『よなよなエールの香りの秘密に迫る』
~藤原ヒロユキのビアコラム~
『よなよなエールの香りの秘密に迫る』
≪よなよなエールは華やかな香りのビールである≫
『これが金賞でなかったら……』と感じた日
私が初めてよなよなエールを飲んだのは、1998年のことだ。
あるビア・フェスティバルでよなよなエールを一口飲んで「もしこれが金賞を取っていないとすれば、私はどうすればいいのか……」と感じたことを鮮明に覚えている。
どういうことか? 説明が必要だろう。
私はこのビア・フェスティバルで行われたビア・コンペティションで審査員を務めていたが、その結果をまだ知らなかった。審査は銘柄を隠したテイスティングでおこなわれ、まだ“どのビールが金賞なのか”を知らなかったのだ。
しかし、フェスティバル会場で飲んだよなよなエールは明らかに他のどのビールよりも“金賞に値するビール”だったのである。
フェスティバル最終日に発表される金賞ビールが、もし“よなよなエール”でなかったら、私はどうすればいいのだろう……と感じた。というわけだ。
そして、その受賞結果は。
私はホッと胸をなでおろした。よなよなエールは金賞だったのだ。そして、その年からよなよなエールは輝かしい受賞歴を重ね、今や日本を代表するエールビールとして広く一般に認識される存在となっている。
『よなよなエールの故郷を訪ねてみた』
私がよなよなエールを“金賞に値するビールだ!”と感じた一番の理由はやはり香りだった。酵母の醸すフルーティーな香りやモルトのほのかな甘みはもちろん、ホップのアロマとフレーバーは頭抜けてNo.1だと思った。
私は、実際にその醸造工程を見るため、よなよなエールの故郷を訪ねてみた。
よなよなエールが生まれる「ヤッホーブルーイング」の醸造所は長野県の佐久市にある。長野新幹線ならば、東京から1時間30分ほどで着く佐久平駅が最寄り駅だ。
醸造所で私を迎えてくれた醸造ユニットディレクターの森田正文さんが、醸造工程におけるホップの使い方を細かく説明してくれた。
「よなよなエールには、麦汁煮沸時の早い段階に苦味をつける為にパール、煮沸終了直前に香りをつける為にカスケードという品種のホップを加えており、その量の比率は1:5です」
いかに香りを大切にしているかがよくわかる。
「さらに、熟成中にカスケード・ホップを熟成タンクに投入します。この手法は「ドライ・ホッピング」と呼ばれるテクニックで、一段と香りを際立たせることが出来るのです」
よなよなエールが爽やかに香る理由である。
『贅沢&丁寧な作業こそ、華やかな香りの秘密』
森田さんは、ヤッホーブルーイングならではの“香りを逃がさない工夫”を教えてくれた。
「アメリカのワシントン州で秋に収穫されたホップをすぐに乾燥し、真空パックにしたものを、冬のみ受け入れます」
収穫後に時間がたったものは使わないのである。非常に贅沢である。
さらに“香りが華やかに開く工夫”も教えてくれた。
「ホップを熟成タンクに入れる直前に、手で揉みほぐすんですよ」
ドライ・ホッピングの際、ホップの房の中にある香り成分がきっちりとビールに溶け込むようにするわけだ。もちろん、手作業で行う。非常に手間のかかる丁寧な仕事である。
この贅沢&丁寧こそ、よなよなエールが華やかな香りの素晴らしいビールとして仕上がる秘密だとわかった。
よなよなエールのグラスを持ち上げると、華やかな香りが鼻腔をくすぐってくる。ひとくち口に含むと柑橘系の果実を思わせるフレーバーがフワァッと広がる。これぞ、ドライ・ホッピングのなせる業である。
実に素晴らしい。
私はこの香りを楽しみたくて、よなよなエールのグラスを何杯も空にしてしまうのだ。
お問い合わせ (株)ヤッホーブルーイング 0267-66-1211
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