アルコール度数に惑わされてはいませんか?
6月21日は夏至です。そうです。誰が何と言ってもおいしいビールの季節です。昨今はおいしいクラフトビールも増え、どれを選んだらいいのか迷ってしまいます。特にベルギービールは本国では1,000を超える種類があると言われ、美味しいものが多くて何を飲んだらいいのか迷ってしまうこともかなりあります。
ここでは皆さんのビール選びのお手伝いとなるようにアルコール度数に焦点を絞って考えてみたいと思います。
いわゆるバーレーワインという種類のキャスティール・ブリューン、トラピストビールとして日本では一番有名なシメイ・ブルー、或いはスペシャルビールとして多くのファンを持っているセントベルナルデュス・アブト。どれもみな美味しく私たちを魅了するビールばかりです。
また、これらのビールには大きな共通点があります。どれもアルコール度数が8%を超えるということです。では、どうしてアルコール度数が高いビールを美味しいと感じるのでしょうか?アルコール度数が高いものが美味しいというのなら、純度100%のエチルアルコールは「激ウマ」ということになってしまいます。
実はベルギービールが作られる過程にその秘密があります。そもそも、アルコールというのは酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスを吐き出すことによって生成されます。最初にモルト(麦芽)を煮出した時の糖度が高ければ高いほどアルコール度数の高いビールが作られます。つまり、酵母が活発に働けばアルコール度数が高くなる、という訳です。これらは糖度の高さによってダブルやトリプルといった呼称が付けられることも多いため、皆さんの耳にもなじみの良い言葉だと思います。
とは言っても糖度の高い麦汁を作って酵母をバンバン入れただけでは美味しくはなりません。ケージで工業製品のように飼われているブロイラーと校庭のような広い場所で放し飼いにされた鶏の差、と言えば少しはご理解頂けるでしょうか?ちなみにベルギービールではどのようにしてアルコール度数を上げているかということもご説明いたします。それは、主に熟成という手法によって行われます。年単位の時間という代替物の無い要素を加味し、温度を慎重に管理することで酵母をより活動的にさせるのです。つまり、アルコール度数の高いベルギービールは究極のスローフードともいえるのです!
ただ、ここで一つ問題があります。アルコール度数の低いビールは美味しくないのでしょうか?もちろん、答えはNO!です。農家の方が農作業の合間に飲むために作られたのがそもそもの始まりであるセゾンビールは、酔って農作業が出来なくなってしまっては本末転倒と言わざるを得ません。そのため、アルコール度数は低いものが殆どですが、腐敗を防ぐためにホップを大量投入したりしたものが多く、美味しいものもたくさんあります。どうしてもアルコール度数や飲んだことのあるビールを選びがちですが、それは実にもったいない事なのです。新しいお店に入って、そこの聞いたことも無いようなおすすめのビールにチャレンジするとか、いつものお店で飲んだことの無いビールを注文するなどして、ぜひ新しいビールやその魅力を発見してください。お気に入りのビールを増やして頂ければきっと新しい発見があり、ますます充実したビアライフがあなたの人生をより豊かな色彩で描いてくれることでしょう。
ビアジャーナリストアカデミー2期生 川端ジェーン
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