

◎Trevier(트레비어)
所在地:울산시 울주군 언양읍 반구대로 1305-2(1305-2 Bangudae-ro, Ulju-gun, Ulsan)
営業時間:11:00~22:00

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています
*写真はすべて2024年7月に撮影しています

SMOKED BEERTrevier蔚山韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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