醸造拠点を高円寺から勝沼へ。アンドビールが新しい歩みを始めます!
「2025年より醸造事業を基本的に山梨県勝沼に集約します」
2024年9月27日、SNSにて発表したアンドビール。2022年から東京・高円寺との2ヶ所でビールを造ってきましたが、今後は勝沼の醸造所を軸に展開します。
創業から8年。醸造所や店舗を増やして事業を拡大。スタッフも創業当時は安藤夫妻だけでしたが、アルバイトスタッフを含めて20名を超えるまでに成長しています。
これから何を見据えてビールを造り続けていくのでしょうか。代表社員の安藤耕史さん(以下、耕史さん)、オーナーブルワーの安藤祐理子さん(以下、祐理子さん)にお話を聞くために現地に足を運びました。
目次
新しい挑戦をするために勝沼を拠点とすることを決めた
創業当初は自社店舗での販売が中心だったアンドビール。近年は飲食店への販売やイベントへの出店など外部への露出が増えています。「皆様の応援もあり、会社の売上は常に上がっています。創業当初に掲げたブリューパブを運営するというプロジェクトは、達成しつつあるのかなと感じています」と耕史さん。
今回の勝沼醸造所への生産集中は、樽熟成ビールシリーズの安定した販売、定番ビールの製造とボトルでの販売、そして、海外へのビール輸出を見据えたものです。
これまでは自社店舗での提供が中心だったため、遠方のビールファンに飲んでもらうことは難しい状況でした。しかし、ボトルビールが安定して販売できるようになると東京から離れた地域にいる人達にもアンドビールのビールを味わってもらうことが可能になり、新たなファンを獲得できるチャンスが生まれます。
新しい挑戦を実現させていくため、勝沼に新ブルワリーもつくります。東京と山梨を行き来しながら醸造をしなくて良くなるので生産性の向上が期待できます。
自分たちのやりたいことを追い求めた結果、勝沼との縁が生まれた
もともとアンドビールは、岐阜出身の耕史さんと京都出身の祐理子さんが「東京でどんなビールを造るのが価値になるのか」という考えが始まりです。
醸造を始めた当初は、あえて定番ビールを決めずに様々な縁から生まれたビールを造り続けていました。その中で、「自分たちのやりたいことを少しずつ手繰り寄せて、今は『旅をする』をコンセプトに私たちらしいビールを醸造しています」と祐理子さんは話します。
「私たちらしさ」
その1つに全国各地の生産者から提供してもらった果物や野菜、海産物、ボタニカルなどの副原料を使ったビールがあります。その際には生産者を訪れて、時には収穫を手伝うこともあると言います。
このような活動を続けている中で生まれたのが勝沼のワイナリーとの縁です。
以前、アメリカのブルワリーに行った時に、じっくりと時間をかけて造る樽熟成ビールの世界観に関心を持ったというお2人。醸造所を立ち上げて軌道に乗せることや樽を保管する場所の問題などから挑戦したい気持ちを持ちながらも日々を過ごしていました。
ところがある事をきっかけに樽熟成ビールを造るきっかけが生まれます。
新型コロナウイルスの蔓延です。
飲食店の営業自粛があり、ビールを造る時間が少なくなってしまいました。色々な葛藤がある中で、気分を変えるために訪れたのが勝沼でした。
「大きな目的もなく訪れた勝沼の地で見たのは、かつて旅をしたアメリカオレゴン州ポートランドと似た光景でした」と振り返るのは耕史さん。約30,000人の甲州市には45のワイナリーがあり、「ポートランドのような酒造りが根付いた場所」と感じたと言います。
勝沼への関心が強くなった耕史さんと祐理子さんは、勝沼でワイン造りをしている人との縁を探します。
偶然にも高円寺のお店の隣の方がワイナリーとつながりがあり、そこから他にも関係が生まれて、現在は多くのワイナリーから譲り受けた樽で様々な樽熟成ビールを造っています。
特徴は、「ビールとワインのいいとこ取りしたようなお酒」と言い、ワイングラスに注いでゆっくり飲むようなビールを目指しています。
持続可能な働き方を目指す社風を築く
