【データで読むビール】ビアスタイル・季節・地域別のトレンドを分析してみた
2025年はどんなビアスタイルが流行するのか?クラフトビール業界はどうなるのか?
それを占うため、過去20年程のネット検索データを分析しました。すると、納得や驚きの連続でした。
↓↓ 調べたテーマはこちら ↓↓
目次
Google検索から見るビールの人気度
分析に使うのは「Googleトレンド」。何かを検索する=関心の高まりと見なして、検索された言葉の人気度を示してくれるツールです。
まず、2004年以降『クラフトビール』という言葉が日本で検索された動向を見てみます。
※2004年より前はGoogleのデータがないため対象外
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『クラフトビール』の人気度(2004~2024年)※赤字は筆者
画像の左にある縦軸の0~100は人気度(検索数ではなく関心の度合い)。その増減を示す青い折れ線が2011年から上昇し2023年8月に最高値に到達。その後、人気が下がっています。
毎年、冬に下がって夏に上がる傾向が見られますが、2024年の夏は前年ほど上昇していません。
クラフトビール人気は頭打ちなのか?
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『ビール』の人気度 ※赤字および色加工は筆者
調べると、クラフトがつかない『ビール』のグラフも同じく2023年の夏がピークで、翌年は下がっていました。
要因のひとつと考えられるのは、2024年に過去最多だった猛暑日です。「飲食店は猛暑日に客足が鈍る」と言われるように、『ビール』や『クラフトビール』が飲める店を検索する人が減ったのでしょう。
クラフトビール人気は頭打ちじゃない
と…ビール愛を込めた推測をしましたが、若者を中心に酒離れが進んでいるのも事実。
2025年、各地のブルワリーが生き残れるかは、私たち呑兵衛にかかっています。
『クラフトビール』と多く検索した県は?
続いて『クラフトビール』をGoogleで検索した人が、どの都道府県からアクセスしたかを見ます。
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『クラフトビール』検索 1~5位 ※人口規模の影響がないよう調整されています
1位は新潟県からの検索。さすが「全国 第一号地ビール」を掲げるエチゴビールがある県ですね。
そのエチゴビールは今年、30周年。
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写真提供: エチゴビール
記念醸造として、新潟のコシヒカリや栃木の大麦麦芽といった国産原料のみを使った「オールニッポンこしひかりエール」が発売されます。
※2月7日発売/アルコール分5%/参考価格328円 (税込)
さらに周年ビールの第2弾が4月に、第3弾も7月に発売予定とのこと。日本に地ビールが生まれて30年を祝って、飲んでみてはいかがでしょうか。
エチゴビールHPはこちら
『クラフトビール』検索が最下位の県は?
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『クラフトビール』検索 46~47位
一方、最下位だったのは長崎県。地ビールの時代にあった醸造所がなくなり、近年は「全国で唯一 クラフトビールのブルワリーが無い県」と呼ばれていました。
し・か・し
実は私、長崎に住んでいたので、最近はクラフトビールの認知度が上がってきたと感じています。
きっかけは2021年、離島の壱岐に誕生したISLAND BREWERY(アイランドブルワリー)。
フェリーで壱岐にわたり、タップルームを訪ねましたが、130年以上の歴史がある酒蔵をリノベーションした素敵な店でした。
全てのビールに壱岐発祥である麦焼酎の白麹を使用していて、さっぱり味で「魚に合うビール」として売り出しています。
ちなみに私は後日、ソラチエースホップを100%使ったIPA feat. SORACHI ACEを飲んで、ソラチのヒノキ香と苦味、そして白麹由来のキレがある美酒に酔いしれました。
※2025年も期間限定で醸造予定。瓶での発売は未定
ISLAND BREWRYホームページはこちら
続いて2022年には、長崎市内で O/A NAGASAKI CRAFT BEER(オーエー・ナガサキ・クラフトビア)が醸造をスタート。ブリューパブと酒屋、2階には宿泊施設も併設されています。
※それぞれの営業日・時間はInstagramでご確認ください
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初醸造ビールのお披露目会
写真はO/Aのオープニングイベントに行った時のもの。最初に造った6種のうち、カップに「5」と書かれたダブルIPAのSLASH(アルコール分7%)が、強いシトラス風味と苦味があって特に好きでした。O/Aは今年、醸造所のオペレーション改善などの経験が豊富なBixer Brewing(代表 鈴木栄さん)と業務提携を結ぶことになりました。より美味しいビールに期待です!
O/A NAGASAKI CRAFT BEERホームぺージ
その他、長崎市内には去年、サッカースタジアムで醸造するTHE STADIUM BREWS NAGASAKIも開業しています。
どんどん盛り上がる長崎のクラフトビール業界は、要チェックです。
エール(上面発酵ビール)人気度1位は
Googleトレンドを使った分析に戻りましょう。次は「比較機能」を使って、どのビアスタイルがより検索されたかを調べます。
まずは上面発酵のエールのうち、5種類が人気度を競います。
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パンパカパ~ン
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突然ですが「エール部門」の人気度レースを始めます。出場する選手(ビアスタイル)はこちら。
『ヴァイツェン』=小麦麦芽を50%以上使ったビール。バナナのような香りが特徴。
『ケルシュ』=ドイツ ケルン地方の伝統ビール。フルーティーな香りとすっきりした味。
『ペールエール』=ホップの香りや苦味、麦芽のコクなどがしっかりあるフレーバー。
『インディア・ペールエール(IPA)』=ペールエールよりも多くホップを投入。より香りや苦味が強い。
『ヘイジーIPA』=白く濁った見た目と果汁のような香味。苦味を抑えたソフトな口当たり。
※ポーター(鞄メーカー)、アルト(音楽用語)、セゾン(カード会社)など同音異義語があって絞り込み検索ができないものは割愛。ゴーゼなど検索量の少ないスタイルも対象外
今回は、最近のトレンドが見やすいよう過去5年間に絞って比較します。
それでは、よーいドン!
