[テイスティング]2013.9.21

一期一会のビール「カンティヨン・ズワンズ2013」、テイスティングレポート

野生酵母で醸しだす自然発酵ビール「ランビック」の造り手として世界的に有名な醸造所「カンティヨン」が年に1度だけ“遊び心”で造る限定商品「カンティヨン・ズワンズ」の2013年版を飲む会が、9/14(土)にベルギービール・ウィークエンド会場でおこなわれた。

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「カンティヨン・ズワンズ」は非常に少量醸造のため、限られた国の限られた会場でしか飲むことが出来ないレアものビールである。
飲みきったあとは二度と同じものは造られることがなく、まさに一期一会の味わいである。

日本(と言うよりもアジア)には毎年1樽しか割り当てが無く、一昨年は小西酒造長寿蔵、去年はベルギー大使館、今年は六本木ヒルズでおこなわれているベルギービール・ウィークエンド会場の一角でお披露目会がおこなわれた。

今年のズワンズはアビースタイル(修道院で造られていたビール)とランビックのブレンドで、その完成の由来は以下のようなエピソードがあった。

<2013年版ズワンズの誕生ストーリー>
2年前にカンティヨン醸造所を修理した際、古い壁の跡が発見された。
この歴史跡をブリュッセルの中世専門家と相談しながら考古学者に託したところ、驚くべきことに「カンティヨン醸造所は旧クールゲム修道院跡の上に建っていた」ということがわかった。
さらに、大修道院長の部屋を探したところ古いレシピが発見された。
このレシピから2012年の3月、アビースタイルのビールを醸造したのが今年の「カンティヨン・ズワンズ」のベースである。

工程は4週間の発酵ののち、ランビックを10%加え、400リッターの樽に移し、6か月熟成させ、樽詰後さらに二次発酵させたというものだ。
アルコール度数は7.2%である。

もっともこの“ズワンズ”という言葉は“悪ふざけ・冗談“という意味なので、この逸話は…。
ま、そこらへんがベルギーっぽい“洒落っ気”とも考えられる。
夢のようなお話は、ほろ酔いのかなたへ置き忘れ、楽しんだもの勝ちということである。

さて、肝心の味わいだが、ランビック独特の野趣あふれる香りと酸味があるフルーツを思わせるアロマの中にモルトの甘いキャラクターが訪れる。口に含むとほどよい酸味と甘みが心地よく調和している。非常にバランスの良い飲み心地である。

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海老、トマト、ポテト、マヨネーズなどの食材と相性がよく、またアプリコット・ジャムやチョコレートソースのかかったベルギー・ワッフルとも抜群のペアリングだった。

もう二度と飲むことができないというのは残念ではあるが、来年はまた来年のズワンズが私たちに感動を与えてくれるに違いない。

来年の「ズワンズ」がすでに待ち遠しい。

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アビースタイルカンティヨンクールゲム修道院ズワンズ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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