小説とビールのお話
映画に続き、文学とビールのお話
先週金曜日のコラムで取り上げられていたとおり、映画にはビールにまつわる数々の名シーンがある。
さらに、文学・小説のなかにもビールのシーンはいくつかある。
まず、ビール好きの印象が強い作家といえば村上春樹だろう。
処女作の『風の歌を聴け』の中では、主人公の「僕」と「ネズミ」が「ひと夏に25mプールぶんのビールを飲み干した」というくだりをはじめ随所にビールを飲むシーンがある。
小説の中では具体的な銘柄までは書かれていないが、村上春樹の小説の中に出てくるさまざまな料理をレシピ本としてまとめた「村上レシピ プレミアム」(飛鳥新書)には、「村上春樹が好んで飲むビールは「サッポロ黒ラベル」と「サントリー・モルツ」とホームページで告白している」といった内容が記されている。
海外に目を移せば、ロバート・B・パーカーのハードボイルド小説の主人公である私立探偵スペンサーもビールのはうるさい。
小説の中に出てくる料理や酒をまとめた「スペンサーの料理」東理夫・馬場啓一(早川書房)によると、スペンサーのビールのビールに対するこだわりはオランダの「アムステル」から始まり、「ユティカ・クラブ・クリーム・エール」、「ピルズナァ・ウーアクウェル」、「ベックス」、「ローリングロック・イクストラ・ペイル」と続いていく。「キリンビール」もチャイニーズ・レストランで飲むシーンがあるとのことだ。日本料理店でないところは御愛嬌といったところだろうか?(カタカナ表記は「スペンサーの料理」文中のまま)
もっとも、スペンサーは自ら「ビールの味はわかってない」と語ったり、グラスを二口で飲み干すことをとがめられると「ビールをチビチビ飲む人間は信用するに値しない」とも述べていており、ビールを味わって飲む習慣は持ち合わせていないと告白している。
パイントグラスを小1時間かけて飲む私などは、スペンサーには信用してもらえない輩ということになるのだろう。
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