話を戻し、勝沼で次のステージを目指すことにしたアンドビール。新しい挑戦は未知なことも多く、これまでの経験だけでは成り立たないこともあると言います。そこで求めるのが一緒に事業を広げてくれる仲間です。
以前よりアンドビールでは、1人1人が学び続けて持続可能な働き方ができる組織を目指してスタッフにも意識して働いてもらっています。
これを実現するために設けているのが「放浪休暇」という制度です。これは、会社に籍を置きながら他社での研修やインターン、副業、海外での研修などを認める制度です。これまで「放浪休暇」を使用して農家や猟師、パティスリーなど短期研修や半年の季節雇用という形で勤務していたスタッフがいると言います。
なぜ、自由度のある働き方を認めるのか。それは耕史さんの体験があります。
「学生時代から世界を旅してきました。国や地域により文化が違います。様々な場所を巡ることで、価値観を広げる事ができました」
1年間働いたら2〜3週間は、関心事に取り組む時間に当てて自己成長させる時間にしても良いと耕史さん。「そういう機会を設けないと、目的を達成した人達は会社から去ってしまいます。それはもったいないと思うのです」と続けます。
1つの会社で自分のやりたい事を全て達成するのは難しく、実現のためには転職を選択することがあります。転職は給与面などの労働条件が良くなるとは限りません。また、会社側にとっても戦力になった人が短期間で去っては会社の成長につながりません。会社に籍を置きながら外部で学べる環境をつくることは、スタッフにとっても会社にとってもメリットがあります。
さらに働きやすい環境を構築するために時間内労働を掲げています。
「予定していた仕事が終わらないと帰宅できないということをさせていません。月8休は完全取得で、有給取得率は100%です。これまで社員従業員で、みなし残業を超えた残業をした人はいません」と祐理子さん。アンドビールでは、限られた時間で効率の良い仕事を実現させることを重要視しています。
日々の業務で出てきた課題に対して、「どのようにして解決すると成果を伸ばせるのか」を考えて、PDCAを回すことに取り組んでいます。
「自分の時間がつくれないと生活の質も上がりません。結果として仕事の生産性も低くなるのでは生活が楽しくないと思います」と祐理子さんは言います。
各々が自分の意思で成果向上に取り組み、売上や利益といった成果を目指す。そして、成果を上げた人にはボーナスや昇給で応えています。
個人が送りたいライフスタイルを支援する事や新しいスキルを取得や向上する事は、結果として会社の力を向上させることになります。耕史さんと祐理子さんは、働きやすい環境を提案したり考えてもらったりする事で、「ここで働きたい」と思える職場づくりを意識しています。
チームで新しいアンドビールを魅せていく
現在、醸造部門は、祐理子さんと数名で行っていますが、樽熟成ビールや定番ビール、輸出と、複数のミッションを進行させていくために、「複数人のチーム体制を敷いて、品質の高いビール造りを目指したい」と祐理子さんは話します。
「新しい環境でアンドビールを飛躍させてくれる人を探しています」
ワイナリーやワイン農家が多い地域なのでワイン関係者との距離が近く「コミュニケーションを密に取っています」と祐理子さん。また、近隣ではブルワリーも増えています。山梨県内はブルワリーの交流も盛んです。勝沼は都内からも近く、外からの刺激を生かしやすい環境だと思います。ブルワーとして第1歩を踏み出したい人、ブルワーとして更なる飛躍を遂げたい人にとってチャンスだと思います。現在、アンドビールではブルワーを募集しているのでチャレンジしてはいかがでしょうか。
安藤夫妻の仕事への考え方を聞いて、多様性が魅力の1つであるクラフトビールに通ずるところがあると感じました。関心事を生かしながらビール造りに携わることで、アンドビールの世界観も広がり、今までとは違うビールが登場してくる期待が高まります。数年後、アンドビールがどんなビールで私たちを楽しませてくれるのでしょうか。勝沼での挑戦を見守っていきたいと思います。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。