【ビアカクテル × 高級寿司!?】SORACHIビアカクテルからペアリングの可能性を見た!
2025年4月19日(土)『BAR THIRD PLACE GARDEN(恵比寿)』にて、サッポロビール株式会社の定番商品『サッポロ SORACHI 1984』(以下、ソラチ)を用いたカクテルと『高級寿司』のペアリングを提案するスペシャルディナー『SORACHI 1984とお寿司のペアリングディナー』が開催された。
筆者にとっても多くの発見を得た『ビアカクテル×寿司』のペアリング。今回その感想をここに記す。
目次
ビアコンペでも金賞!特徴的かつ華やかな香りと味わい
『サッポロ SORACHI 1984』は、同社が1984年に開発したホップ「ソラチエース」を100%使用したビール。2019年4月に通年販売を開始し、同ホップの特徴である「レモングラスやヒノキ等に例えられる華やかな香り」や味わいが人気を集め、今年で発売7年目を迎える。

「サッポロ SORACHI1984」
先日開催された「ジャパン・グレートビア・アワーズ 2025(※)」のフリースタイル・ライトエール部門においても金賞を受賞しており、味わいはもちろん、その世界観やストーリーを含め根強いファンが多く存在する商品となっている。
(※)国内で醸造されたビール類に特化した審査会であり、出品数、審査員数ともに日本最大級のビアコンペである。
また、SORACHI 1984ブリューイングデザイナー「新井健司(あらいたけし)」氏によると「ソラチは海鮮系や、和食に使用するお出汁との相性が非常によい」という。

SORACHI 1984ブリューイングデザイナー「新井健司(あらいけんじ)」氏
筆者がティスティングした印象としては以下のような特徴を持つと感じている。
- 外観:輝きのあるゴールド、泡立ち・泡持ち良好。
- 香り:レモングラス、ヒノキ、ディル、ライムピールのような清涼感を感じる香り。
- 味わい:甘味ミディアムライト(やや中程度)、苦味ミディアム(中程度)、ミディアムライトボディ(やや軽め)。
- 全体印象:アルコール度数(5.5%)も相まって大手ラガービールに比べれば味わいに厚みがあるものの、非常にクリーンでリフレッシングなアフターテイスト。上記の香りが心地よく口内に広がる素晴らしいビール。
個性と個性を上手くスクラムさせるようなペアリング
上記の味わいをうまく「カクテル」として昇華して、どのように「寿司」とのペアリングを図っていくのか?
今回、下記の順番と組み合わせでご提供いただいた。
(【】はビアカクテルの使用材料。⇒以下はビアカクテル等についてのご説明)
「ソラチ和風ミチェラーダ」 × 「前菜(カツオ)」
【SORACHI 1984、クラマトジュース、柚子ポン酢、白だし、七味、塩、胡椒】
⇒クラマトジュース(ハマグリのエキスの入ったトマトジュース)・白だし・柚子ポン酢ですっきりしながらもスパイシーな印象に。和の食材と合わせる上で、ソラチのフルーティーさは苦みをどのように生かすかを念頭に考案した。
「ソラチアップル・ホップ・ジン・ミュール」 × 「イカ、小鰭(コハダ)、白身」
【SORACHI 1984、レモングラスジン、リンゴ酢、辛口ジンジャーエール、レモンジュース、シナモンスティック】
⇒レモングラスを漬け込んだジンやリンゴ酢などを用いることで、ソラチのもつ柑橘系の香りを引き立たせた。また、酸味の中に辛口のジンジャエールで余韻をまとめ、白身魚の繊細な味わいを生かす素材構成とした。
「ソラチ・サケ・クーラー」 × 「ホタテ、車海老、赤身」
【SORACHI 1984、獺祭 純米大吟醸 45、柚子ジュース、生姜シロップ、ソーダ、大葉】
⇒リキュールはもちろん、「お酒×果物や野菜の風味」は相性がよい。同じ山口県産の柚子ジュースと日本酒(=獺祭)を合わせつつ、酸味がホップの香りを引き立たせながら赤身系の旨味を際立たせることを意識した。大葉を添えることでさらに和の国を楽しんでいただける組合せに。
「山椒ジンジャー・ソラチハイボール」 × 「中トロ・中トロ・雲丹」
