[イベント]2011.4.1

放射能の風評被害? 私は飲むぞ!ビールを。

 ネストビールを造っている茨城県の木内酒造は3/11の震災で瓶詰め製品の破損や梅酒の流失、日本酒蔵の玄関門や社員の自宅の破損などの被害が出た。
 しかし、人的被害は無く、またビール醸造所もほとんど被害を受けなかった。当日から数日間は宮水を近隣に配るなどのボランティア活動をおこなっていた。

 私は震災後すぐに、木内酒造に電話で取材をしたが、「大変だけど、心配はしないで大丈夫。すぐに元通りになるから」といったニュアンスだった。
 
 ところがその後、半月がたち再び電話をすると「少し困ったことが出てきてるんだよね…」という話になった。

 それは、輸出の問題である。
 木内酒造は、海外に年間数百キロリットルのネストビールを輸出している。

 その輸出先の国々が日本の食品の輸入を禁止し始めているのだ。

 その理由は”放射能”である。

 たとえば、シンガポールとオーストラリアは「関東全域と福島県の食品に関し、各都県が放射能安全証明書を付けた物以外一切輸入しない」ということだ。
 もちろん、この”放射能安全証明書”なるものは今までわざわざ発行されているもので
はなく、それを新たに県が調査して発行してくれなければならないのである。
 しかし、その証明書は行政の後手後手な対応の為、未だに発行されていない。

 海外への輸出が止まった状態なのだ。
 葉物野菜の一部から放射能が検出されたため他の食品の輸出もストップしている状態なのである。

 それに対して木内酒造は独自に調査をおこないすべての安全性を確認した。
 ネストビールは安全である。

 ネストビールにかかわらず、醸造タンクの中で醗酵・熟成し、ボトルやケグ(樽)に詰められたビールがいつどのように放射能物質と接触するというのか? 
 ビールはケグ詰めの場合は外気と接触しないし、ボトル詰めの場合も外気と接触する可能性は、瓶にビールを瓶に注ぎ込んだあと栓をするまでの一瞬だけである。
 そして、その一瞬の間も、王冠と液面の間の酸素を押し出すために二酸化炭素を吹き込んだり、ビールをわざとふきこぼしたりするわけで(これは瓶詰め後の酸化を防止のためにおこなう通常の作業)、外気が入り込む可能性は皆無と言っていいだろう。

 そもそも、木内酒造は先にも述べたとおり独自の検査をおこない、ネストビールの安全性を確認しているのだ。
 「たぶん」「だろう」「かもしれない」で安全を語っているのではない。

 にもかかわらず、ネストビールは海外から注文をキャンセルされている。
 ビールは放射能汚染されていないのに…。

 これを風評被害と言わずして、なにを風評被害と言うのだろうか?
 政府や県は「風評被害は避けるように」とTVで言うだけでなく、明確な検査をおこない、「これの食品はダメ、これは大丈夫」という明確な基準を国内外に示すべきだ。
 そして、諸外国にはっきりとした態度で、「これは大丈夫だから輸入を止める必要はない!」と「風評被害」の抗議をするべきだ。
 行政の曖昧な態度が風評被害を生んでいるのだ。
 20~30㎞の範囲の「自主避難」などその最たるものだろう。一般市民に「自分で考えろ」と言ってしまっている。風評が流れないわけがない。いや、むしろ、政府が風評を誘導しているようなものだ。
 
 
 ネストビールは安全である。他のビールも醸造工程から考えて汚染されているとは考えられない。
 私は飲むぞ! ネストビール、そして他のビールも。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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