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エール5種 人気度の比較(2020~2024年)
ぶっちぎりの1位は紫色の線『IPA』でした。前出の『クラフトビール』という単語が2024年の夏に伸び悩んだ一方、『IPA』は同年7月に最高値を記録!その後、下がっているのは冬だからだと思います。
上のグラフは1位以外が見づらいので、『IPA』を除いて『ベルジャンホワイト』と選手交代します。ヒューガルデンホワイトでお馴染みのスタイルです。
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エール5種(IPA以外)人気度の比較
IPAを除くと緑の『ペールエール』と青の『ヴァイツェン』の人気が高く、それに続いて『ケルシュ』『ヘイジーIPA』『ベルジャンホワイト』という順番でした。
この結果、皆さんはどう思いますか?私はヘイジーIPAが、もう少し上位だと思っていたので意外でした…
ラガー(下面発酵ビール)人気度1位は
下面発酵のラガーでも、ビアスタイルの人気度を比較します。順位を予想しながら、選手紹介をお読みください。
『ピルスナー』=チェコ発祥の黄金色でシャープな味のビール。世界で最も普及しているスタイル。
『ヘレス』=ピルスナーに対抗してドイツで誕生。ホップの苦味は少なく、軽く麦芽風味あり。
『メルツェン』=オクトーバーフェストで飲まれていたビール。麦芽のフレーバーしっかり。
『デュンケル』=ロースト麦芽を使った濃色ビール、なのに下面発酵のためすっきり味。
『ラオホ』=ブナの木などの煙で燻した麦芽を使用。スモーキーな風味。
※シュバルツとボックは、いずれもゲームのキャラクターと同音のため割愛。また検索量が少ないスタイルは対象外
それではラガー部門の人気度レースを始めます。
よーいドン!
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ラガー5種 人気度の比較(2020年~2024年)
1位はやはり緑色の線の『ピルスナー』でした。
ただ気になるのは、紫色の『メルツェン』が2022年10月に急上昇していること…
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写真提供: サッポロビール
調べると、2022年10月に「ヱビス プレミアムメルツェン」が発売され、多くの人がこのビール名を検索していました。
しかし…
一時的に検索が増えたものの、結局『デュンケル』に抜かれて『メルツェン』は3位。その後に『ヘレス』、『ラオホ』という順番でした。
皆さんの予想は当たりましたか?私は、最近よく見かける『ヘレス』が2位になると予想してハズレました…
エール vs.ラガー頂上決戦
最終レースはエール部門1位『IPA』と、ラガー部門1位『ピルスナー』の対決。
頂上決戦なので、少し期間を伸ばして過去8年間を比較します。
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『IPA』と『ピルスナー』人気度の比較(2017~2024年)
グラフの左端、2017年初頭は赤い線の『ピルスナー』がわずかにリードしていましたが、すぐ青い線の『IPA』が追い抜き、どんどん人気度を高めてゴールイン。
最後は50ポイントもの差がつく圧勝でした。
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『ピルスナー』よりも『IPA』を検索した都道府県 1~5位
都道府県別で見ると、『ピルスナー』より『IPA』を検索した割合は沖縄県が最多でした。
その沖縄で検索動向を調べると『オリオン ビール ipa』や『75 beer ipa』の組み合わせで検索されていました。
オリオンビールが立ち上げた新ブランド 75BEER(ナゴビール)のIPAに関心が集まっていたのです。
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筆者が沖縄で飲んだ75BEER IPA(2022年撮影)
このビールには、北部・名護でとれたシークヮーサーが使われていて、強すぎない柑橘香と苦味が感じられました。数量限定でしたが今は通年で醸造され、沖縄以外でも売られています。 ※アルコール分6%/オープン価格
さてっ
エール vs.ラガーの決戦を制した『IPA』を調べた全国の人が他に何を検索したのか、急増した「関連キーワード」を紹介します!
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『IPA』を検索した人が他に検索したキーワード(全国)
1番と2番、そして4番目に『ヘイジーIPA』を指す言葉がランクイン。エール部門では、歴史あるスタイルに敵わなかった『ヘイジーIPA』ですが、やはり急激に検索を増やしていました。
目を引いたのはトップ5で唯一、ビールの名前で検索が急増していた『お酒マンIPA』です。
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お酒マンIPA (写真提供: 反射炉ビヤ)
こちらは反射炉ビヤと人気のアウトドア ブランドHILLS FIELDのコラボビールで、キャンプなどで楽しめるよう醸造されたベルジャンIPAです。
※度数6.5%/330ml 6本セット4,200円/1,500ml 3,100円(税込)
反射炉ビヤHPはこちら
お酒マンIPAは限定ビールでしたが、人気で何度も再発売され、今では通年醸造になりました。
前出の75 BEER IPAもそうですが「限定発売」→「人気で売り切れ」→「限定で再発売」という流れを何度か繰り返すと、検索量がガツンと上がることが分かりました。
次回予告
「データで読むビール」いかがでしたか?
流行っているビールを飲みたい方や、トレンドを調べたいビール関係者は Googleトレンド を使ってみてはいかがでしょうか。
※スマホで見る場合、簡易表示になるのでPC版サイトに切り替えるのがコツです。
次回は2024年度に書かれたビール関連の記事から約100万文字を抽出して、クラフトビールのトレンドを見ていきます。
掲載は4月の予定です!
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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。