【SORACHI 1984、バーボンウィスキー、生姜シロップ、レモンジュース、塩、山椒】
⇒まろやかな味わいにまとめるために、様々なウィスキーの種類がある中で「バーボン」を選択。中トロや雲丹のコクの深い味わいに合わせるイメージ。最後に生姜や山椒の鼻に抜けるような香りをアクセントにした。
「ソラチラテ」 × 「玉子、イクラ、トロタク」
⇒こちらのみ液体はソラチ単体で、泡だけ入れるような注ぎ方での提供。チェコの代表的ビール「ピルスナーウルケル」の注ぎ方のひとつ「ミルコ / ムリーコ(Mlíko)」を採用することで、ソラチの持つココナッツや乳のような甘い香りを引き出し、甘い味わいと食感で牛乳を飲んでいるような美味しさを表現した。
お品書きに目を通すと、頂く前から非常に興味をそそられる組合せが並んでいた。
今回のカクテルは場所をご提供いただいた「BAR THIRD PLACE GARDEN」の皆さまにご考案頂いており、新井曰く、「ソラチの個性に負けないよう、個性と個性を上手くスクラムさせるようなビアカクテルとペアリング」をオーダーしたとのことだ。
また、ペアリングに使用する寿司類は、江戸前寿司の中心地・東京築地で今年創業101年目を迎える老舗「株式会社玉寿司」が2022年11月にOPENした「鮨 本店上ル」の店主「渡辺 裕也」氏らにご用意して頂いた。

「鮨 本店上ル」店主「渡辺 裕也」氏(右)
-実食-各ペアリングの味わいは如何に!?
ワクワクと未知との遭遇へのときめきを胸にいざ、実食。僭越ながら「フードペアリングインストラクター」としてペアリングの感想を以下に記した。
- ソラチ和風ミチェラーダ × 前菜(カツオ)
(SORACHI 1984、クラマトジュース、柚子ポン酢、白だし、七味、塩、胡椒)
⇒風味豊かなかつお出汁に浸したトマトを飲んでいるようなカクテルは、七味や柚子がピリリと後味に効いてくるまさに「飲む和食」。余韻にはソラチのほろ苦さや香りが開き、他の材料の酸味や風味との一体感を個人的には一番感じることができた。
カツオと合わせると、赤身の鉄っぽさがうまくトマトでマスキングされつつ、焦げ味と出汁(特にカツオ節の燻した)の香りが調和し、七味や柚子、胡椒といった風味が鰹たたきをたべているような感覚に陥らせる。料理の要素を上手く分解、再構築したペアリングだ。
- ソラチアップル・ホップ・ジン・ミュール × イカ、小鰭(コハダ)、白身
(SORACHI 1984、レモングラスジン、リンゴ酢、辛口ジンジャーエール、レモンジュース、シナモンスティック)
⇒ソラチのシトラスやハーブに例えられる香りが、それぞれレモングラスとリンゴ酢の酸味を、ジンジャーとシナモンのスパイス風味をより華やかにかつ奥行きを付与している。生姜の辛みとリンゴ酢の酸味が効いたカクテルとなっており、小鰭とは(ガリと一緒に)〆鯖の味わいの構成を連想させるような組み合わせに、イカや白身とはカルパッチョを食べているような感覚を味わうことができた。特に白身との組み合わせが一番共鳴していたと感じた。
- ソラチ・サケ・クーラー × ホタテ、車海老、赤身
(SORACHI 1984、獺祭 純米大吟醸 45、柚子ジュース、生姜シロップ、ソーダ、大葉)
⇒今回の中では唯一、甘味が主体のカクテルとなっており、柚子の香りが口いっぱいに広がりつつも、余韻には大吟醸の華やかなフレーバーとソラチのホップアロマが重層的に広がる。グラスに顔を近づけると大葉の香りがちらつき、甘味の中にも清涼感を演出する。甘味が強めの味わい及び余韻のアルコールからくるキレ(辛み)もあり、特にホタテの甘味が引き立ち、かつねっとりとした口当たりと調和しながら、余韻は口内をきれいにリフレッシュしてくれる洗い流し効果が活かされていた。
- 山椒ジンジャー・ソラチハイボール × 中トロ・中トロ・雲丹
(SORACHI 1984、バーボンウィスキー、生姜シロップ、レモンジュース、塩、山椒)
⇒バーボンウイスキーのバニラやスパイシー・オイリーなフレーバーを中心に構成されたカクテルで、甘やかな香りの中にも生姜や山椒、ソラチホップのハーバルが、レモンや同ホップのレモングラスのようなシトラスアロマが心地よい味わいのレイヤーを成している。中トロの脂の乗った味わいがウイスキーの同特徴と共鳴する。個人的には雲丹とのペアリングが秀逸で、雲丹の塩味や風味が交わることでまるでアイラウィスキーのような印象に様変わりし、スパイシー・ハーバル・シトラスといったフレーバーが雲丹の磯臭さをマスキングしながらペアリングのアクセントとなっている。
- ソラチラテ × 玉子、イクラ、トロタク
⇒泡だけで注出することでソラチの持つ香りが引き立つだけでなく、食感や味わいがまさに牛乳のような錯覚を生んでいる。特に食感という意味ではイクラやトロタクのねっとりとした口当たりと相性がよく、ラテにしたことによる華やかなソラチのアロマがイクラの磯っぽさを上手くマスキングしていた。海苔の風味との相性も悪くなく、同液体から個人的に感じられた硫黄や鉄っぽいニュアンスを包みこみながら一体感を感じることができた。
ビアカクテルにして合わせるという無限の可能性
「わざわざお寿司と合わせなくても?」
「寿司には日本酒やお茶がより合うのでは?」
もしかしたらビールとお寿司のペアリングに対してそのように感じている方もいらっしゃるかもしれないが、個人的には今回のソラチカクテルとお寿司の組合せには度肝を抜かれてしまった。
「出汁とトマト」「かつおたたき」「白身魚のカルパッチョ」「アイラウィスキー」といった表現を使用したが、普段私たちが体験している料理やお酒の構成要素をうまく分解し、寿司の持つ味わいを補完する形でカクテル内に集約された味わいには感動を覚えた。またベースビール(=ソラチ)が同一でも、ここまで味わいの方向性の異なったペアリングができるのかと感銘を受けたとともに、同ビールがベースだったからこそのアロマやアフターテイストの厚みを感じられるビアカクテルとなっていた。
もちろん、「SORACHI 1984」単体でも非常に素晴らしいビールであり、それ単体として料理とどう合わせていくか?というアプローチも正解である。特にビールにおけるペアリングは、そのビアスタイル(味わい)の多彩さ(やクラフトビールそのものが作品であり、商品や醸造家へのリスペクトも兼ねて?)から「ビールそのものの個性をフードに合わせる」という手法が多いと思われるが、ビール(お酒)離れが進んでいると言われている昨今、新しい楽しみ方の1つとして提案していけるのでは?というビアペアリングの可能性をひしひしと感じることができたイベントであった。
(ちなみに余談ではあるが、ソラチの特徴的な清涼感と甘味を連想させる風味は「わさび」を引き立てるなと感じたことも個人的な発見であった。新井としても「ソラチとの相性は間違いない」とお墨付きとのことで、わさびを入れたシーザードレッシングで、カイワレや春菊を使ったサラダをソラチに合わせてみても美味しいかもしれない。また、ご自宅で上記と同じペアリングを再現することは難しいかもしれないが、風味の組合せのヒントにしていただければ筆者としても嬉しい限りである)
「ビアカクテル×フード。この組み合わせはビールの世界を変えるかもしれない。」
この思いを共にペアリング(共感)してくれる方が増えていく未来を私自身待ち望んでいる。

会場内はご参加された皆様の「美味しい!」の声に溢れていた。
【Beer Data】
<サッポロ SORACHI 1984>
原材料:麦芽(外国製造又は国内製造(5%未満))、ホップ
アルコール度数:5.5%
容量:350ml
https://www.sapporobeer.jp/sorachi1984/
【Shop Deta】
<BAR THIRD PLACE GARDEN>
住所:東京都渋谷区恵比寿1丁目11−15 エビスリヨンビル 9F
TEL:050-5448-5588
OPEN: 18:00~翌3:00
公式HP:https://third-place-garden.com/
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。